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幕間001話 伊月に振り回される、女神マーキュリーの一喜一憂

<女神マーキュリーサイド>


『マーキュリー様、シャクティちゃん、至急起床願います。激甚災害来訪者と思われる存在を発見しました。これより対象者への警告と存在レベルの調査を始めます。女神様方は神の座で待機を』

「・・・ん、プールちゃんお願いね」


今の声はプールちゃん。天界を支える世界樹でこの天界を管理する【3人の管理者】の一人ですわ。

さて、異界からの来訪者は・・この方は女神?すごい力を感じますわ。

この方の慈愛の波動が心地良い、私と同系の生きとし生けるものを慈しむ女神かしら?


私は気だるげに起床しましたが、眠りについていても全く力が回復していませんね。

逆に力を失っていくばかりだわ。

もう・・既に限界値、これでは大事に育んだ生き物達が住む天界が維持出来ませんわ。

もしや!?来訪者の女神はこの天界崩壊の困難を救うため?もしかして私達を助けに?

いえ、神は他の神への介入など一切しません。それならば偶然?

ならばこそ一縷の望みに賭けるしかありませんわね。


「シャクティちゃん、来訪した女神が私達に助力頂ける方か見極めてくれるかしら?」

「うんいいよ!(私にとって都合の)良い方だったら・・私の【独断】で決めていいよね?にゅふふふ」


・・・うわっ、シャクティちゃんダークな部分全開ね。まるで悪神と代償契約する気分ですわ。

でも、私のために一生懸命に働いてくれるのは事実なのよね。

何か嫌なことをされても多少のことなら我慢しないと!


世界樹の天頂にある神の座に移動し、そこの主座に座ると現在の天界の惨状が克明に感じられる。

世界樹が支える天界の5割を占める大陸。そこは金竜との戦闘で大地は歪み、歪な大地に成り果てている。

既にここには人族は存在せず、加護という束縛から解き放たれた強靭な魔物達が徘徊する地になっている。

唯一、人族が避難した離島には加護を与えているが・・・それだけに力を絞り込んでいても終わりは近い。


「神勅である!神獣たちよ目覚めなさい・・・ムンバ、監視業務お疲れ様」

「いえ、問題ございません」


私の声に答えは人物は神獣達の取り纏めである漆黒の毛並みを持つ猿公ムンバである。

本来でしたら神獣達に力を与えることが出来ないため定期的に眠りについてもらっているのですが。


このムンバだけは

「いついかなる時も女神を守るため」

と、頑なに眠ろうとしないのです。金竜の奇襲が頭から離れないのでしょう。


この猿公ムンバは猿神の家系らしく、あと100年も働けば下級神に至る存在でありましたが、金竜の襲撃で大幅に力を失ってしまいました。ですが今でも神獣の中では最強の存在です。

少し時間を置いてから神獣白虎のグリード、神獣黒鷲ジェルエと神獣緑蛇グルジが参集した。

白虎のグリードは5m近い体躯であるものの臆病で防御専門。

黒鷲ジェルエと緑蛇グルジも大人しい性格で、主に偵察部隊であります。

唯一の攻撃向きの神獣はフェンリルなのですが・・・


「遅いぞ、ララム」

「ようやく揃ったか・・・遅れたララムよ、お前死にたいのか?」

「すまなかったムンバ。これでもお声を聞いてすぐに馳せ参じたのだ・・俺だけ寝所遠すぎじゃないか?」

「神速の足を持つから問題ない。と言ったのはお前だろう」


最後に来たのが神獣フェンリルのララム、体毛が青いのが特徴です。皆に会うのは10年ぶり位ですが、みんな元気そうですね。


「みな、集ったか、大義である!」


え!?なんでみんな微妙な顔をされているのですか?


「また小さくなったか?マーキュリー、なあ・・俺達相手に威厳を出そうと偉そうな言葉使いしなくてもい

いんだぞ」


ううっ!ララムに正論パンチを喰らいました。みんなが心配するから頑張ったのに!

力を失っていった結果、既に私の姿は5歳ほどの幼女の姿になっているのです。力の枯渇は深刻なのです。


「ぐす・・・分かった、普通に話すよ」

「貴様!万死に値する!」

「このバカが!」

「考えなし!」


余計な発言したララムはみなにボコられていた。慈愛の神の私ですが・・今回は仲裁しません!


「現在、我が天界に異界からの来訪者、女神が来てるんだけど、すごい心地の良い波動なの」

「ほう、マーキュリー様がそのように感じられるのでしたら間違いないでしょうな」

「なら信用できる。お前は戦闘以外なら有能、ぎゃ!ムンバ殴るなよ」

「もしかしたら私達の救世主になってくれるかも!?ということでシャクティちゃんに行ってもらったので、ちょっと様子を見てみましょう」


【警告!激甚災害来訪者よ!理由のいかんによらず天界マーキュリーより速やかに立ち去りなさい!拒否すれば神の裁きが発動します!】

『・・・・あ?』


あれ?この女神すっごく怖い、戦神波動に変わった!?さっきまであんなに優しい波動だったのに?


「マーキュリー様、この方は戦神、あるいは闘神なのではないでしょうか?」

「でもでも!すっごい優しい波動を感じてたのよ!私が影響される程の波動をどちらも持ってるなんて・・・」


神には基本的に2種類のタイプが居る。

荒御魂を持つ怒りや闘争本能を持つ戦神系統の神。

和御魂を持つ優しさや慈しむ心を持つ慈愛系統の神だ。

荒御魂を持ちながらも優しき神、和御魂を持ちながらも猛々しい神は居るが、両魂突き抜けた存在は天地開闢以来存在していない。


すべての神の究極的な目標である

【全魔(全属性)】

【神魔(聖魔混合)】

金御霊こんみたま(荒和両魂)】

は、それぞれ可夢偉かむいとも呼ばれている。その一つを会得している?

現在、可夢偉を会得している神はごく少数で【全魔(全属性)】のみらしいです。きっと私の考えすぎでしょう。


『マーキュリー様、威圧警告完了しました。なお、クソ竜以来の激甚災害来訪者の数値が安定しましたので、これより天界マーキュリーでの存在レベルの計算を行います』

『げ!?・・・算定完了しました。対象者の存在レベルは169。これが下限値と思われます。上限値は測定不能です』

「ひゃ・・169!?」

「マジか!」

これで下級神以上であることが確定しましたね。

ですがこの程度では可夢偉には届かない。やはり考えすぎでした。

ちなみに私の存在値は500以上、ですが瀕死の今は101。

どれだけ危険値か理解出来るでしょう。


『クソ竜の当時の上限値127を遥かに上回っております。逆に疲弊しているマーキュリー様の現在の存在レベルは101。危険!すぐに神の座に移動願います!』

『アラート!アラート!守護神獣達よ目覚めなさい。そしてただちに激甚災害来訪者の情報収集を行いなさい!なお対象者への手出しは不許可です』

「いやもう目覚めているから。なに焦ってんだよ、プール」


世界樹が、神の波動にこれほど影響されるとは・・数値以上の神のようですね。


「プール。調査した感想はどうでしたか?」

『彼女は・・理由は言えませんが敵対などありえません!・・もし敵対をお考えなら、女神様と言えど【私達の敵】になりますよ』


・・・プールちゃんが私達に敵対!?【3人の管理者】の一人であるプールちゃんに敵対されたら、それこそこの天界終わっちゃうよ〜!

しかも【私達の敵】と言った。つまりは他の天界にいるすべての世界樹と敵対すると言うことだ。

おそらくは聖杯保持者なのだろう。

天界で偉業を行うと、稀に世界樹から聖杯を貰えることがあるんだけど、基本ほぼエルフの王に与えられるもの。ですが例外は存在するのです。なら敵対はNGですね。


「ムンバ、恐らく彼女は神であり聖杯保持者なのでしょう。プールちゃんに同意しますよ」

「それなら仕方がありませんね・・ですがプール。本当に大丈夫なのでしょうね?」

『それは保証します!ちょっと意地悪なところはありますけど・・ちょっとかな?』


まあ、プールちゃんがそういうのでしたら納得するしかありません。

神には神の、神獣には神獣の、世界樹には世界樹の、独自の掟がありますので掘り下げることはしません。

あとは、シャクティちゃんの調査次第ですが・・正直、これが一番不安です!


『交渉してきたよ!彼女の名前は伊月、私がぶるぶる震えるほどの逸材だよ!でねでね、なんと存在値330も借りられたの!』

えっ!?それって女神のほぼすべての力じゃないんですか?

しかも利息は+ー・・ゼロ!?すべての力を貸してくれるなんて、逆にありえないんじゃ?


『あー、彼女の事は常識で考えてはいけません。伊月がOKなら無問題!彼女にすべて従う、これが真理です!にょほほほ!』

「これで天界崩壊の心配が無くなりましたね」

「すごい!」「やった!」

「おい・・・本当に大丈夫なのか?流石に都合良すぎないか?」


確かに!一体どんな交渉したらシャクティちゃんにここまでの信頼を得られるんでしょうか?

【3人の管理者】の内、世界樹のプールちゃん、天界の理改変の発動体であるシャクティちゃんが伊月という存在にそれぞれ陥落した事になる。

私の思い込みによる暴走を防ぐために施した対策が裏目に・・これって大問題では?


『他神の力をいきなり与えるのはマーキュリーに影響大なので、毎日存在値を20ずつ与える事にしたよ』


・・・それは良いのですが。少しずつ力を補充していくのは納得なのですが・・これは?


「あの・・・シャクティちゃん?この眼鏡と鼻とヒゲは、何なのですか?」

「ぶふ!何だよその顔!」

「あははは!」「変顔〜」

「・・・(怒)」

『にゅふふふ、それが伊月と私の条件です。ゆっくり吸収してね。あと毎日色々と!色々シてもらいますから〜、ぎゅふふふ!』


毎日こんな事するの!?でも恥ずかしいのは勿論なんだけど・・何故か力の吸収が心地良い。

あれ?この力って既に20以上じゃない?

しかも、心地よいこの力で・・心が蕩けてしまいそう。

この力は純粋で・・優しく・・ちょっとした恐ろしさの隠し味がまた甘露で・・美味!

鼻眼鏡で蕩けた顔をしている女神に爆笑する錫杖と狼、狼狽するその他神獣達だった。


これがあと16回あるの!?・・16回しか無いの?正直、こんな至福は初めて。私・・しっかり自我を保てるのかな?


だが、闇金伊月から力を勝手にじゃぶじゃぶ貸し出されて、あっという間に破産することを・・慈愛の女神、マーキュリーは知らないのだ。


そして、最終日には利息200程の存在値と引き換えに【スクミズ】なる手足を露出させた破廉恥極まりないピチピチ衣装(この世界基準)を着せられる事を・・奥ゆかしき女神、マーキュリーは知らないのだ。



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