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070話 総長、マッチポンプのラ・メール攻略【ゲーム世界編②:魔王国に向かう】

<イツキ・ルノワール サイド>


「そういえば、貴方達はなぜ私を狙ったの?」

ゲーム開始早々に魔王に狙われる理不尽、その理由をようやく聞ける。


「ああ、それなんですが・・住民達が一斉に『イツキなる少女を殺さないと魔王国は滅亡する』という夢を見まして。私を含めた幹部連中は見てないのですが、多くの住民が見ているので流石に偶然ではないだろうとなりまして」

そして今朝、多くの住民が私の居場所を夢で見たので、転移魔法でルクレイシアを差し向けたそうだ。

やっぱりゲームマスター(スキル)の仕業ね。

力の源であるオーラルを取られたくないので必死なのだろう。

しかし、幹部は夢を見ていないということは、みな魂持ちと思われる。

魂持ちはゲームマスターとそのスキルを持つ悪魔の敵である。

それなら話しても問題ないだろうと全員に私達の状況と目的を説明する。


「なるほど、つまり魂持ちである私達は過去にゲームで負けたか、または悪魔に敗北した存在なのですね。しかも、永久に悪魔のエネルギー源とは」

「その中でも魔王は特別強いようね。役割として与えられた体が合わなかったみたいだし。自分は女性だったことも覚えているようだし」

「そ・・それは、きっかけがあってな」

その瞬間、ちらりと黒鬼父を見たのを見逃さなかった。

同じく気づいて、嬉々と恋愛指導をしそうなオーラルの口を塞ぐ。

まだ完全には信頼出来ない状況だ。信頼を得るための手札は確保しておくべきだろう。

黒鬼娘の方は幸の薄さが顔に出ているので、オーラルに気に入られた黒鬼娘は数日で懐く、これは確定事項だ。

乾いた心を優しく暖かく包み込み、潤いを与えて味方に加える。それ程に慈愛系の女神の力は凄まじい。


魔王も時々隙を見せるがガードは固く、黒鬼父に至ってはそういう隙が一切ない。

魔王と同じく黒鬼父も魂で縛ってはいるが【魔王のため】ならば、自傷を厭わない行動に出る可能性もある。

今得た手札で・・魔王の淡い恋心を応援して魔王自身を使って黒鬼父を縛ることが一番だろう。

個人的にも、二人を夫婦にして天界神マーキュリーの側近にしたいと思っている。

あそこの神獣達はマーキュリーに甘々らしいので、こういう人材が必要なのよね。

その辺は「魔王と黒鬼父は将来天界神の配下に加えたい」と、曖昧に話した。


「私達が天界神の配下に・・ですか?」

「他者に甘々にし過ぎて逆に民に嫌われるという、優しさを履き違えた天界神なのよ」

「それは光栄なことですが。出来れば謁見した後に決めたいと思います」

承諾しそうな雰囲気の魔王を遮って黒鬼父が答えた。こういうところが信頼出来るのよね。

「もちろん強制はしないわ。なんならその世界で魔王をしてもいいわよ」

「ははは、お戯れを。では、天界神に面談頂いた後にでも決めさせて頂きます。魔王様もそれでいいですね」

「そうだね・・でも、魔王も魅力的だね」

「その際は、私の教え子たちが攻めてくるわよ」

前のゲーム世界で鍛えた孤児達ならやるだろうな。魔王討伐のラノベも色々見せたし。


「「それはご勘弁を!」」

「お前みたいのが指導したイカれた弟子なんて相手にしたくないね・・ぐべ!」

黒鬼娘は正直すぎね。早速、父親に殴られたわ。


黒鬼娘は機微に疎く感情で動くので、当初の考え通りオーラルの従者があっているだろう。

「黒鬼娘はオーラルの配下にしたいのだけど、いいかしら?」

「もちろんです。しっかりと教育していただければ!」

「あーん?こんなヘビの面倒なんて・・ぎゃ!」

ふふふ、貴方はその【こんなヘビ】に心を奪われて右往左往することになるのよ。


心の弱さを知られたくなくて誰彼構わずキャンキャン吠える。

イツキには黒鬼娘こそチワワに見えている。

怯える子犬には心休まる居場所と大好きな主を与えてあげないとね。


「私達は今後どのように動いたらいいでしょうか?」

魔王達の国は大陸を分け隔てる山脈内の盆地に過ごしているそうだ。

魔王の話では西の地にも国があるそうで、隣接する国と細々と交易をしているとの事だ。

東の地は私達の国であり、人族の統治する国なので避けているそうだ。

「なら、その国を滅ぼしなさい」

「「え!?」」

「西の地をすべて平定するのよ。オーラルが怒るから殺しは最低限で統治は温和に。でも無理はしないこと」

「なるべく遺恨を残さないように、昏き意志が国を覆わない程度に」

オーラルの無茶なお願いはほどほどで、魔王達が西の地を戦場にすれば自ずと強者達をあぶり出すことが出来るだろう。

「貴方達が手こずりそうな存在が居るのならオーラルに連絡しなさい。飛んで行くから」

「「ははっ!」」

二人はオーラルとの繋がりがあるので、念話が可能になったのだ。

さて、あとは魔王が住む国を一度見てみましょう。


<黒鬼ルクレイシア サイド>


「ルクちゃ〜ん、ああ、かわええわ〜」


少し前まで殺そうとしていた輩に傅いて・・しかも、なんだこのブサイクな犬の姿は!ぶふー!しかも鼻息がうるさい。

そして、黒蛇に巻き付かれて「かわええ」「かわええ」言われて・・何故かそれを心地よく思っている自分がいる。

鬱陶しい!と振り払いたいのに、黒蛇が黒王達を可愛がると嫉妬を抱いてしまう。なんなんだこれは!?

まあ、黒蛇は慈愛系の女神様らしいので仕方がない部分もある。神だからな。

精神操作をされているのと同義だ!きっとそう!そういうことなのだ。

でも、イツキに対しても同じ気持ちになるのは?これは納得いかん。

頭を撫でられると鼻息が荒くなり、短い尻尾がものすごいことになってるのも納得いかん!

イツキに抱き枕にされると安堵して熟睡してしまうのも、なんもかんも納得できねー!


どうしちゃったんだ、私はーーー!!!


父は2代前の魔王の忠臣で前魔王、母は物心つく前から既に居なかった。

仲間からは避けられて(前魔王の娘なので畏敬の念を抱かれていただけ)、現魔王とも上司と部下の関係だった。

いままで厳しく寂しい環境にしか居なかったために、二人の馴れ馴れしさと滲み出る癒やしの波動にあっという間に魂を掴まれてしまったようだ。

後に、女神オーラルの忠臣で右腕。しかも親友でペット役までこなす【オーラルの黒狼:黒ブサ】が誕生した瞬間だった。

ルクレイシアの呼び名は、オーラルは【ルクちゃん】、イツキは【黒ブサ】と呼ぶことになる。

ただ、イツキ以外がルクレイシアを【黒ブサ】と呼ぶと、悪鬼のごとく暴れ回るため【オーラルの黒狼】の二つ名のほうが有名になるが、イツキには出会う度に【黒狼(笑)】とからかわれている。

本人曰く「イツキからは親愛を感じるが、他の奴らからは侮蔑を感じる」そう照れながら話していた?そういう都市伝説レベルの話が語られている。


<イツキ・ルノワール サイド>


魔王は転移の魔法が使えるそうだが、私達は3日掛けて山中を歩いていく事にした。

魔王側に事前準備があるので、魔王と黒鬼父は一足先に戻ることになった。


「まず、この姿をお披露目しないと。ティム・・前魔王の復活も説明しないとだし」

まあ、それはそうだよね。筋肉ダルマのゴスロリおっさんが、麗しき美女になったんだから。

ちなみに、魔王の容姿は肌は緑がかっており、髪と瞳は浅緑。体型は豊満な美女なんだけど、耳が尖っている特徴からエルフなんだろう。

基本的に山脈に迷い込んだ亜人達をまとめて魔族と呼んでいるらしい。

ただし、人族は劣等種扱いで見つけ次第抹殺するそうだ。

なお、現在魔王国と交易している国は獣人国だそうだ。魔王国の後に行ってみよう。


「人族は、数ばかり多く大した実力は無いが狡猾で、しかも仲間同士で戦いばかり。ただの害虫です」

数は少ないが女神の恩恵で強者もいるが、神からの依怙贔屓も劣等種認定の一つだそうだ。

そういう理由だそうだが、逆にいえばその数と狡猾さ、飽くなき欲望と女神のサポート、すべてが厄介なんだよね。


「その後は・・・ティムを殺した反逆者の大掃除です。3日もあれば綺麗な国をお見せ出来ますよ」

うゎお!ものすごい殺気、頼もしいわ。冷静沈着な黒鬼父がビクリと反応して飛び退った程だ。

私も力は得たけど、この貧弱な体のままでは2人には勝てそうにない。

今更だけど発氣という力の凄さを改めて実感している。


その二人に比べて・・・おい黒鬼娘、なに私の後ろに隠れてるんだ。

「情けないわね・・・この体毛が黒くビビリなパグの呼び名は【黒ブサ】にするわ」

「まったくイツキは。私は【ルクちゃん】って呼ぶわよ!」

「な!?・・ちっ、分かったよ」

あら?随分と素直に頷いたわね。悪態つくと思ってたのに。


イツキ達が知ることはないが、この時の黒鬼娘は

『わ、私に初めての呼び名・・呼び名って友達同士が使う、伝説のアレだよね!?し、親愛のあかしだ〜!!!ひゃほーー!!!』

と感動していたのだ。


照れて顔が真っ赤になっているのだが、黒鬼のため気づかれなかった。

そんな訳はなく・・理由は不明だが喜んでいるぞ!と二人に認識されてしまい、イツキに頭と顔を撫で回される事になり、更に顔が火照るのだ。

だが、この事で『この娘、結構可愛いわね。このブサ顔も味があるし』イツキにも好感を持たれる事になった。


魔王達が転移で移動した後、私達はかまくらで就寝、翌朝から行動を開始する。

昨夜はもふもふを抱いて寝たのでイツキのテンションは非常に高い。

「じゃあ、魔王国に向かうわよ!」

さて、どんな出会いがあるのかしら?楽しみだわ。


ある意味、災厄の塊であるイツキチームは、どんな歓待を受けるのだろうか?


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