073話 総長、マッチポンプのラ・メール攻略【ゲーム世界編②:もふもふこそが私のすべて?】
<イツキ・ルノワール サイド>
「くーちゃんとダリアちゃんに謝りなさい!」
私は現在、オーラルに正座をさせられている・・・何故に?
どうやら天狐・・くーちゃん・・の初めて?貞操?を奪ってしまったらしい。
どういうことか全く分からないのだが、そういうことなら謝らねばならないだろう。
「くーちゃん、ごめんね?」
「・・・・・」
だめだ、その身で顔を覆い隠してしまってこっちを振り向いてくれない。
私、何した?あまり覚えていないのだけど、確か・・・
【まあ、サイズは10m以上の巨躯なんだけど・・待って!あ、あれは!?】
そうだ、ここで天狐の麗しきふわふわもふもふの尻尾に気づいたんだっけ。
そして尻尾に飛びついて・・あまりの好感触にそのまま寝てしまい・・あとは?
うん、覚えていない。その後、オーラルに噛みつかれて正座させられたんだ。
『竜のおねえちゃん、私が教えてあげるよ・・本当に大変だったんだからね!』
お、天狐と一緒に居たグリフォンの子供・・ダリアちゃん・・が声・・いや思念を送ってきた。
この娘は全身真っ黒で、手足とくちばし、後は羽の下側だけ真っ赤に染まった特殊個体のようだ。
そのためなのか?私に対する嫌悪感はないようだ・・うむ、ちっちゃくて・・もふふわ・・かわえーな。
『ま、またなの!?く、くるしいよ〜』
・・・は!?いつの間にかグリフォンを抱きついてモフっていた。これが脊髄反射というものか?
「あれ?イツキが消えた。どこに・・・あ!いつきーーーー!!!反省の色無しじゃない!!!!」
そうは言うけど、オーラルさんや・・・本当に覚えてないんだもの。
<グリフォン サイド>
私はグリフォン。羽の色が黒くて生まれた時から周囲に嫌悪を抱かれていた。
黒赤の厄災と言われ、ついには殺されそうになり母親と一緒に群れから逃亡した。
それなのに・・執拗に追いかけられ、攻撃され続けた。
母親が最後の力で守り抜いてくれ・・なんとか逃げたけど、もう心も体もボロボロだった。
近場で隠れることが出来そうな洞穴に逃げ込んだのだけど、そこは天狐の住処だった。
母親以外のすべてに嫌悪されていた私だ、ここで殺されるのだろう。
そう覚悟を決めたのだけど・・天狐のおねーちゃんは怖い顔とは異なり優しかった。
怪我も魔法で治してくれて、優しく毛づくろいもしてくれる。
たまに、おねーちゃんの気持ちを探るために『おじちゃん』や『顔が怖い』とか言ってみたのだけど、全く怒らなかった。
母親はすでに居ないし・・ここが私の新たな居場所になるのかな?
そう思い始めていたのに・・あっけなく居場所は崩壊した。
『きっと・・世界すべてが私を嫌っているんだ』
でも・・それでも、おねーちゃんだけは味方してくれる。
なら最後まで信じて、たとえ世界が相手でも戦い続けよう。
そう誓い、攻撃した相手を睨みつけようとして・・前言撤回!おねーちゃん早く逃げよう!
なぜなら、金髪の少女の両隣に【純白の竜】が2体おり、それぞれが少女の事を慈しみと羨望の眼差しで見下ろしているのだ。
おねーちゃんには見えないらしいけど、すっごい執着を感じる。
思わず【あれほどに好かれる存在になりたい】と、あこがれを感じたのは内緒だ。
少女達のそばに降り立ち、おねーちゃんは黒鬼さんと話を始めるが、私は少女を見続けていた。
すると、少女の周囲にワインレッドのオーラ?が見え、膨張し始めたと思った瞬間『!?』少女が消えてしまったのだ。
『あー!この娘、おねえちゃんの尻尾に包まれて寝てるよ。でも、いつの間に?』
最終的に、少女はおねーちゃんの尻尾で眠っていたのだけど、あの甘噛みの意味分かってるのかな?
「尻尾は触っては駄目よ。天狐にとっては求愛になるの。更に尻尾の甘噛みはつがいの了承。その契約を解除するには・・相手を殺さないといけないの」
尻尾に顔をうずめることが【求愛】で、尻尾を甘噛みすることは【つがい】の了承になるらしい。
【求愛】なら断れば終了だけど【つがい】を受け入れたら相手を殺さない限り解除出来ない。
これは後で聞いたんだけど、尻尾をよだれまみれにする行為は【世界の全てよりも価値がある君が欲しい】という意味の最高級の熱愛行動らしい。
つまり、おねーちゃんは【熱烈な愛情表現】で【求愛】と【結婚】を了承すること無く受けてしまった・・それも見ず知らずの、脆弱と馬鹿にする人族に、だ。
これは、怒って当然だと思うよね。
当然ながらおねーちゃんは排除しようとしたんだけど、燃やし尽くそうとした青白き炎【狐火】は効果無し。
すべての魔法も無効、尻尾で叩きつけようが、噛みついて引き剥がそうとするも、全く効果がなく少女は爆睡していた。
ついには疲れ切って「もう無理・・・なんでこんな事に」おねーちゃんは悲嘆にくれていた。
なら、私が追い払ってやる!
意気揚々と近づいたところ「・・・かわええな」と、抱き枕にされてしまった。
おねーちゃんは私を助けようとしたが「・・・うるさい」と張り手で顔を吹き飛ばされてしまった。
そして・・その強烈な張り手の威力に、おねーちゃんの攻撃をものともしない強靭さに、おねーちゃんは恋に落ち、求愛を受け入れてしまったのだ。
現在、少女が声を掛けても無視しているのは、ただただ恥ずかしいからだ。
これについては全く理解出来ない。
おねーちゃんってばMとかいうやばい性癖(ヘビおねーちゃん:談)みたい。
すべての説明を終えて、竜のおねーちゃんの感想は・・・
「ふーん、全く覚えてないわ。ちょっと脳内整理してみるわ」
『それだけ?あと、いいかげん離して欲しい』
「駄目よ。こうしていると何かひらめきそうなのよ・・もふもふ・・もふもふ・・」
・・・私も悪い気はしないので、まあいいか。あ、また変なオーラが出てる!
「話を聞きなさーーーい!!!」
「・・もふもふ・・もふもふ・・もふもふ・・」
もう、ヘビおねーちゃんの話は全く聞こえていないようだ。
でも・・竜のおねーちゃんに抱かれていると心地よく、心がきれいに洗われるような感じがする。
元仲間へのうらみつらみもすべて溶か・・・
「いたぞ!黒赤の災厄を殺せ!」
「今度こそ逃がすなよ!」「「「おう!!」」」
50体近い元仲間のグリフォン達が私を殺しにやってきた。
・・・せてはくれないようです。
やっぱり世界は私を嫌って・・・
「あ?・・私の・・かわもふを・・殺すだと?」
その言葉の後、何をしたのか分からないけど50体近くいたグリフォンの群れが眼の前で次々に大地に落下していく。
竜のおねーちゃんは私をもふり続けているけど、間違いなくこの少女が倒してくれたのだろう。
すごい!かっこいい!
・・・おねーちゃんが恋に落ちた理由、私にもわかったかも?
「ねえ、あれはどういう事!?いい加減私の話を聞いてーーー!!!」
二人の女性が恋で心を焦がす中、オーラルの声が虚しく響くのだった。
<イツキ・ルノワール サイド>
痛い痛い!オーラル噛みつかないでよ。
ずっと無視してしまったらしく、ご立腹のオーラルを優しく撫でる刑に処されているところだ。
「おそらく、私の意識体が使えるようになってきたんだと思う」
「思考を無視して動いているのに?」
今までの話から、本能に準じた行動の際にのみ力を発揮していると思われる。
しかし・・ちょっと複雑だ。
だって大好きな戦闘より、もふもふ欲で効果を発揮するなんて。
・・・自分は予想以上にモフることが好きらしい。
「それって、やばいんじゃない?」
「まあ、敵判定は的確だし殺しもしなかったから、大丈夫じゃない?・・気がつけばモフっているのはちょっと問題かもしれないけど」
なぜなら先程まで、黒グリフォン、黒ブサ(犬形態)、黒王、雷帝、天狐、すべてを拘束して、もふもふの楽園を満喫していた・・らしく、オーラルに噛みつかれて正気を取り戻したのだ。
しかし、意識体の能力発現のきっかけは得た。
これからは瞑想時間を増やして徐々にコントロールしていこう。
早速、瞑想して意識体の全容を把握しようとするも
「・・もふもふ・・好き・・もふもふ・・大好き・・」
しか聞こえてこない、先はまだまだ長そうね。
『いい加減、我らの話を聞いて欲しいのだが?』
「そうですよ。私のお願いも聞いて欲しいです」
グリフォン達へのとどめと解体を手伝わされたドラゴンデストロイヤーと神器の二人が文句を言っているが、瞑想中のイツキには聞こえなかった。




