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005話 総長、人類が語り継ぐ楽園の地に来ていた?

<伊月サイド>


「なあ、リサ。この王都ってなんでみんな平屋なんだ?技術がないって訳でもないのだろ?」


このラーメン王国(注:ラ・メール王国)の王都はなんとも不思議だ。

石像に登った時に確認したのだけど土地に起伏がほとんどない。

これだけの広い土地だ。起伏があってもおかしくないけど、ほぼ平ら。

仮に王都丸ごと整地したとすればそれなりの技術があるはず。なのに建物はすべて平屋なのだ。

王城すらも平屋で、城壁も無く正面以外は湖と湿地、自然に埋没している。

ちなみに王都の外壁もない。唯一の高層建築があのクソ王の石像だった。

しかも、なぜか多くの家が屋根の上に雑草を育てている。

まるで上空から目立たないように?上空から襲いかかる凶悪な魔物でも居るのか?リサに聞いてみた。


「実は197年前に金竜の襲撃があり、この天界が滅びかけたのです」


随分年数を細かく覚えてるな?と思ったら天界を滅ぼす金竜を撃退した記念として西暦のように【滅竜歴】という暦が始まったそうだ。ちなみに今は 滅竜歴:197/5/3 だって。

なお、金竜を滅ぼした訳ではなく、泥沼の戦闘が1ヶ月ほど続き両者痛み分け。

最終的には天界自体と女神達は弱体化、金竜には他世界に逃げられたそうだ。


「そのため、私達にとっては外界からの来訪者は恐怖の対象なのです。ですが・・・」


その恐怖の来訪者をお前の国のバカ王が呼び出したって訳ね。

更にあのバカは異世界召喚の前に隣国に宣戦布告らしき事をした。


「異世界からの来訪者にいつまでも恐怖に怯える無能共よ!英雄たる我が異世界から勇者を召喚して使役してみせようぞ。そして我はその力を持ってこの世界を平定する!」


上記内容で隣国に使者を送ったそうだ、それが2週間前。きっと巡りに巡って隣国以外の国にも伝達されているんだろうね。

ちなみに、ここは島らしく国は北部に人族の7カ国があるそうだが、ほぼ交流はない。南は魔族による7つの魔王国があるらしいが最近統一されたとの噂があるそうだ。

北部7カ国は【異世界からの来訪者】と言えば、各国は全勢力で熾烈な歓待をしてくれるだろうね。どんな猛者が居るか?楽しみ!

あとは魔王国か。そうだ!歓待ついでに面白そうな人材を確保しよう。

ぐふふ、そしてこいつらを使って・・リサを見てニヤリと笑うその顔はまさに醜悪な魔王だった。とリサは回顧する。

なお、北部の国についてはこの国と隣国の情報しかない。

他国の情報もなく世界統一?しかも唯一のお隣さんは竜族って最強種らしいぞ・・・ははは、言葉もないわね。


◎ラ・メール王国、人族が興した国。大陸に住んでいた当時は女神からの信任を得て聖剣を授与される大国で大陸の【調停者】を自負していたが現在は没落、表面上は女神マーキュリーを信奉しているが、形だけで信者は5人のみ。魔王国とレオンハル王国と隣接している。

◎レオンハル王国、竜族が興した戦闘民族国家。金竜との大戦に先陣として参戦。女神配下の神獣達と共に戦い疲弊、国民も激減した。現在の人族の【調停者】。弱体化した女神への信仰心はない。ラ・メール王国の宣言を受けて国交断絶。戦争準備中との噂も。


知り得た国の情報は上記だけ。

しかし、いくらバカ王でもこれほど考え無しってどういう事だ?周囲にも諫言するやつは居るだろうに。

その疑問は、この世界の衣食住についての説明を聞いて判明した。


衣は、糸の樹というのがあるらしく、家を建てると周辺に勝手に生えてくるそうだ。

絹糸の樹、木綿の樹、ゴムの樹等々あるらしいぞ。流石に縫製は自分達でするそうだ。

住は、湿地には粘土が豊富にあり、これを整形して乾燥させれば耐久性抜群のレンガが出来る。

逆に木を切ることは禁忌。ちなみに粘土は長時間燃えるらしいが、レンガにすると不燃性になるんだって。

鉱物も豊富だ。ラ・メール王国は地上は1階だが、どこも地下室が完備されている。

なんでも業者がタダで掘削・整備してくれるそうだ。

その理由は土を掘れば各種金属が潤沢に出るからだ。

しかも、縫製や建築等の諸々の知識は、生まれたときに言語を含めた諸々の生活知識として与えられる。

その中には初歩魔法の知識もあるらしい。

上手く使いこなすには実践あるのみだが、事前に知識を習得している事は大きいよね。

食は、こいつらは基本的に食事は不要らしい。空気中のエーテル?を取り込むことで生命が維持される。

霞を食べる仙人の伝説って、ここか!?

でもさ、広場で肉串売ってたじゃん!それはおかしいだろ?


「あれは嗜好品です。ちょっとした贅沢ですね。魔物の肉は美味しいですから。お酒なんかもそうです」


どうしても食べたい時は、肉は狩る必要があるけど果物や穀物は街の周りに自然と生えているそうだ。

あ?水や酒の木もある?なんだよ酒の木って。

基本エーテル?接種なので排泄は無し。

がっつり毎日食事をすると排泄は発生するが桶に水を入れてそこに排泄するとあら不思議!?

浄化されて水になる!・・飲みたくはないけどね。

ゴミも水と混ぜれば水だけになるそうだ。もう意味不明な仕組みだよね。


更にだ!この世界は常に気温が22度で安定している。

昼と夜はあるが、夜になると魔物を含めたすべての生物は大人しくなる。夜行性生物など皆無なのだ。

生物の勤務?時間は


 6〜9時が覚醒・繁殖時間

 9時から17時が活動時間

 17時から21時が鎮静・繁殖時間

 21時〜6時が休眠時間。


これが強制でもちろん魔物も対象。

移動については、森が多いが森以外では魔物は一切出ない。

そこを避ければ安全に移動出来るが盗賊は居るらしいので要注意。

恵まれた世界でもゴミは居るようだ。

あと、山や谷など起伏が存在しないらしく、川もない。地形と川をリサへ説明するのが大変だった。

これってあれだよね、蓬莱島?楽園?アダムとイブが追放された世界みたいだよね。

もしかしてここが人類の楽園伝説の起源とか?


そんなこんなで、聞けば国民の7割がニートに近い生活を送っている。

すべてがイージーモードなのよ、この世界。

これでは王や民達がゆるふわな思考なのも頷ける。

そもそも異世界から来た24時間フルに活動する金竜を討伐出来ない訳だよ。

しかし・・・ここの女神、生き物に対して過保護過ぎるだろ!


「これだけの便宜を人族に与えてる・・女神マーキュリーだっけ?教会とかで手厚く信仰しているの?」

「便宜?手厚く?意味は分かりませんけど、金竜討伐失敗で権威は失墜していますね」


女神が色々与えてるのに信仰されてないらしい。

まあ、生まれた時から過剰に与えられているのだ、それが当たり前の感覚なのだろう。

元々人族は大きな大陸でイージーモードな生活をしていたが金竜の襲撃で荒廃して天界の外れのこの島に追いやられた。

多くの生物が死に絶え、自分達を守れなかった惰弱な女神、というのが信仰されない理由らしい。

必死で頑張った神様に対してそれかよ。今生き残っているのは誰のおかげだ?ひでーなこいつら。


「まあ、それならそれで自業自得か。後10年もせずに、この世界滅びるし」

「えっ!?」

「当たり前だろ!私の世界じゃ何をするにも自分で一から勉強する。何をするにも長い時間を掛けて準備するんだ。ここは女神がすべてを与えている。世界が力を使いすぎているんだよ。それを金竜戦で弱体化した力でなんとか維持してる。だから終わりはすぐそこなの、分かる?」


神になったからこそ、この世界の事情が肌で感じられる。

特にここの女神は(過剰なほどの)慈愛の女神のようだから、見返りとしての信仰心はとっても大事だと思うよ。

まー、私はきっと戦神だろう。信仰など無くても力が満ち溢れているからね。


<ステータス>

名前:山本伊月やまもといつき

年齢:不老

性別:女神

種族:上級神(lv300以上)

存在値:レベル335 ⇒ レベル338


ほらね、鑑定で自分を見たら存在レベルが更に上っている。ちなみにスキルはない。

元々スキルの項目があるなんて知らなかったし、クソ王に対するあの回答はアドリブ。

しかし、せっかくこの世界を巡ろうかという時にいきなり天界崩壊も困る。弱々になっている女神とやらのフォローはしておかないと駄目かな。

ただし!激甚災害来訪者と私を卑下したり、一方的に 帰れ! とか言ってくれたお礼(注:女神マーキュリーは何もしていない、すべて世界樹プールの犯行)は必要だよね、くくくく。


まずは即効性の対策だ。瀕死の女神に栄養ドリンクのように即効性のあるエネルギーを与える。

ただ、女神のいる場所は分かってるんだけど防御が尋常じゃないんだよね。直接行けば破れるけど・・めんどくさい。既に監視されてるので、そのうち接触してくるでしょ。

それをクリアしたらここの島の住人達を女神の信者にすればいい、これでだいぶマシになるだろう。

ならば、さっき思いついたあれを実行するだけだ!


女神マーキュリー教の強化と、それを国教として熱狂的に崇拝する統一国家の樹立、だ!


「おいリサ、お前この島の統一王になれ。もちろん魔族も含むぞ」

「嫌です。私はムースどん達の愛の奴隷ですから!みんなで甘々の日々を・・」

ちっ!予想通りだ。だが逆に言えば・・・ムース、言え!


「あたいもリサが王になっところを見てみよごたっ」

「リサが王か、いいね」

「リサなら賛成なのじゃ!」

「・・・なる!なります!」

ちょろくなる(鼻血を出すな、この変態が)。

そもそも人族から聖人に昇格するためには偉業が必要らしい(アリス談)、それ位の偉業はやってもらわないと困る。

・・・あれ?でも、それなら一気に神になった私は、なんの偉業を成したのだろう?


『おーっ!心の声をすべて聞かせていただきました。それなら私にお任せあれ!』


私の思考を中断する声を発しながら、中空からしゃらんしゃらんと眼前に現れたのは鎌のついた錫杖だった。

居るのは分かっていたけど敵意もないので放置してた、けど・・なんで鎌付き?


『私は女神マーキュリーの相棒、シャクティと申します。ポンコツになった主の代行者を探していました!』


詳細を聞けば、こいつは女神が天界に影響を与える際の発動体との事だが、女神は既に力不足で行使不能。だが、私が力を貸せば女神の代行が出来るので力を貸して欲しいとの事。


「ほう、ならとりあえず存在値330貸したげる」

『契約成立!』


<ステータス>

名前:山本伊月やまもといつき

年齢:不老

性別:女神

種族:上級神(能力低下で神力封印)

存在値:レベル340 ⇒ レベル10(330貸出【強制貸付け権利含む】。利息十一)


『確かに頂きました!しかし、利息+ーということは利息0。なんと麗しき女神への信仰心!』

「お前、気づいてるんだろ。それはトイチ。10日に1割の利息だ」

『にょほほほ、何のことでしょうか?まあ、今は死活問題なので問題ないです〜』


こいつ、すごく嬉しそうだ。主人である女神が苦しむのを楽しみにしているフシがあるな。とっても気が合いそうだ。


『にょほほ、やっぱり分かります?神器って性格がちょっとひねくれてるんですよ。主を敬愛しつつも特殊な趣味趣向は別腹。膨大な力の行使が出来る代償?』


へー、高機能な神器にもそんな弱点が。って、この事実は天皇陛下からも聞いたことある。草薙がどーたらこーたらと、愚痴を。でも神器には面会させてもらえなかったけどね。


「最悪と最悪と掛け合わせる・・お前、逆の立場ならやるか?」

「面白そうだから、やる!」

って答えたのにだよ、ひどいよね。


「ならさ、私が貸す力の女神への譲渡は日に1度、20を譲渡する。で、その方法なんだけど・・・(ごにょごにょ)」

『なんて素晴らしいのでしょう!・・女神だけではなく神獣達の右往左往が見れそうです!』


伊月と神器シャクティとの女神代行契約が成立した。これから二人の玩具になる女神様、早く逃げて〜!!!



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