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050話 総長、マッチポンプのラ・メール攻略【ゲーム世界編:剣剛鬼と遊ぶつもりが】

<イツキ・ヴァーナム・エッセリウ サイド>


剣剛鬼シュゲーストの剣技は、普通では気付かない程度の微妙な緩急を使っている。


戦闘では瞬時に相手の動きを予測・把握して対応する、いわゆる先読みだ。

明らかな緩急であれば惑わされることはないけど、達人クラスの感覚を惑わす程に微細な緩急を使っている。

二つ名を【剣剛鬼】にして剛剣の使い手と思わせるのも、気づかれないための策の一環だろう。


だけど、緩急だけでは私は倒せない。後一手が欲しいところよね。

この緩急と、燕返しのような剣線の柔軟さが加われば脅威だったわね。

結構面倒かと思いましたが、誤差を認識してからは意外と早く慣れました。


引き出しから技術を出し尽くしたシュゲーストは初めて突きを見せ、急激に速度を増して私に迫る。

だが、突きは緩急を付けても直線的で有効範囲が狭い、これは愚策。

ギリギリに躱しながら横薙ぎでシュゲーストの腹をざっくりと、ん?金属音?

切れないのでそのまま力で吹き飛そうとするも、突きからの横薙ぎが来たのでそれをかいくぐりながら逆胴を切る。

が、また金属音。超硬の楔帷子でも仕込んでいるのかしらね。

でも、切れずとも殴打の痛みはある。横薙ぎは緩急を使えていなかった。


「痛そうね?でも剛剣で一気に・・じゃつまらないわ。さあ、もっと遊びましょう」

シュゲーストに回復魔法を掛けて再度の戦闘を要求する。

これからは、貴方のまだ見ぬ実力を引き出しましょうか?

ふふふ、最近は強くなりすぎて困っていたけど、スキルのおかげでとても楽しいわ。


だが、その楽しい時間に水を差すバカがいた、第二王子だ。


「ははは!切れてないじゃん。余裕そうに強がっても性差は覆らない、男性の純然たる力にはね・・そろそろ君が屈辱に歪む顔が見れるかな?」

「ば!?第二王子、余計なことを言うな!」

だが、このアホの・・無能の言葉は止まらなかった。


「女が賢しげに剣を振るっても意味はないのさ。女性は男の目の保養として美を磨き、男のためにベッドで奉仕してればいい!なんなら今からでも受け付けるよ・・奴隷としてね」


勘違いからの第二王子の侮蔑発言。シュゲーストにしてみればたまったものではない。

初見から相手は明らかに格上と認識して、戦闘も初手から全力で戦っていた。

瞬殺されていないのは相手が舐めプをしているからという理由だけ。

一撃で殺される恐怖の中で、彼は本能的に生き残る道筋を知り、それに向かって奔走していたのだ。


その道筋とは、イツキへ全力で挑み続けて「今日は楽しかったわ」の言葉を賜る一点のみ!

これしかない!と必死だったのに・・・こいつは!

イツキはというと・・その言葉を聞き、思考が一気に冷める。

そして、ただ相手を冷徹に殺害する事に思考が切り替わっていた。


『傲慢な男性から女性達を(強くして)守る』


この意志こそ幼少から苦労を重ねたイツキがレディースを結成した原点。

逆に言えばこれを阻むものは容赦なく排除するし、実際にしてきた。

殺人すらも厭わない。大国だろうと容赦しない。

その初志が・・・イツキに眠っていた強さを呼び起こす。


魅了・奴隷・襲撃・蔑視と、第二王子の数々の愚行に、怒りすらも通り越した。

そして、両親を憎悪の末にボコボコにして追い出した後、無意識に封印したヤバそうな扉が十数年ぶりに開かれたのだ。


「そう、なら・・・永劫の苦しみを味わいなさい」


神威とは異なる昏き地獄のような圧に、憎悪がこもった言霊に、周囲の全員の動きが停止する。

体が硬直して動けない。血の気が一気に引き、体が凍える。まるで魂が去って体だけの抜け殻にでもなった感覚。それは敵味方関係なかった。

獣人幼女達も己の死地がここだと悟り、シュゲーストも己の命がゴミのように刈り取られる事を悟ったのだが・・・


「きゃー!イツキ様、怖カッコいい!大好きです!」


何故か?シンデレサだけは死の暴風の中でも通常運転だった。

だが、このシンデレサの気が抜ける言葉のおかげでやばい扉が閉まった。

結果的にではあるがシュゲースト達はシンデレサに救われたのだ。


しかし、ブチギレ程度の怒りはイツキから消えたわけではない。

幻魔刀に瞬時に剣に濃密な濃紫の魔力を纏わせ「【魔槌刃(まついじん】!」上段からの振り下ろしで魔力の刃、いや魔力の壁を放つ。

その濃紫の魔力の壁が、濃紫の光の暴威が、進行先のありとあらゆるものを、床をえぐりながら弾き飛ばし破壊する。


「が!?」「ぐあっー!!!」「「「きゃ!?」」」


魔鎚刃とは、切り刻むための技ではなく破壊するための、いわば戦鎚だ。

先日、襲ってきた戦神信仰国の護衛を切ったところ


「先日張り替えたばかりのカーペットが血まみれに!?掃除が大変なのですよ!」

とナターシェに怒られた。

なら、ぶっ飛ばせばいいんじゃね?と、周囲を汚さない為に考えた技が初披露された・・のだが。


シュゲーストも、第二王子も、その他護衛や官僚も・・・獣人幼女達も吹き飛ばされてしまった!

しかも、ブチギレて剣王スキルも吹き飛んだ為、予想以上の威力で部屋が半壊してしまったのだ。


・・・また、ナターシェ達にキレられるわね、これ。

冷静になったイツキはメイド達から暴言の数々を受ける未来に、うんざりとするのだった。


取り急ぎ、幼女達を救出して手厚い治療を行った。ついでに耳や尻尾をモフったのは内緒ね。

プリンセス王国側の護衛や官僚達は、死なない程度に回復してから馬車に放り込み、プリンセス王国へ追い返した。

ただ、襲撃の実行犯シュゲーストは両足を砕いて、襲撃を指示した第二王子と共にうちの牢屋に入れた。

第二王子については現実世界に連れていけたら聖剣マキナの宗教にぶち込もうと思ってる。

もちろんNPCだろうが許さない、永劫の苦しみをその尻で受ければ良いのだ。

シュゲーストについては戦神教会の子供達の剣の師匠にいいかも?と思いついたのでとりあえず保留とした。


崩壊した部屋は魔法の力で修復して隠蔽したのだけど・・修正部分だけ新品以上にキレイになって結局バレました。


「「「今後は、外でやって下さい!」」」

「・・・はい」


この後も、ナターシェ、スズナ、ミランジュリに寄って集ってネチネチと責められ、部屋を全面改装する羽目になりました。


さて、この疲れは獣人幼女達に癒やしてもらいましょう。

獣人幼女達がいる部屋に入ると、何故か?幼女達が床にうつ伏せで伏せて震えていた。


「「「御主人様、殺さないで!何でもしますから!」」」

・・・困ったわね。どうやらあの技で格付けがされてしまったみたいだわ。


「貴方達を奴隷にするつもりないわ。ただある程度強くなって自立して欲しいだけよ」

「へ?・・ぴー・・や・・ぴーぴー・・などされるのではないのですか?・・意味は分かりませんが、道中にそう聞きました」

あのクソ王子の仕業ね、怒りがふつふつと湧き上がる。

あいつ聖人にして数百年は受け専にしてやる!


「「「ひーーー!!!」」」

「あ、ごめんね。貴方達にくだらない事を教えたクソ王子に怒りを覚えただけだから」


一人ずつ優しく撫でてあげると、ようやく落ち着いたようです・・耳モフ最高だわ!

まあ、戦神教会のみんなと過ごせば、すぐに元気になるでしょう。

ちなみに、猫と犬とイタチの獣人のようですね。

名前については私が決めて、猫の獣人がミーナ、犬の獣人がクラン。イタチの獣人がトキとしました。

この娘達に名前を聞いた際に、第二王子が決めた名前があったけど・・・殺意しか沸かなかったわ。やっぱりあいつには地獄を見せないとね!


「「「ひーーー!!!」」」

この娘達、私の感情を的確に読み取るのよね。獣人の特性なのかしらね。


「あ〜、ごめんね。みんなに怒ったわけじゃないのよ。ほら、甘いチョコレートで癒やされてね」

「「「むぐむぐ・・・美味しい!」」」


かわえーなー、無属性魔法で宙に浮かせてたら、きゃっきゃと喜んでいる。

まあ、戦神教会歓迎会後のお風呂イベントで嫌われ確定ですけどね。

動物はお風呂嫌がりますもの、カピバラの獣人なら喜びそうですが。


まあ、今は嫌われても仕方がない・・この娘達の将来の為よ!

その後は心を鬼にして、皿から直接口でガツガツ食べる獣人幼女達をしかり、スプーンやフォークの使い方を丁寧に教え、お風呂で垢まみれの体を念入りに洗った。

その結果・・・


「「「まま〜!」」」

・・・ものすごく気に入られてしまったわ。

それは嬉しいのだけど、夜も一緒に寝ることになってナターシェ達とヴィーナスのご機嫌がだだ下がりなのよね。

まあ、たまにはのんびり寝るのもいいわ。特に幼女達に包まれて寝るなんて最高よ!


『ふふふ、イツキ様は獣人の特性を知らないのね・・その娘達、もう17歳ですよ?』

「・・1・・7・・?」


ヴィーナスの怪しげな言葉を耳にしながらも、睡魔に勝てずに深い眠りにつくのだった。



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