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064話 総長、マッチポンプのラ・メール攻略【ゲーム世界編②:無能からの再スタート】

<イツキ・ヴァーナム・エッセリウ サイド>


オーラルの考えた解放への道筋は下記の通りだ。


 ①オーラルと私、ペアでゲームに参加する。

 ②勝利条件を『二人でゲーム世界からの完全解放』とする

 ③イツキが頑張りゲームをクリアする。


「え!?またゲームするの?それにオーラル、貴方は何もしないのね。私におんぶに抱っこじゃない!」

『私も参加したいのですが、ゲームが始まると力を根こそぎ取られるのです。その時の体力は幼児程度です』

「無駄に時間はあったんだから体を鍛えなさいよ!」

『やだやだ!・・インドア最高!って私がゲームには漏れなく参加してたんですよ!これで必死さが分かりますよね?』

「分からないわ。その必死さを体を鍛え『いやです!』・・あなたニートなの?」

・・・まあいいか。ゲーム世界でみっちり鍛えてあげましょう。

で、ゲーム内容はどう決めるのかと言うと、スキルが勝手に判断するらしい。


【新ゲームの開始、了承しました。報酬はゲーム世界からの解放。参加者はイツキ、オーラルの2名です】

【ゲーム実行者はイツキのみ。ですが神2名の参加ですので デスモード をご堪能ください。基本条件は下記のとおりです】


 ①魔力、発氣、神力などの力は使用できません。

 ②肉体は一般的な人族。

 ③貴方の存在が数多の生物に嫌悪を与えます。

 ④年齢は4歳からスタートします。

 ⑤この世界は7歳時に神よりスキルが与えられますが、貴方に恩恵はありません。

 ⑥戦闘で敵を殺すことは禁止です。


【そしてクリア条件は、この世界で 世界最強 になることです】


クリア条件が曖昧ね。⑥が無ければ全生物を排除すればいいだけだったのに。

基本条件も厳しいけど、いちから鍛え直したかった私には僥倖だ。


【では・・早く死んでくださいね】

・・・ゲーム運営が言う言葉じゃないよね?


さて、ゲームがスタートした途端にバケツの水をぶっ掛けられたのですが?


「気持ち悪いのよ!私の前から消えなさい!」


出会い頭に金切り声を出す、はしたない少女は私の姉であるチョリンナ・ルノワール、6歳だ。

その後ろでクスクスと笑っているのはメイドの皆さま。

すべての生物に嫌悪ね。4歳にして既にこれか〜、窓に映る私は金髪金瞳の超絶プリティ美幼女なのにね。


さて、どう反撃しようかしら?と考えていると、私の服の中から黒蛇が現れて、syaーー! 姉達に威嚇する。

「「「ぎゃーーー!気持ち悪いわ!」」」

だからあの娘に関わるのは嫌なのよ!と言って逃げていった。なら近づくなよ。

「ありがと、オーラル。貴方はそんな姿なのね?」

『貴方の使い魔設定よ、この世界では力は全く無いけど』

うむ、ヘビの場合どうやって鍛えればいいのだろうか?


しかし、普通の人間と聞いていたけどこの感じ・・・既に騎士と対峙しても勝てないまでも切り抜けられそうだわ、まだ4歳なのに。

それはそうだ、世界神が一目置くレベルの神をたかが上級神の力とスキルで完全に封じ込める訳が無い。

それが僅かな漏れだとしても、その恩恵は計り知れない。


よし、早速修行開始よ!まずは足腰を鍛えるわ。

ガシャーーン、窓を蹴り破り外に出る。

まずは、裏山で坂道ダッシュよ!!!

なぜ玄関から出ない?それは外出を禁止されているからだ。


「お前のような恥ずかしい存在を他人に見せられるか!いいな、部屋にこもってろ!」


父というゴミにそう命令されているのだ。

ちなみに母なる存在は既に他界しており、今いるのは継母だ。

さっきの姉は継母との浮気で出来た子らしい。母なる存在の死の際に初めて紹介された。

そう、母なる存在の今際いまわきわに、継母と娘の二人を嬉しそうに紹介したゴミ、それが婿養子の父なる存在だ。

つまり、このルノワール子爵家で正当継承者は私なのだ。

それが気に入らないゴミどもは徐々に私の存在を消していく腹づもりなのだろう。

7歳のスキル授与は貴族子息の義務。そのスキルの内容によっては養子に出されるか殺されるか?最初の分岐点はここだろう。

既にスキル無しの「無能」と知っている私は、奴らに殺される前に心身を鍛え上げなければならない。

前のゲーム世界の両親は良い方々だったけど、こいつらはどうでもいい存在だ。


「何の音だ!」「イツキ様だ!」「逃げた!?」

「お嬢様が逃げたぞーー!!!」

「いい機会だ、裏山で偶発事故に見せかけるのだ!いいな、偶発だ!」

・・・あ、これもう帰れないわね。開始早々、分岐点があったようだ。


「お嬢様、危のうございます!」

「!?バカ!やめろ!」

流石に移動速度は兵士達の方が早く、2名の兵士に追いつかれた。そのうち一人が「危のうございます」と言いながら剣を振り下ろしてくる。

貴方、偶発の意味分かってる?みんな見てるんだから口封じしても真実は貴族社会にすぐに広まるわ・・本当に質が低い兵士ね。

幸いにも思考加速も並列思考も先読みも、すべて今までの通り出来る。体がついていかないだけだ。

最低限の動きで剣を避けた後「あだっ!」兵士の弁慶の泣き所にかかとで蹴りつける。

うずくまって下がった顎に膝蹴りをして「うぐっ!?」脳を揺らす。


今の私の力では倒せないので足止めに徹して逃げる。

兵士は装備をしていないので弱点だらけだし。

私の手際に驚いて硬直していたもう一人の兵士が私を捕縛しようとするもすり抜けて、後ろから膝カックン「おわっ!」を決める。

そして膝をついた兵士に「ぐべ!」延髄かかと蹴りを叩き込む。

正座の状態でうつ伏せになった兵士を台座にして、近くの木によじ登り、そのまま塀の上に立つ。


「3年後よ。スキル授与の前に戻るわ・・子爵位を取り返しにね。じゃあね、無能共!」


追加でやってきた兵士2名に伝言を伝え、衣服に詰めていた土を投げつけ「うわっ!」目潰しを食らわせる。

そして・・・そのまま邸内に戻り、こっそりと潜伏するのだった。


私が外に逃げたと思った兵士達は、執事・下働きも加えて総出で裏山の捜索に向かっていった。

父なるゴミも「これはチャンスだ!」と喜び勇んで飛び出していった。

やつは婿養子になる前、上位の騎士だったらしくそれなりに腕が立つ。

今は大人とまともに対峙するのは危険だ。沈静化してから移動するのがベストだ。

それに、今はただの人族、しかも4歳だ。流石に何の準備も無しに旅に出る訳にはいかない。


さて、この邸内に協力者を作って衣食の心配が無いようにしないとね。

嫌われ属性を所持しているイツキ、どのように味方を作るのだろうか?

いや、この屋敷にはイツキの味方が一人だけ居るのだ。


<メイド:ウランサイド>


私はルノワール子爵家の新人メイドのウラン、しがない商家の3女で16歳だ。

花嫁修業のため子爵家のメイドになって一ヶ月、皆が嫌うイツキお嬢様の身の周りのお世話をしている。


私には不思議なスキルがあって、他人の心?の匂いを感じることが出来る。

授かったスキルは【美鼻】レアスキルらしく情報が無かったが、色々と試した末に15歳時にようやくスキルを理解することが出来た。

今は、情報が無いのを利用して、表向きは 嗅覚が優れるスキル と説明している。

商売相手の心の一端を知る事が出来るスキルなんて知られる訳にはいかないからね。

実はこの匂いの精度を上げるための修行として、半年の予定でメイドになっているのだ。

半年後は別の貴族のメイドになって、最終的に匂いと性格の対比表を完成させる予定だ。

そして経験を積んだ後は、実家の商家のためにこの力を活用するつもりなのだ。


あと・・この力で相手の容姿と心の美醜の落差を知る、これが私の密かな楽しみでもある。

身ぎれいにした貴族、例えばチョリンナ・ルノワールお嬢様などは、見た目の美しさと反比例してまるで生ゴミのような臭いがする。

奥様は元平民と言うこともあり慎ましく控えめ、影が薄く匂いもほぼ無臭。

旦那様に至っては、血なまぐさくて近寄りたくもない。

こういう輩を心の中で蔑むのが実益を兼ねた私の趣味なのだ。

きっと自分の匂いを嗅げだらさぞ臭いのだろう、と思う。


その中で、イツキお嬢様は唯一の癒やしだ。

天上のかぐわしい匂い、きっと前世は聖人か神様だ!(正解です)・・・私の拙い表現方法ではこれが限界。なぜ皆が嫌うのか意味が分からない。

その甘美な誘惑にあがらうことが出来ず、着替えやお風呂のお世話の際に、気がつけばイツキお嬢様をくんかくんかしてしまう。

だけど、イツキ様は怒るどころか「しょうがないわね」と、いつも優しく頭を撫でてくれる。

12歳差なのに私が姉に甘える妹のようだ。


その心の癒やしが・・イツキお嬢様がお屋敷を飛び出してしまった。

イツキお嬢様の為にも、この屋敷には居ないほうがいいことは理解出来る。

だけど・・イツキお嬢様を失った喪失感は消えることはない。

他の方々はみな臭いし、もうここのメイドやめようかな。

寝室の枕を濡らしながらそう考えていると・・・


『起きなさい、ウラン』

「え!?イツキお嬢様!」

『しー、静かにしなさい』

『その前に・・匂いを嗅がせてください!話はそれからです!嗅がせてくれないと大声だしますよ!』

『まったく貴方は・・・しょうがないわね』


イツキお嬢様の胸に顔を埋めながら優しく頭を撫でられて・・私の幸せはここだ!と気づく。

きっとこれは天啓なのだろう、もう逃がしませんからね。


この後、安心感から爆睡してしまいイツキお嬢様に叩き起こされた。

イツキお嬢様・・いえイツキ様は生涯の主!そう心に誓ったのだった。





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