083話 総長、マッチポンプのラ・メール攻略【ゲーム世界編②:フィーネの育成方針を決める】
<美の魔王 サイド>
「イツキーーー!!!私がプラズマを与えるように誘導したわね!」
1年前、イツキが放射能の力を得た際【プラズマ?追加効果程度の力か・・ちょっとだけ支援しよう】と思考がよぎり、電気の補助として権能をイツキに渡した。
当然、プラズマをここまでの力とは思っておらず、疑念を感じて自分の思考をトレースしたことでイツキの仕業と判明したのだ。
慈愛系の神であるオーラルにしては珍しくご立腹だ。
『イツキ様に使われる、光栄なこと。そもそも1年も気づかないあなたの責任』
「だまりなさい!神が意思を操られるなんて・・笑いものだわ!」
『スキル程度に力を掠め取られている段階で、既に笑いもの』
「・・ぐむっ」
フィルとティエの正論ダブルパンチに撃沈するオーラルだった。
オーラル様はイツキ殿に気まぐれで力を与えた認識だったが実際にはイツキ殿に思考を誘導されていたようだ。
その結果が、あの恐ろしい力のようだが。
神をたばかるとは・・だが、それよりも気になることがある。
「あの、オーラル様?イツキ殿は我らも皆殺しにするつもりだったのですか?」
あんな熱気・・熱気という表現があっているのか?・・を浴びたら、我らは全滅だった。
「関係ないのよ。生き残っても、死んでもイツキには些事よ。まあ、今回は私達が居るから問題ないと思ってるんだろうけど」
『『信頼されてる』』
「まあね、私神だし?一番の親友だし」
「ふふふ、ですがイツキ様のあの力で焼かれるなら本望ですな・・今から浴びてこようかな」
「「行っちゃう?」」
「いや、俺は死にたくねーぞ・・は?あの程度で俺は死なねーけどな」
ネームドを含めたみなさんが、とても楽しそうに狂った内容で盛り上がっている。
あの力が怖くないのか?恐怖そのものだろ?・・・狂ってるぞ、こいつら。
エレ氣の段階では、私ならどう戦うか?という思考も出来た。でもあれは・・次元が違う。
心の中でおびえていると、それに気づいたオーラル様が話しかけてきた。
「魔王、アンタッチャブルの意味、分かった?」
「・・・はい、魂に刻まれる程に」
仲間が起こした周囲の惨状にも罪悪感の欠片なく、つぶらな瞳で見つめてくるオーラル様。
これが・・神。私達の都合では左右されない大自然の暴威以上の存在で、意思があるだけより面倒だ。
姿は似ていても私達とは別の理に生きる生命体。
慈悲があってもその意味が少し異なる。
おそらくは人族とは相容れない・・超常の存在。
恐怖と同時に、神を【敬う】という意味を理解出来た。
あの異常な世界の中で平然としているルクレイシアに一欠片の羨望と嫉妬を抱いたが、【自分は人族側だ】という気持ちのほうが大部分を占めた。
そのことに安心感を感じる魔王だった。
<フィーネ・ラ・サールス サイド>
「く・・・くくく、これだよ!これなんだよ!」
イツキの圧倒的な力を見て、何故かフィーネは喜んでいた。
「?・・・頭おかしくなったの」
これだよ!私が強くならなかったのは地道に訓練することではなく・・もちろん訓練は大事だけど・・生命を掛けるほどの強敵との戦いなんだ!
これを乗り越えることで、さらなる強さを得ることになる!
ここ数年の停滞はこのための準備だったんだ!
ある意味正解ではあるのだろうが・・自身より数百倍は強いであろう存在にその理論は通用するのだろうか?
いや、間違いなく瞬殺されるだけだろう。だが敗北を知らぬ故に理解出来ないのだ。
「イツキ殿との出会いに感謝を!」
「????」
「あなたを倒すことで、私は更に強くなる。あなたを糧に金竜に挑むのだ!」
「・・・は?頭大丈夫?」
<イツキ・ルノワール サイド>
私を倒す?あなた程度が?あまりの妄言に呆れてしまったわ。
でも、その前に・・・
「一応聞いておくけど、その武具を壊してもいいわよね」
「はははは!これは勝負だ。出来るものならやってごらんよ」
よし、了承は得たわ。あとでグチグチ言われても面倒だもの。
<フィーネ・ラ・サールス サイド>
「一応聞いておくけど、その武具を壊してもいいわよね」
「はははは!これは勝負だ。出来るものならやってごらんよ」
最高の剣、最高の防具、そして・・くすぶっていたとはいえ、その至高の武具達の最高の使い手たる私が行使するのだから、ありえないわ!
だが、そんな妄想は瞬時に消え去るのだ。
「ほい、タッチ」
「・・・え?」
『・・・フィー!・・ご・・め・・』
焦げ付く匂いに気がつくと、いつの間にかイツキ殿が眼の前におり【滅龍剣インベイジョン】を握っていた。それも聖属性が猛る剣身を。
ははは、イツキ殿の手が消失した臭いか?馬鹿な真似をするからだ。
侮蔑してその手元を見ると・・イツキ殿の手ではなく聖剣が溶解していた。
「あぁぁぁ!!!ベイーーー!!!」
「よそ見していていいの?私の熱は億に届くのよ?自分の鎧を見てご覧なさい」
『・・に・・げ・・にげ・・ろ・・フィー!・・』
自身の体を見ると、焼け焦げ原型が崩れながらも必死に聖属性フィールドを展開してフィーネを守る、軽鎧【ドラゴンデストロイ】の姿が。
「!?ロイ、大丈夫!?」
叫んだ瞬間、もう限界を迎えたようで私の体からロイがパージされ、その数瞬後に金属くずと化し底なしの地面に消えて・・・きゃ!?
二人が居なくなった事で宙に浮いていられなくなり、私も一緒に底なしの地面に落ちていく。
・・・ベイ・・ロイ・・ごめん。一緒に・・逝くから・・・
だが・・悲嘆に暮れる時間すら与えられることはない。
「おっと、死なれたら困るからね。さあ、第2ラウンドよ」
軽鎧が破壊され、聖属性フィールドが解除される直前に【電離氣体】解除と同時に周囲に拡散した熱を回収してフィーネが消滅する事をイツキは防いでいた。
そのままイツキ殿に襟首を掴まれて地上へ連れ戻される。
「は・・離して・・私も二人と一緒に」
「それなら尚更よ。そばにいる二人に申し訳ないでしょ?」
「???・・・そ・・それはどういう?」
その答えを聞く前に、標高5000mクラスの山々が聳える大陸を隔てる銀の山脈の麓にその身を叩きつけられた。
「さあ、第2ラウンドよ。ここの魔物から3人で生き残ってみなさい・・・(あら?手頃なのが居るじゃない)じゃあね」
山脈のど真ん中に放り込まれたフィーネ。強者程度の強さで生き残ることが出来るのだろうか。
<イツキ・ルノワール サイド>
始めは、勘違いフィーネの長鼻をバキバキしてトラウマを与える予定だったけど、予想外の事態が起こり内容を変更する事にした。
「しかも、丁度いい案内役もいるじゃない。立ち上げはあいつらに任せましょう」
数百メートル手前から私を視認し危険を感知、慌てて逃げ出した有能な魔物達をサクッと捕まえる。
その魔物は、真っ白の体毛に覆われたゴリラだったが、雪もない場所で徘徊していた。
山が銀色だから体毛が白でもいいのかな?
しかも、ただのゴリラではない。私の強さを遠方から認識する危機感知、氷魔法で作った鎧と双剣、腕には軽盾の重装備する魔法技術の高さだ。
軽く打撃(剣・盾破壊)を与えてから捕縛すると、無性でありながらも二人は恋人らしい。
へえ・・狂気も薄く個性も育っているのね。この魔物達、欲しいわ。
「・・・殺すなら私だけで許して欲しい」
しかも、厳つい割に可愛い事を言うわ。顔もオーラル好みだし・・気に入ったわ。
オーラルはとっても怒っていたから、この2体をお土産にしましょう。
ただし、正式採用はそれなりの成果を出してもらってからね。
「あなたが私に従うなら2体そろって生命の保証と、更なる強さを約束するわ。ただし、1ヶ月で成果を見せてもらうわ」
「本当!?・・でも・・成果?・・駄目なら殺される?」
「成果の可否は問わないわ。あなたの能力をチェックするだけ。駄目なら解放するわ」
魔物達は思う。既に私達の生命はこの強者の意思に委ねられている。逃げ道は皆無だ。
だが、相方だけでも逃がして安全を確保したい。という思いから余計な一言を放つ。
「それを・・・断っても?」
すると、イツキの周囲から ずもももっ と異音がしそうな程の濃密な殺気が漏れ出し、魔物2体の顔を優しく撫でた。
「「ひゃっ!?」」
その瞬間、心と体と本能のすべてが強烈な【死】を告げる。
すかさず二人で土下座をして命乞いを始める。
「あ・・主様の下で必死に働きますので・・どうかお助けを!」
「二人で懸命に働きますので、どうか相方の妄言はお許しください」
「判断も早い。素晴らしいわ」
即座に殺気が霧散させ、輝くような笑顔で頷く御主人様、我ら魔物すら見惚れる美しさなのに・・背筋が凍りつくほどに・・超怖い。
ここでようやく恭順以外の言葉は【死】だと認識出来た。
「私達に気に入られるよう一ヶ月しっかり働きなさい」
「「はい!この生命はすべて主様のために使います!」」
直立不動の姿勢で答えるゴリラ達。
その的確な行動で、ますます気に入られる事になるのだった。
そしてそのご褒美として、前触れもなく2体の魔物はイツキからの強烈な腹パンを喰らう。
「「げはっ!?」」
その動きすら追えなかった2体の魔物は、無防備な状態でそれを受けた。
その拳は強靭な氷の鎧を容易く砕き、魔物達の下腹部を衝撃と電撃が襲うのだった。




