072話 総長、マッチポンプのラ・メール攻略【ゲーム世界編②:天狐襲来】
<イツキ・ルノワール サイド>
黒焦げになった山頂が突然爆発した。
うふふ、山の中に強烈な反応があったので、ついでに煽ってみました。
そう言うと、オーラルに「あんなの無理だよ、バカバカバカ!戦闘バカ!」とお褒めの言葉を頂いた。
黒ブサにおいては「父ちゃん・・もう帰りたい」と幼児退行していた。
爆発の瞬間に、それ程の強者の波動が溢れたのだ。
黒王と雷帝は逃走済み。あいつらオーラルを守るとか言っておきながら肝心な時には逃げるんだよね。
しかし、予想以上の強敵みたいだわ。
「・・・これ、勝てそうにないわね」
「なぬ!?バカ!あんぽんたん!マヌケ!はわわわ!どうすんのよ〜」
いざとなればデス・ブラスターで放射線を浴びせて逃げようかと思っていたけど、こいつは無理。
なぜなら敵は、世界神と同じ【精神生命体】だからだ。さて、どう戦いましょうかね?
ところが、今の実力では絶対勝てないのに、負ける気が全くしないのだ。
黒ブサとの戦闘でもそうだったけど、おそらく私の意識体としての力量が加味されているのだろう。
ただし、まだ1度しか使えてないのよね。
私が黒ブサに投げられて潰された巨大な石を粉砕した時だけ。
でもあれ、ウランを見つけて興奮して・・無意識だったのよね。
「まあ、なるようになる!」
「本当に頼むわよ〜イツキ!」
そう言いながら、逃げることは絶対にしないオーラル。
こういうところが信頼出来るのよね。
さて、瓦礫から姿を現したのは、翼の生えた銀色の狐、天狐というのだろうか?
まあ、サイズは10m以上の巨躯なんだけど・・待って!あ、あれは!?
イツキが何かを発見したようだ、それが戦闘に勝利する鍵になるのだろうか?
<宵闇剣デウス サイド>
我は宵闇剣デウス、唯一の主を求めて変な世界(おそらくスキルで作られた世界なのだろう)に飛び込んだ。
だが、ここは法則が特殊なのか?主の居場所が分からない。
さて、どうしたものか?・・・ん、あれは?
そうか、そうか、主は竜の因子もお持ちだったな。
あいつならば・・よし、協力してやろう。
複数の巨人達と戦う女性を見つけて、お礼目当てにその渦中に飛び込んでいく。
<フィーネ・ラ・サールス サイド>
私はドラゴンデストロイヤーのフィーネ・ラ・サールス。
エンシェント・ドラゴンの主というイツキ殿に教えを請うために勢いのまま扉に飛び込んだのはいいものの、おかしな世界に来てしまった。
幸い、強大な竜の気配が濃厚に立ち込める村があったので、そこに向かった。
村に到着すると、そこには3〜5m程の巨人達が働いていた。
おおっ〜!私は巨人族を見るのは初めて、やっぱり迫力が違うな。
「仕事中に申し訳ありません。イツキという方を探して・・」
「・・・貴様、イツキの仲間?む!同じ金髪・・なら姉だね」
近くにいた女性に声を掛けると、イツキ殿の姉と間違われ、その声を聞きつけた巨人達がわらわらと集まってくる。
「ぐふふ、お前らのために周囲の村々から強者を招待している。今回こそぶちのめす!さあ、勝負だ!」
「「「「おおおおおおぅーーー!!!!」」」」
・・・えええ、あの、どういうことなのでしょうか?
私はただ人探しをしているだけなんですが?
いきなり現れては屈強な村人に勝負を仕掛け、連勝街道爆進中のお尋ね者。
その度に、巨人達の矜持を叩き折り続けていたイツキ。
その悪名を出したことで、とばっちりを受けることになったドラゴンデストロイヤーだった。
『おい、グリップに掴まれ!』
その混乱から救い出してくれたのが宵闇剣デウスだった。
「ふー、ありがとうございました。無辜の民に手を出すわけに行きませんから」
『その代わりに頼みがある。強大な竜の気配を追って欲しい』
「あ、あなたもイツキ殿が目当てで?・・・まさか敵対する気では?」
『違う、我が主になって欲しいのだ』
え?その姿・・あなた武器として使えるのですか?
そう思ったが、滅龍剣インベイジョンが『この方は味方です』と教えてくれたので信じることにした。
「私も探していたのでちょうどいい。あっちですね・・・すごい気配、空からだと分かりやすい」
『分かった。高速移動するから手を離すなよ』
「え!?このままですか?」
グリップに両手を掴んだまま、高速で飛んでいくことになった・・・お手柔らかにお願いします。
<天狐 サイド>
うむ、あいつらね?うちの子を怖がらせたのは。
ふふふ、その数百倍の恐怖を植え付けてあげるわよ。
そう、考えていたら坊が変なことを言い出した。
『おねえちゃん。あの子、金色の娘は危険だよ!すぐに逃げよう!』
「どういうこと?」
見た目は普通の人間、確かに膨大なエネルギーを秘めてはいるけど私の敵ではない。
だが、坊には娘にまとわりつく2体の竜が見えるらしい。
「ここにはいないけど、強大な竜があの娘に執着しているみたい。そうとう強い竜だよ」
・・・竜か、面倒だな。だが、このまま有耶無耶にするつもりもない。
「分かったわ、脅すくらいにしておきましょう」
『・・・気をつけてね』
しっかり威圧するために、ゆっくりと飛んで人間達の前に降り立つ。
「貴様らが我に攻撃を・・ん?そこの黒鬼、お前は魔王国のものだな」
声を掛けると黒鬼は土下座をしながら返答を返してきた。
「も、申し訳ありませんでした!まさか天狐様の住処とはつゆ知らず!」
「ふむ、なら意図的に攻撃したわけではないのだな?」
「も、もちろんでございます!」
魔王国の者と聞き、怒りが収まっていく。
こいつらとは持ちつ持たれつの関係を続けている。
定期的に毛に付いた害虫を取ってもらったり、美味しい料理やお酒も貰っている。
その代わりに強大な魔物が国に向かわないようにしているのだ。
・・・そういえば、住処を変えたことを言ってなかったな?
なら、ここは平和裏に事を収めたほうが良いだろう。
その代わり、魔王秘蔵のあの酒でもいただこう・・今夜の酒盛りが楽しみだ。
「なら、お詫びの品で手を・・・ん?金髪の娘はどこに行った?」
「・・・へ?・・・あれ!?ホントだ、あいつどこに行った!」
おかしい・・我は警戒を緩めては居ない。
その状況で人族ごときを見失うとは・・・
『おねえちゃん。あの子、金色の娘は危険だよ!すぐに逃げよう!』
先の坊からの言葉を思い出し、今更ながらに私の意識に恐怖と警戒を浸透させていく。
慌てて周囲を捜索していると、空から強大な別の気配を感じた。
なんだ?あれは・・神器と聖剣・・あの人族は竜を滅するものの気配がする。
あの神器だけは警戒が必要だが、同行している人族の相棒ではない。
おそらくはあちらの聖剣の相棒だろう。
神器と人族が近くに降り立つと、何故か我の尻尾の方に声を掛けた。
「あ、あの!あなたがイツキ殿でしょうか?・・あれ?寝てる?」
『ふふふ、流石は我が主になるお方。天狐の尾を寝具にするとはな』
何を言っているのだ?こいつらは?
何を言っているのか?まったく理解出来なかったのだが・・坊の言葉で認識する事になる。
『あー!この娘、おねえちゃんの尻尾に包まれて寝てるよ』
その瞬間、全身の毛が・・その心が・・ざわざわと沸き立った。
尻尾に居る金髪の娘をようやく視認したのだが、その姿に更なる衝撃を受ける。
体毛の中で我の尻尾を甘噛していたのだ。しかも我が尻尾をよだれまみれに・・・ぐぬぬぬ!
「坊、すぐに離れて!」
坊が慌てて私から離れると、その全身を青白き炎が包み込み、尾に潜むものを含めてすべてを飲み込む。
『わ・・私の尾を?しかも体液など!?ゆ・・・ゆるさんぞーーーーー!!!!!!』
知らぬ間に大事な尻尾を蹂躙されていた事で、怒髪天の天狐。
こいつには勝てないと言っていたイツキの運命はいかに!?




