051話 総長、マッチポンプのラ・メール攻略【ゲーム世界編:獣人の急成長と瘴気の塊】
<イツキ・ヴァーナム・エッセリウ サイド>
翌日、目を覚ますと重厚で柔らかいモノに包まれていて・・・い、息が〜!!!
「ぷっは〜!!!何なのよこれは!」
ガバっと起き上がり状況を確認すると、獣人幼女達が3人共180cm超に!?
着ていた服と半ズボンが今では小さすぎてピチピチの水着みたいになってるわ。
カッチリと割れた腹筋に、しなやかでありながらも頑強な手足の筋肉。
そして豊満な胸と尻。ああ・・私のかわええ幼女達が消えてしまいましたわ!
「あ、おはよ〜、ふふふ、私のママ〜!」
尻尾ブリブリ、これは犬の獣人のクランちゃんね。茶色の髪に瞳の色は緑、ふんわりと優しげな顔立ちにそぐわない立派な犬歯。
犬種はラブラドールかしら?しかし、クランちゃんと判別出来る箇所が耳と尻尾しかないわね。
でも、私の胸に顔を埋めて嬉しそうにクンクン匂いを嗅いでいる様はクランちゃんで間違いないようだ。
まあ、幼女でもすぐに大人になるんですから、健康に育った事(半日で成長したけど)を喜びましょう。
クランちゃんに急成長の理由を聞いた所、劣悪な環境下では、食べない、動かない、そして庇護欲を掻き立てる幼児の姿で過ごすそうだ。
ただ、18歳の成人までに劣悪な環境下を抜け出して成長しないと体のバランスが崩壊、そのまま死ぬそうだ。
今のクラン達の年齢は17歳、あと一年で死ぬところだった。
だが、死が迫る前に戦神教会という最適な環境下に来ることが出来た。
昨日は10人前以上の食事を取り、私と一緒に寝たのは魔力摂取をするためだったそうだ。
ただ、この急成長はクランちゃんも予想外だったようで
「まさか一晩で成長しきるなんて・・そうだ!ママの魔力は大丈夫?」と心配してくれた。
問題ないわよ〜、あの駄刀に無駄に魔力を与えるより有意義な使い道だもの。
本来は、食事と家族の魔力を日々貰いつつ、最長で半年程で年齢相応に成長するらしい。
感覚では3人で6〜7万程度の魔力消費かな?でも全く貯蓄から減った気がしない。
「ろ・・ろろ・・6万!?」
「・・・んにゃ!クランうるさい!・・あ、ままおはよ〜、ゴロゴロ・・おにゃ!?何この体!?」
「うるさいぞ、小娘共。あ、ママ、おはようごさいます・・ん?・・成長しきっている?だと!?」
「はい、おはようございます(なんかかわえー)」
私より背丈(私は150cm)が高いのに・・何故か?昨日の幼女姿と変わらずとっても可愛いく感じるわ。
その理由はイツキの魔力だけを吸収した事にある。
本来、獣人の魔力吸収は母親と家族がメインだが、家族不在の場合は成長は遅れるが周囲の人達や自然から吸収する事も出来る。
しかし、獣人の3人はイツキの濃密な魔力のみで一気に成長してしまった為に、イツキとの親和性が非常に高いのだ。
イツキの力から生まれたアリス達神獣が娘なら、獣人の3人は非常に近しい血縁の親戚といったところだろうか。
ただ、事前に格付けが明確にされていた影響で、本家と分家のような関係になっている。
今回の件で、絶対に裏切らない忠実で獰猛な番犬とも言える仲間をイツキは得たことになる。
「ほ、本当に大丈夫なの!?」
「にゃーーー!!ママ〜、死んじゃにゃ〜!」
「く、ママの力を過剰に・・あるまじき失態、切腹だ!」
「はいはい、全く影響ないので大丈夫よ」
「「「・・・本当に?」」」
ちなみに、猫の獣人のミーナは黒猫で結膜が黄色で瞳が黒。イタチの獣人トキは髪が真っ白で黒目、トキはオコジョなのだろうか?
私を心配してしばらく纏わりついていたけど、朝食を取る頃には問題ないと納得したようだ。
その後、修行のために戦神教会のみんなの下に向かったのだけど、夕食時には何故か?しょんぼりとしていた。
どうやら、せっかく大人になったのに、誰にも「お前は誰だ?」とは聞かれず、普通に認識されたらしい。
みんな居るので理由を聞いたら「耳と尻尾が一緒!」との事、やっぱり見る所は一緒よね。
長姉格のマリナとシズクからは「落ち着きがなくて、でっかい妹が出来たみたい」と小言もあったが、仲良くしているようです。
ただ、まだ発氣を教えていないので戦力としては幼児チームと互角。その意味でも落ち込んでいた。
「ほら、いつまでもしょんぼりしていないの。さあ、これから発氣を伝授してあげるわよ」
「あ・・・「「はい!」」」
強者の魂を持つこの娘達なら、すぐに飛び級するでしょうけどね。
<第三神将シズク サイド>
最近、北の森に魔物が急増しているとの報告が冒険者ギルドよりもたらされ、調査隊として私と餓狼達が調査に出向いている。
元々はイツキ様が「私が行くわ!」と乗り気だったけど、三名伯・・いえ、今は陞爵して侯爵になったので【三侯鬼】でしたね。
その【三侯鬼】に
「もう女好き設定は払拭しましょう。これでは前公爵様に顔向けできません。さあ、婿取りです。こちらに素晴らしい方々の釣書が・・」
と、お見合いを勧められイツキ様は現在逃亡中だ。
ちなみに、この二つ名の鬼という部分は主にイツキ様に向けられている。
イツキ様に諫言出来る貴重なお方達なのです。
そのような理由でイツキ様不在のため、代わりに私が調査に向かうことになりました。
当初は、恩人のイツキ様が嫌がる事を勧める輩などさっさと放逐すれば、という思いもありました。
しかし、イツキ様は身内と認識したらそれはもう過保護と思う程にお優しく、意見も無碍にはしないのです。
浮気が原因で両腕を切られたという女性の話では、イツキ様は「ざまあ」と言っていたのに、いつの間にか治療されていて今では旦那と幸せそうに過ごしていたり。
既にこの国全体がイツキ様の庇護下となっているようで、そのお優しさは尊重すべきものと今では思っている。
孤児である私達にも尊重して力を与えてくれるイツキ様には感謝してもしきれないです。
・・・ですが、出来ればお風呂での垢すりは辞めて欲しい。
私も16歳なのよ。色々と多感な時期なのにイツキ様の垢すりの魔の手が私の・・体を。
昨日などは「トイレではしっかり拭き取りなさい」と、両足を掴まれてあんな場所を念入りに・・恥ずかしい!
ちなみにシズクはお風呂については「カラスの行水派閥」に属している。
この派閥は、自分ではきれいに洗っている「つもり」のため、イツキに見つかる度に念入りに洗われている。
中には、わざと適当に洗ってイツキに洗ってもらうのを楽しみにしている少数グループも・・主にナターシェとか・・いる。
余談だが、この少数グループは昨日のシズクの醜態を見て「その手があったか!」と喜んでいるとか。
そんなとりとめのない事を考えながら移動して、北の森に到着する。
ですが、それ以上進むことが出来なかった。餓狼達に『危険!』と止められたのだ。
特に漆黒餓狼メイの反応が激しい。ということは瘴気が濃いのだろう。
「先頭は(神聖餓狼)テン、左右は(火炎餓狼)エンと(流水餓狼)カイ。浄化をしながら移動しましょう。後方は(暴風餓狼)フウ。瘴気をなるべく寄せ付けないで。」
「「「「わう!」」」」
「残りのみんなは中心で戦闘に備えて」
「「「「わう!」」」」
私も発氣【浸透光氣】を周囲に纏い、自身と瘴気に影響されやすい(漆黒餓狼)メイを守りながら、慎重に森の中へ入る。
森の中では、流石にA ランクの餓狼が8体も居るので、魔物達は近寄ってこない。
たまにゴブリン程度の知能の低い魔物が現れるが、(土塊餓狼)イチの土塊弾でたちまち肉塊に変わる。
ただ、普通なら先を争って魔物を狩る餓狼達が、攻撃をイチに任せて周囲を最大限に警戒している。
これは・・早めに撤退してイツキ様に報告したほうが良さそうね。
「がうがう!」
(神聖餓狼)テンの声で慌てて周囲を確認すると、右前方の木々が瘴気の影響で真っ黒だった。
その先が知りたくて、手近な木に登ってみると・・・なにあれ!?
500m程先に、100m程の範囲のどす黒い瘴気のドームがあった。あれは見ているだけで吐き気がする。
しかも、そのどす黒い瘴気の中に数多の何かが蠢いている。あの中で生きられるものが居るの!?
数秒思考停止をしていると、ドームの動きが激しくなったような・・気づかれた?
「撤退よ!」「「「がう!」」」
大至急イツキ様に報告しなければ!
木から降りる際に、瘴気のドームから騎士のようなものが出てくるのを横面に確認、慌てて【断絶】で弾き飛ばしてから、全速力で逃走するのだった。




