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058話 総長、マッチポンプのラ・メール攻略【ゲーム世界編:鳥達との戦い(後編)】

<イツキ・ヴァーナム・エッセリウ サイド>


「さあ、いらっしゃい!」


体の力を抜いて思考速度を上げ、即時行動出来るように精神を研ぎ澄ます。

まずは、攻撃を受けてみたいので発氣も魔法もなしで。


左上後方に空間の歪みを感知、そこからブルーサファイアカワウが両の翼を後ろにミサイルのごとく飛び出してきたのでギリギリで避ける。

その姿はカツオドリが空中から水中に飛び込んだ姿にそっくり。でもそれカワウの動きじゃないわよね。

しかし、避けた!と思った瞬間に風の刃が シュバッ! 私の左肩に直撃。

その攻撃に気を取られた隙に、直上、右膝、左腿裏を狙い3本のビーム攻撃が来た。発射したのはルビーペリカンね。ビームを曲げたの?

直上は右手掌打で、残りは回し蹴りで迎撃して、後方に飛び退った時に右腰にビームが バシュ! 直撃した。


なるほど、ルビーペリカンが発したビームを各箇所に配置したパールハチドリで反射して向きを変えて私に攻撃しているのね。

しかも右腰に向かってきたビームだけは色が無く無色だった。小賢しいけどやるじゃない。

そして、戦闘指示を出しているのがハシビログリフォンって訳ね。

魔法ジャミングの音の中に別の音を混ぜ込んで指示を出している。

と、思わせてテレバシーを併用している可能性もあるので過信はしないが、奴が司令塔の一人なのは間違いない。

適度な打撃で更に精神が研ぎ澄まされ、より強く成長出来そうだ。

もうしばらくはこのまま楽しもうかしらね。


ウキウキと戦闘を楽しむイツキと異なり、鳥チームのほうの衝撃は甚大だった。


「なあ、ミーヌシュカ。当たってるよな?」

「はい、レオニード達の空間斬が直撃してますし、私のビームも直撃しています」

「それで無傷?しかも魔力障壁とか何も使ってないよね。そもそも魔法は私がジャミングしてる」

「はい、上級神でもそのまま受けたら手傷は負うはず。現にこれで追い払えていましたから」

「・・・本当に手加減してくれてるんだな」

「それでなければ初手で死んでますから。しかも、神々の呪いまで解いて頂いてこのザマです」

そうは言ってもこちらからへりくだれば間違いなく不興を買う。

だってあんなに嬉しそうに攻撃を受けているし。

おそらくは戦神の系譜なのだろう。とにかく全力で攻め続けるしか道はない。


いくつか攻撃を受けて躱して、ブルーサファイアカワウは潜ることに特化した空間系魔法使いと判断した。

異空間はもちろん大気中にも潜り込み、もちろん地中にも潜る。

地面からの攻撃は普通なら厄介なんだけど、オートで発氣の障壁が展開される【絶対領域】があるので攻撃を気にすることはない。

ちなみに、この【絶対領域】は私をローアングルから撮影しようと迫りくる変態共がうざすぎて、その対策として中学時代に編み出した技だ。

マンホールや道の側溝に隠れたり、撮影機器を密かに設置等、悪意ある有象無象に対する攻防一体の技だ。

いちいち対応するのがうざかったので開発したのよね。

そいつらをオートで対応する優れモノで最大発動で全方位からの攻撃をオートで対応出来るが、つまらないからしない。

なお、そのせいで私の生写真が希少となり、ものすごい価格で転売されるようになったと聞いたときは笑ったけど。


イツキは知らないが、その撮影者や販売主達はイツキが高校2年の頃にはすべて一掃されている。

立花の財閥が世界各国より厳選した凄腕弁護団や政治家、はては裏稼業の方々も味方にして表裏一体の攻撃ですべて殲滅された。

今では立花が立ち上げたイツキファンクラブ(非公式&情報漏洩厳禁)でのみ、画像は流通されておりイツキの詳細情報なども提供されている。

なお、入会条件は非常に厳しく、紹介制の上に一芸に秀でたものとされている。

そして、ファンクラブ内では「有能スタッフ募集(イツキに会えるぞ!)」と喧伝しており、有能人材達をちゃっかり財閥にスカウトしている。

スカウトされた人材はイツキに出会う機会が多々あり、それをファンクラブ内で面白おかしく喧伝するので、今ではファンクラブ内の熱量がすごいらしい。

世界有数の六神財閥の後継者である立花。個人の趣味(可愛い幻獣達のオマケで写ったイツキ画像なので【絶対領域】も発動しない)に実益を付加させるとは・・恐ろしい女性である。


さて、しばらく戦闘を楽しんだが・・攻撃に慣れてくると色々と不満が出てきた。単調で洗練されていないのだ。

ブルーサファイアカワウが使う風の刃と思った攻撃は空間斬のようだが、たまたま使えるから使っていると言う感じでまったく技が洗練されていない。

巨体の黒蝶貝エミューは3体もいるのだから、ブルーサファイアカワのゲートを使い死角からその巨体で突進させたりとかすればいいのにそれもせず、ぼーっと突っ立っている。

パールハチドリは配置を変えないので、どこからレーザーが来るのか既に丸わかり。

32個所を警戒すればいい簡単な仕事になった。

ルビーペリカンもレーザーも威力が弱い。おそらくパールハチドリが耐えられないのだろうが、せめて連携を深めて移動しながら反射するとかして欲しい。

ハシビログリフォンは相当な力を秘めていそうなのに、いつまでもジャミングと司令に徹している。

クチョルトゥ三姉妹に至っては、いつ参戦しようか?ここで仲間の邪魔したらとウロウロしている・・経験不足丸出しだ。

う〜〜〜、もったいない。研磨して輝かせたい!


「もう見てられないわ!」


ビームが当たろうが無視して、ずんずんとハシビログリフォンとルビーペリカンに近づいていく。

襲いかかるブルーサファイアカワウに対しては脳天にチョップを食らわせて、気絶させて次々と生成した棒に吊るす。

最後の一羽を棒に吊るして盾として翳すと、ビーム攻撃が止む。


「く!?仲間を盾にするとは卑怯だぞ!」

「貴方達の戦い方がお粗末でもう飽きたわ・・さて、どう料理しようかしら?」

「な!?この下郎が!仲間を返せーーーー!!!!」

イツキは、どのように戦闘で屈服させるか?と言葉を紡いだのだが「皆を食べる料理の検討」と誤解されたようだ。


「貴方達は能力依存で危機意識が欠如している。いつ強敵に出会うか分からないのにぬるすぎるわ。さて、たゆまぬ研鑽をさせるには・・魂に刻み込む程の恐怖がいいかしら?」

その言葉を合図にカワウ達を避けるようにビームが飛んでくるが、避ける必要もない。

そのまま受けても効果はないが、あえて濃密な暗黒属性の魔力を周囲に放出。能力に依存したしょぼいビームなどすべてかき消していく。


「え!?どういうことですか?その黒いモヤは?」

「魔力の密度が段違いなのよ。そんなスカスカの力じゃ私の垂れ流す魔力すら抜けないわ」

この程度で驚いてもらっては困る。本番はこれからなのだから。暗黒属性の真価を見せてあげるわ。


「さて、これから貴方達の能力を奪っていくから。頼みの能力を次々と奪われていく恐怖を味わいなさい」

「え!?」

周囲に展開している暗黒属性の魔力から、流星の如く次々と昏き光弾が放たれる。

そして、逃げ惑うパールハチドリ達に襲いかるが、その姿を飲み込むが体を傷つけることなく通過してイツキの元に戻る。


「まずは貴方達の反射能力を【強奪】したわ」

「なにを馬鹿なこと・・え!?あ、あれは!」

ハシビログリフォンとルビーペリカンが周囲を見渡すとパールハチドリの白き輝きが失われていることに気づいた。


「ふふふ、次は飛行能力を【強奪】するわ」

「みな、こちらに逃げてきなさい!」

ルビーペリカンの指示に従い、黒蝶貝エミューの元に避難するパールハチドリ。

だが、周囲から集まってきたところで、一つの昏き光弾が円を描くようにすべてのパールハチドリを通過していく。

昏き光弾に接触したパールハチドリは飛行能力を奪われて、次々と落下していく。


「そして、クチョルトゥ三姉妹からは姉妹の記憶を【強奪】するわ」

3羽の頭を昏き光弾が直撃して通過していくと、姉妹はそれぞれを警戒しだす。

エンシェントの名を持つ者達は本来は個で生き、同族で群れることはない。

三姉妹とはいえ集団で行動するほうが異常なのだ。

イツキの強奪で姉妹という記憶を奪ったことで、本来の生態に戻った姉妹たちはそれぞれがそれぞれを敵と認識して警戒を始めた。


「黒蝶貝エミューからは硬さを【強奪】しましょう」

「ハシビログリフォンからは打音を【強奪】しましょう」

「ルビーペリカンからはその赤き輝きを【強奪】しましょう」

「ブルーサファイアカワウからは潜行を【強奪】しましょう」

昏き光弾が流星のごとく輝く度に、何かの能力が強奪されていく。

そして、体から能力が消えていく度に、その空いた隙間に恐怖が充当されていく。


「さて、戦場で丸裸にされた感想はどう?あとは・・これに耐えてね」

最後のトドメにイツキが膨大な神威を放つと、すべての鳥達の心がポッキリと折れた。

しかし、絶望に涙するものの「仲間だけは守る!」という気概が失われてはいなかった。

クチョルトゥ三姉妹も姉妹以外を守ろうとしている。


うん、合格だね!

ご満悦のイツキだが、鳥達には今まさに絶体絶命、死神に首を切られる直前だ。


<ミーヌシュカ(ルビーペリカン) サイド>


「さて、戦場で丸裸にされた感想はどう?」

どう?・・「死」以外の言葉しか。あと音がうるさい。

クチバシが私の意思に関係なくカチカチと音を立て続けている。


そしてトドメの神威が放たれる。何この神威、これが神威!?

だったら今まで出会った神々のあれは?訳が分からない!

ああ、だめだ。思考が・・体も動かない・・ただただ眼の前の存在から逃げ出したい。


『死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ・・・』

これが本当の恐怖なのか。だが・・・仲間だけは・・・絶対に逃がしたい!

恐怖を実感すると、今度は仲間すら守れない弱い自分に羞恥を感じて眼の前にいる恐怖の存在に、思わず問いかけてしまった。


「・・・なぜ!・・・弱い・・仲間すら・・・まも・・」

「あなた自分の能力を研鑽したことある?努力しないものに真の強さなど得られるわけはないわ」


その言葉に、何故技を磨かなかったのか?仲間との連携方法を検討し尽くさなかったのか?

今度は胸を締め付け、頭を殴られたほどの後悔が押し寄せる。

その後に、沸々と「生きたい!」「もっと強くなりたい!」「仲間を守る!」という渇望が体中から漲ってくる。


「まだ・・間に合うでしょうか?これから強くなれるのでしょうか?・・・私は諦めますが、せめて仲間は見逃して下さい!仲間の未来だけは!」

何故私は、私を殺そうとしている存在に問いかけている?無駄な懇願をしている?


「そのために私が来たのよ。さあ私の手を取りなさい。戦神たる私が鍛えてあげる。そして・・危機の際は私が守るわ!」


その言葉に思考がクリアになる。

そして私を含め、恐怖に苛まれていたすべての仲間に希望の光が差し込んだ。


「「「「これが・・・本当の神!」」」」


気がつけばその心優しい波動に心を開き、頭をたれていた。

なぜ問いかけたのか?懇願したのか?

その答えは・・・眼の前の恐怖の存在が、いつの間にか包み込むような優しい微笑みを浮かべ、優しい波動を発する光の女神様になっていたからだ。


そして、心を開けば失われた力が満ち、活力がどんどん湧いてくる。まるで今までより数十倍の強さを得たような感覚!万能感!

ああ、戦神である光の女神様。貴方と共に歩めばきっと間違いはない!私を・・私達をお導き願います、最強の高みにまで!


このように地獄の底から天国に舞い降りた気分で鳥達が感動に打ち震えている中で


『ししし、奪った力を戻しただけなのに涙を流して喜んでるわ。部下をゲッ〜〜ト!しかも!もっふもふ!!!』

光の女神の微笑みの裏で、イツキの内面はいつも通り真っ黒だった。


その偽善の光景を、遠目からエンシェントドラゴンのフィルが汚物を見るように見ていた。

よし・・・あとであいつ〆よう!と心に誓ったイツキだった。


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