放課後の残り作業
放課後の教室。
他の装飾係は帰ってしまい、残ったのは俺と彩花だけだった。
「ごめんね悠人、私の色塗りが遅いせいで……」
「別にいいけど。どうせ家に帰ってもやることないし」
そう言いながら、俺は模造紙の上に筆を走らせた。
彩花が隣で色を塗っている。距離が近い。ふわっとシャンプーの匂いが漂ってくる。
——心臓が、また早くなる。
「悠人、すごいなぁ。塗るの全然はみ出さないし、きれい」
「当たり前だろ、集中すれば誰でもできる」
「そうかな? 私なんてほら」
彩花が見せてきた模造紙の一角は、線をはみ出してピンクがにじんでいた。
「……下手くそ」
「また言った!」
彩花は唇を尖らせて俺の腕を小突いた。
その瞬間、筆先がピッと跳ねて、俺の手の甲に青い絵の具がついた。
「わっ、ごめん!」
慌ててティッシュで拭こうとする彩花の手が、俺の手に重なる。
——その温度に、思わず固まった。
「……っ、いいから自分でやる」
「えへへ、ごめんね」
彩花は笑ってティッシュを差し出した。
俺は黙ってそれを受け取る。けれど、手のひらの感触は消えない。
教室の窓から差し込む夕焼けが、彩花の横顔を照らしていた。
その笑顔を見ていると、胸の奥がざわついて、目を逸らさずにはいられなかった。
「……もう、帰るか」
「うん!」
荷物をまとめて帰る準備をしながら、俺は心の中で思う。
——俺は女の子に興味なんてない。そう信じていたのに。
最近、その言葉がだんだん自信を失っていく。




