文化祭の係決め
放課後の教室。担任が黒板に「文化祭準備」と大きく書いた。
クラス全員がざわざわしながら話し合う。出し物は「クラス喫茶」に決まったらしい。
「じゃあ係を決めていくぞ。装飾、調理、接客、会計……希望を出せ」
俺は一番後ろの席で、ひっそりと下を向いていた。どうせ誰も俺に期待してないし、余計な注目を浴びたくない。
そう思っていたのに。
「悠人、一緒に装飾やろうよ」
隣から彩花の声。しかも、笑顔で当然のように。
「……え、俺?」
「うん。悠人、絵とか細かい作業得意じゃん。私、色塗りとか苦手だから助けてほしい」
断る間もなく、クラスメイトの数人が「いいじゃんいいじゃん!」と背中を押す。
気づけば黒板の「装飾係」に“桜井彩花・佐伯悠人”の名前が並んでいた。
……また一緒かよ。
その後、彩花がにこにこしながら言う。
「よかったぁ。どうせなら悠人と組みたかったんだ」
俺は顔をそらして「……そうか」と呟いたが、耳の先まで熱いのが自分でも分かる。
——放課後。装飾係の初顔合わせ。
大きな模造紙や絵の具を机に広げて、デザインを考えることになった。
「ねえ悠人、こういうのどう思う?」
彩花が描いた下手くそなコーヒーカップのイラストを見せてくる。
「……いや、下手すぎるだろ」
「ひどっ!」
笑いながら肩を小突かれて、胸がまたドクンと跳ねた。
——俺は女の子に興味なんてない、そう思っていたのに。
文化祭の準備は、嫌でも彩花と一緒に過ごす時間を増やすことになる。
その事実に、俺は少しだけ戸惑いながらも、不思議な期待を抱いていた。




