054話 総長、マッチポンプのラ・メール攻略【ゲーム世界編:お馬さんに愛されて】
<イツキ・ヴァーナム・エッセリウ サイド>
さて、最後に料理武隊に仕返しをしないとね。
私を出し抜くために戦神信仰国側に味方したのは問題ない。
「私を驚かせる企みは推奨」
これはみんなにも言っていることだ。
だけど・・その仕返しをしないとは一言もいっていない。
ソフィアからの駄目な姉を見るような視線が痛いけど、この世は舐められたら終わりなのだ!
うちの料理武隊は私が魔力で作る料理に感動して、戦闘より料理人になりたいと思っている人材の集まりだ。
基礎訓練は終えたので、今は各々の興味に応じて武隊を編成している段階なの。
料理武隊の隊長が私、部下はリナ(14歳)を筆頭にサリナ(12歳)、コマ (10歳)、ユイユイ(10歳)、シャーナ(10歳)の5名だ。
髪の毛が料理に入らないように髪型をポニテで統一しているのが特徴の部隊だ。
ただ、この娘達はしょっちゅう料理をつまみ食いしているため、体型もぼっちゃりさんで統一されている。
本来はこの娘達のためにも太り過ぎは駄目よ!と示したかったのだけど・・まさか反撃を食らうとは。
なら、お返しを兼ねて別な方法で痩せてもらおうかしらね、うふふふ。
夕食後に、料理武隊に対してみんなの前でケーキを授与する。
「料理武隊のみんな、よく私を出し抜いたわ。ご褒美にそれぞれにホールケーキを授与します」
「「「「ありがとうございます」」」」
「私の魔力マシマシで・・いつもの2倍は美味しいわよ」
「「「「ごくり」」」」「「「2倍!?」」」
最近、リナ達の研究成果で魔力を余分に使って甘味を生成すると、美味しさが倍増する事が分かったの。
料理は旨味が増して味が濃厚になりすぎるけど、甘味の場合は甘さに何かしらの旨味が加わるようで経験したことのない至高の味になるのよ。
その説明をみんなの前で行った所、周囲からの圧が・・甘味の悪魔達が目覚めだしたようだ。
「では、私は用事があるので・・・じっくり味わってね!」
「あ・・あの・・障壁は?」
そして、イツキの姿が消えるやいなやバーサーカー達が至高のケーキに襲いかかるのだ。
「みんな友達よね?」「5つもあるんだから公平に分けましょう!」「ケーキはすべて私のものよ!」「「「けーきー!!!」」」「「「がうがう!」」」「ぴかきん!ケーキを奪取!」「おおおお〜っ!」
「「「ぎゃー!だめー!!!」」」
最近、調理場にこもって運動不足のあなた達にその美味しいケーキを守れるのかしらね?
仕返し完了!
修羅の地と化した食堂を後にして、ブロンズ伯爵領への使者が戻って来たので、その報告を聞きに行く。
移動中に「私も食べたかったな」とむくれるソフィア。あなたも強奪するつもりだったの?
妹はバーサーカにしたくないので魔力マシマシシュークリームの詰め合わせを差し入れる。
「うわぁ、お姉様大好きー!」
うちの妹は本当にかわえーな〜
ソフィアはシュークリームにかぶりつくが、周囲のメイド達からの物欲しそうな視線に気づく。
「ねえ、みんなで食べましょう!」
「「はい!」」
「「「お・・美味しい!」」」
ソフィア・・・なんて良い子なんでしょう。
それに引き換えメイド共は意地汚いわ・・って、そういえばみんなに振る舞って無かったかしら?
その旨をメイド達に話すと鼻息荒く「「頂いておりません!」」と怒られた。
シンデレサ達にも振る舞わないと怒られそうね。後でフォローしておきましょう。
この場ではお詫びがてらに魔力マシマシアイスシューを生成、和気あいあいとした雰囲気で謁見の間に到着する。
「ブロンズ伯爵から軍事支援を受諾されました!」
「あら?却下されると思っていたけど」
「それが入領もスムーズで、こちらの支援要請もすんなりと受け入れられました」
「それはおかしいな。ブロンズ伯爵とジブリール侯爵とは犬猿だ。それが嫌味のひとつもなく?」
北の森は強大な魔物が多く、この森が西側にあたるブロンズ伯爵でもデュラハンの群れを確認したのかしらね。
でも貴族って頭固いから敵対勢力には容易くは与しない。
助けて欲しくてもなるべく難癖をつけて弱みはみせないものだ。
それは同派閥内といえども同じなので・・・やはり怪しいわ。
王太子派であるブロンズ伯爵領は北は海、東にはドレイドル侯爵と王都、南側にはトリス伯爵と隣接している。
ドレイドル侯爵はジブランドルーラ帝国からの侵攻時の防波堤なので支援は無いだろう。
しかも元シンデレサ王女派閥(現在は中立派)でうちと密かに交流してるし。
王都は対抗勢力が3すくみ状態だったが、その一角の王女が消えて現在は王と王太子の直接対決でそれどころではないだろう。
トリス伯爵は王女派から王太子派に鞍替えして同派閥だけど、我が国と隣接しているので防衛上ブロンズ伯爵への派兵は難しいだろう。
それでもデュラハンとの戦闘前からあっさりと敵側の支援を受け入れるのはありえない。
そういえば、うちと隣接するビール伯爵領も国王派から王太子派へ鞍替えしている。
そしてその隣はプリンセス王国最大戦力であり王太子派の重鎮エルマール公爵だ。
北の森には正体不明の瘴気ドーム、周辺領地はすべて王太子派閥に変わっている。これは南の森も何か仕掛けがありそうね。謁見後に私の魔力で念入りに探ってみよう。
「ですが、流石に我が国への一時的な土地の貸与は却下されました」
「それは仕方がないわね・・なら、支援は中止しましょう」
「「え!?」」
「高慢ちきなブロンズ伯爵に恩を売るいい機会なのに何故ですか?」
私とゲーム運営側のナターシェ、それと私の眷属になっているエンシェント・ドラゴン達と勇者ベローネはゲーム本編開始前は自領を出ることが出来ない。
ティエとフィルのドラゴン達は仕方がないけど、ベローネは眷属にしたつもりはまったくないのだけど?そういう判定らしい。
そのため、私達以外の戦力とブロンズ伯爵の戦力でデュラハンの群れを撃退しないといけないのだけれど・・・
「周辺領地が王太子派に鞍替えしている中での魔物の大量発生。魔物がうちに向かって来ない理由は不明だけど、例のティエを呼んだ魔法陣が考えられるわ。シフォン教皇はどう思う?」
「魔法陣については詳しくは知らないのですが、教会はシンデレサ様の帝国への輿入れに熱心です。その可能性はありますね」
ティエがこちらに呼ばれたときも魔法陣に瘴気が使われていたらしいので、考慮したほうが良い。
「恩義もないブロンズ伯爵領など後回しでいいわ。最優先で南の森と周辺領地の動向を確認する必要があるわ」
「なるほど。元々イツキ様がデュラハンを欲しいという話でしたし、ブロンズ伯爵領が崩壊した後でも問題ないですね。なんなら王都まで侵攻してくれれば・・おっと暴言でしたね」
貰えるなら欲しいけど、どうしても欲しいって訳でもない。
「だからそこまで無理をする必要がないもの。それにAランクのデュラハンだけでなく騎馬自体も強いのよ・・いえ違うわね、騎馬のほうが強いの。流石にソフィア達だけでは厳しいわ」
「騎馬が・・それほどなのですか?」
「ジュリーナ将軍は後で娘のシオリナと二人でブラックイーンと戦ってみなさい。発氣を教えたからもう2人でも厳しいわよ」
「ほほぅ、腕がなりますな」
「戦うならブレスには気をつけてね、初見では避けるの難しいから」
「はぁ?ブレス!?馬ですよね?」
「私も驚いたもの。追い込まれると空飛んでからのブレスが来るの。竜と戦うと想定したほうがいいわよ」
「「馬が空を!?」」「・・・馬?」
私が拾ってきた野良デュラハン。捕まえるために戦闘をしたけど中々の実力だったのよね。
特にあの騎馬、生意気にブレスは吐くわ、本気になると体が大きくなり足も8本に増えて機動力が増すの。足が多い馬ってスレイプニルだっけ?
しかも、これは勝てないと感じると翼を生やしてブレスと排泄物を乱発しながら飛んで逃げたのよ。
デュラハンは可哀想に蹴落とされて排泄まみれだったわ。まあ、両方すぐに捕まえたけどね。
こちらに来てからも隙あらば私を噛む・蹴るだし、エンシェント・ドラゴン達に何度負けても立ち向かう程に気の強い牝馬だ。
「負けを認めなければ敗北ではない」を体現してる馬ね。気に入ったので「ブラックイーン」と名付けて、綺麗に体を洗って、ついでに発氣も教えたらようやく懐いてくれたわ。
ちなみに金のデュラハンはミリーニャに「ぴかきん」と名付けられたみたいよ。
打ち合わせも終わって早速ジュリーナ将軍はシオリナを誘ってブラックイーンに戦闘を申し込んでいた。
もう夜なので私は照明係で見学したけど、スレイプニル化(スキル【獣王】)した後はシオリナ自慢の大盾と将軍の大剣(いずれもジュリーナ侯爵家家宝)が破壊されて、それはもう二人が哀れだったわ。
馬に蹴られてなんとかって言葉あったけど、獣王化したブラックイーンに蹴られると洒落にならないわね。
中央部の4つの足はどういう構造しているのか?横方向の蹴りが出来るし、その足で横移動も可能なのよね。
獣王時限定だけど、昼に教えたゴーイングマイウェイや立体機動も使いこなしている。かなりの逸材だわ。
ただ、あのブレスって闇属性で浴びると体がただれるみたいだし、子供達には使わないようにお願いしないと。
<ブラックイーン>
種族:漆黒魔馬
職業:イツキの妻
戦闘力:72(121)
防御力:50(71)
魔力:111(31)
好感度:マイナス92
スキル:【ブレス(闇)】【獣王変化-80】【闇翼-20】
称号:【イツキの愛子】【女神イツキの神徒】【発氣開眼】
・・・なんか私の妻になってるんだけど?ペットの間違いじゃ?
「がーーーっ!」ちょっ!?噛まないでよ。よだれを飛ばさないの。分かった、分かったわよ。妻、妻ね。
「ぶるるるっ♡」まったく・・仕方がないわね。
この後、ブラックイーンはイツキの匂いを濃厚にこびりつかせた愛妾達に出会い、シンデレサというイツキの子供を宿した妻に出会う。
「・・・え?子供が欲しい?私との?」
「ぶるるるっ♡」
「ちょ!?お尻を押し付けないでよ・・困ったわね」
本妻?として、ライバル心をメラメラと燃やし、イツキを困らせるのだった。




