071話 総長、マッチポンプのラ・メール攻略【ゲーム世界編②:ブラスターを試射してみた】
<イツキ・ルノワール サイド>
魔王国はここからだとのんびり歩いても3日で到着出来るそうなので、修行しながら移動する事にした。
でも、その前に現在出来る基本技を確認をしておこう。
そして、これらを使って応用技を開発する予定だ。
・エネルギー弾
放射線から取り込んだエネルギーを空間が歪むほどの塊で放つ。
・電気スパーク
電熱で物質を消し飛ばす。
・プラズマスパーク
超高電熱で物質を消し飛ばす。
・アトミック・ボム
原子爆発。放射能・放射線についてはイツキが再利用するので、放射能汚染は無い。
イツキ自身が被害に遭うため使用不可。
・アトミック・ブラスター
魂鎧でバレルを作り、原子爆発の爆発を一点集中して放つ。
放射能汚染は無い。魂鎧不足のためオーラルの補助が必要。
・エンペラー・ボム
水素爆発。放射能汚染は無い。
威力甚大でイツキ自身が被害に遭うため使用不可。
・エンペラー・ブラスター
魂鎧でバレルを作り、水素爆弾の爆発を一点集中して放つ。放射能汚染は無い。
魂鎧不足のためオーラルの補助が必要。
・メルトダウン
ウラン鉱石を使用して異常な熱によってすべてを溶融する。
イツキ自身が被害に遭うため使用不可。
遠距離からの時限式も可能だが放射能汚染のため、オーラルより禁忌扱い。
・空中浮遊
体中にプラズマを纏い重力を断絶。電磁力で移動方向を決める。
・デス・ブラスター
生物に放射線を浴びせ、敵の細胞を破壊し死に至らしめる。オーラルより禁忌扱い。
・イツキラボ
脳内の特異空間で放射線を使った様々な研究を行う。
新たに得た威力の高い技もあるが、自身の体の強度が低いために強力な技は使えない。
魔王と対峙した時には超極小の核爆発で上空に飛んだけど、その際は魂鎧で覆いきれずに足を火傷したのよね。
細胞を超絶活性化改造したので修復は数分で済むけど、強敵相手にはその隙が命取りになる。
ブラスター系なら問題ない・・と言いたいところだけど、バレルを作るための魂鎧がまだ足りない。
まあ色々言ったけど、十全に使う事が出来たとしても活躍の場は少ないのよね。
なぜなら【戦闘で敵を殺すことは禁止】が足枷になるからだ。
私が発氣・魔力以外の力を得ると想定していたのだろう、小賢しいわよね。
このやっかいな条件は魔物にも適用されるので、黒王と雷帝が狩りをしてくれる事はとても助かっている。
つまりは、最強になるためには信頼出来る仲間が必須条件なのだ。
ゲームマスターもそれを想定して私に嫌われ属性も付与したんでしょうね。
これについてはオーラルが居なければ相当に難儀しただろう。
ただ、この条件には『嫌悪を超えるような強き想いを持つものには無効』という欠陥があった。
冷酷になれない慈愛神オーラルの力を無理やり使っている弊害なのかも知れないわね。
色々と考えていると、なんにも考えてないだろう黒ブサが声を掛けてきた。
「おいイツキ、それってどうやるんだ?」
「え?何のこと?普通に歩いてるだけだけど」
「馬鹿言うな!逆立ちして髪の毛で歩いている状況のどこが普通だよ!」
放射能から得たエネルギーで私の細胞は生気に満ち溢れいている。
今は髪の毛の強度を確認中なのだが、いい武器になりそうだ。
「はぁ・・何を言っているのやら。全身凶器にするのが戦士としての最低限の嗜みだよ」
「そ・・そうなのか?」
納得いかなそうな顔をしていたので髪の毛で黒ブサの頬をひっぱたら、ますます変な人認定されてしまった・・解せぬ。
「それはもういい。なあ、原子力?だっけ?そんなに凄いならあの山に打ち込んでみせてよ」
また、いきなりだね。と思ったが話を聞いて納得した。
なんでも大陸を分断する大山脈、その中央部で銀色に輝く山々は魔力濃度が非常に高く、その影響で強力な魔物が徘徊しており、更には山脈自体の硬度も非常に高く崩すことも難しいそうだ。
東西で交流が無いのはこの山が原因らしい。
ん?なら魔王国は銀の山の向こう側、獣人国とやりとりが出来るんだ?後で魔王に聞いてみよう。
そういう危険な場所なので、強者たちの墓場、もとい修行場になっているそうだ。
「面白いわね、ならアトミック・ブラスターを使いましょう。エンペラー・ブラスターじゃ山が消えるからね」
「え!?そこまで!?」
「オーラル、バレル部分の生成を協力してくれる?」
「もちろんよ!どのくらい強いのか私も興味あるし」
私の魂鎧では射出するための薬莢を作るので精一杯、バレル部分はオーラルに任せる。
空の薬莢をバレルに詰めて封印をする。
その後に、薬莢にイツキ謹製改良ウランを充填、プラズマの爆発で核分裂性物質の塊を衝突させて臨界量を突破する。
だが、これだけでは面白くない。アレも試してみましょう。ふふふ、どうなるかしらね?
「アトミック・ブラスター【龍牙砲】・・・発射!」
高熱・爆音・爆風はすべて魂鎧で生成した薬莢・バレルにより抑えられるが、そこを抜ければ獄熱の暴威がレーザーの如く射出される。
発射の際の衝撃波で進行方法の木々が吹き飛び、その炎熱で樹皮を焦がし枝葉を蒸発させる。
更には移動中に大気との摩擦によりその身に雷を宿し、成長した獄熱雷の暴威が標的の山頂を消し飛ば・・・さずに、直上にルートを変更して雲の中に消えていった。
「ぶはははは!だせー!イツキだせーぜ!ひゃははは!」
「・・・ルクちゃん!まだだよ。よく見て!」
ルクちゃん(黒ブサ)が慌てて上空を見ると山頂の雲が消し飛び、そこには龍の姿になった獄熱雷の暴威がうねり狂っていた。
「さあ、山頂を蹂躙しなさい」
イツキの言葉に反応した獄熱の暴龍が降下して山頂を消し飛ばした後、しばらく山肌をその身で蹂躙しながら消えていった。
銀色に輝きそびえ立っていた山が、山頂が消し飛び、その周辺が炭のように黒ずんで薄汚くなってしまった。
「ふふふ、予想通りの威力ね」
「「・・・・」」
二人も感激しているようで言葉もないわ。、なによりね。
「いやいやいや!何だよアレは!?生き物じゃねーかよ!」
「イツキ、あなたの記憶の核爆発とぜんぜん違うんだけど?一点集中のはずが広範囲殲滅になってるし・・・使用禁止!」
「分かってるわよ・・まあ、あれで生き残りそうな強者が居てくれるとうれしいけどね」
ふふふ、テストは順調ね。やはり魂の活用を考えるよりこちらのほうが早そうだ。
イツキがテストを重ねている力は【意識の力】の活用である。
魂の力に触れて分かったことは『使う』という感覚では、この力は使いこなせないという事だ。
おそらく魂にも意識のようなものがあり、それとの同調具合に合わせた力を与えてくれるのだろうと推測している。
だが、自分の魂とはいえ他者の意識と同調、またはへりくだるなど私の矜持が許さない。
私は私ゆえに私なのである。同調など不要、私の乙女心に不純物を混ぜるつもりは一切ない。
最終的に従えないのなら・・エネルギーイーターで魂を食らうだけだ。
しかし、魂との同調は拒絶するが、この力自体は素晴らしく出来れば使いたい。
で、思考の末に至った結論は、魂の力を使う事が出来るのなら【意識の力も同様に使えるのでは?】という事だ。魂とはいわば精神生命体、ならば意識体も同じ分類になるだろう。
幸いにも、ゲーム世界でも私の心と体はエネルギーに満ち溢れている。
【意識体】として確立出来れば、魂と同様の運用が出来るはずだ。
その考えの元で、今回試した内容はブラスターに意識の力を加えて形状変化と簡単な命令を実行させることだった。
これは見事に成功したが、あの程度で私の所持するエネルギーがごっそりと減った。
今後はエネルギーの純度・密度を上げて意識体を確立していく。
魔法・発氣・意識体、これらを組み合わせて出来上がる新たな力があるかもしれない。
現実世界に戻るのが楽しみね。
「こいつ、出会ったときは虚弱だったのに・・・まあ、これで国には問答無用で受け入れられる。結果オーライだな」
「どゆこと?」
魔王国では中央部の銀の山脈は神聖視されているようで、あれを傷つけることは禁忌と言われているそうだ。
「ん?逆にまずいんじゃない?」
「ははは、実際にはあそこに行って誰も帰ってこないから禁忌になったのさ。それを破壊したイツキは・・悪神のごとく畏怖されるだろうぜ」
「それは、手っ取り早いわね」
「それは駄目。仲良くしないと駄目なんだからね!」
「分かってるわよ。大事な配下なんだから」
「あ〜、もう!配下じゃなくて、仲間!友達!よ」
「「はいはい」」
「にゅ〜!二人ともそこに正座しなさい!仲間の大切さを叩き込んでやるんだからーーー!!!」
そんなやり取りをしていた所で、黒焦げになった山頂が突然爆発した。
<???? サイド>
山の中のねぐらで熟睡していたところ、ものすごい爆音と衝撃で天井が崩落して押しつぶされた。
『きゅ〜〜〜、おじちゃん、怖いよ』
『心配無用よ、私が守るもの・・あと、おじちゃんではなくおねえちゃん・・ね』
『分かった〜、顔の怖いおねえちゃん』
・・・まあ、顔が怖いのはその通りだし仕方ないけど、ちょっと傷つく。
この子、グリフォンの子供なのだけど、数日前に私のねぐらに迷い込んできた。
それだけなら追い出すのだが、ぼろぼろのその姿に、声を絞り出して助けを求めるその儚さに・・母性が沸き立った。
その後は、怖がれながらも色々とお世話して、怪我も治りようやく慣れてくれたのに・・誰だ!我が子供を怖がらせたやつは!
『ゆるすまじ!うがーーー!!!』
邪魔な瓦礫を吹き飛ばし、子供を優しく掴んで一緒に外に飛び出す。
『どこだ!?この周囲の力の残滓・・いた!あいつだな、殺す!・・いや待て、その前に恐怖で心を塗り潰してやろうぞ』
硬度の高い山肌をやすやすと崩壊させ、イツキに襲いかかろうとする魔物。
いわば邪神に手を出そうとする哀れな魔物の命運はいかに!?




