049話 総長、マッチポンプのラ・メール攻略【ゲーム世界編:勇者ベローネの実力】
<イツキ・ヴァーナム・エッセリウ サイド>
ベローネはこちらに来てから3日程寝込んでいる。
「ナターシェ、ベローネは病気とかではありませんよね?」
「まあ、ある意味病気(恥ずかし過ぎてイツキ様に顔を見せられないなんて、乙女かよ)ではありますが心配無用です。聖人への変化で体も疲れているので落ち着くまで数日お待ち下さい」
「まさか、私が鍛える前に聖人になるとは、驚きですわ」
「はい(イツキ様が念入りに可愛がった成果です)、実力を見るのが今から楽しみです」
それから数日後、ようやくベローネと対面することになった。
「イツキ様、幾久しくよろしくお願いいたします」
白髪のおばあちゃんだった姿は、面影だけを残してすべてが変わっていた。
水色の髪に水色の瞳、キリッとした顔立ちで瞳には力が宿っており、全身からも覇気が満ちている。これが別の世界の人族の勇者。
ですが、随分と緊張しているようですね。耳まで真っ赤で、少し震えてる?
あら、何かしら?赤面しているベローネ、とっても可愛いく感じるわ。
内から湧きあがる衝動のまま、ツカツカとベローネに近づき、優しく抱きとめる。
「きゃ!?い、イツキ様!?」
「幾久しく・・ね。この水色の髪、素敵よね。もちろん幾久しく可愛がってあげるわ」
可愛らしいベローネの耳たぶを口に含んで舌で弄ぶと「きゅ〜♡」失神してしまった。
「あらあら、なんて可愛いのかしら?」
「あまりいじめないで下さい」
う〜ん、最近みんなが可愛すぎて・・まさか私に百合趣味があったとはね。
ヴィーナスの導きで順調に百合の花が開花しているようだ。
まあ、仲間達と繋がる手段が増えたと思えば良いことなのだろう。
しかし、心の中の靄が晴れていくようだわ、無意識にセーブしていたのかも。
今は戦神なのですから心の赴くままに自由に生きましょう。
あ、もちろん分別は大事よ。相手を選ぶし、無理強いはしないもの。
無理強いしないと言いながら、気絶しているベローネを膝の上に乗せて、その可憐な寝顔をスイーツの代わりとしてお茶を堪能するイツキだった。
気絶から目覚めたベローネが、再度弄ばれるまで・・あと10分。
<勇者ベローネ サイド>
ついに私にも信頼出来る主が出来ました。
勇者とは気高き意志を持つ主に仕えてこそ最大限に力を発揮する。そういう存在なのです。
自身の力を自由に使い続けると、何処かで必ず奢りや慢心が出ます。
それこそが人なのですが、最終的に個人差はあれど堕落に繋がる。
物語の英雄達の末路はだいたいそのようなものだ。
だからこそ、それを制御して導いて頂けるお方、高潔な主様は必須なのです!
しかし、聖人の位に格上げして頂き、それだけでも破格の事なのに。
若さまでも・・全盛期の技量と人生で最高の時期の肉体。私はまだまだ強くなれる。
そしてご寵愛まで。イツキ様を思い出すたびに尊崇と愛おしさで胸がキュンキュンするのです。
「さあ、ベローネ。貴方の実力を見せて。死んでもすぐに復活出来るから心配しないで」
むう・・イツキ様の実力を見せるのは望むところなのですが、イツキ様の観戦する態度がちょっと。
「何、モジモジして。ナターシェは私の膝の上は嫌いなの?」
「いえ、急に積極的になられたので、少し恥ずかしいのです」
「自分に正直になっただけよ。ふふふ、今夜から私も可愛がってあげるわ」
「!?・・ご、ご存知でしたか」
「まあね、ヴィーナスだけでベローネの聖人位上げは無理だもの」
あの場所に私も加わりたい!だけど、もちろんイツキ様の独占など考えていない。
イツキ様は基本的に戦闘がすべて。ですが、信仰、配下、愛人、友人、家族と、それぞれの仲間達に真摯にご慈愛を与えるお方だ。
私達はイツキ様を愛して、自身のために強さを追い求めれば良い。
そうすれば自然とイツキ様の寵愛に繋がると感じている。
そして、イツキ様を神として信仰するならこれが最適だと思っている。
イツキ様の百合衝動は奉仕に近い。自身は快楽を求めず仲間には慈愛を与え続ける。
あと、これも感ではあるけど、醜い独占欲を見せれば逆に嫌われる。
そういうさっぱりとした関係が双方ともに心地良い環境となり、自身の成長への近道になるはずだ。
さあ、ご寵愛は既に頂いたことだし、今度は私の実力を見せましょう。
<イツキ・ヴァーナム・エッセリウ サイド>
<ベローネ>
種族:聖人(人族)
職業:勇者(イツキ様専属)
戦闘力:1091
防御力:1521
魔力:3397
好感度:9284
スキル:【光の勇者】
称号:【救済者】【イツキの愛子】【女神イツキの神徒】【発氣開眼】
うん、なかなかの強者ですが、対戦相手のティアはエンシェント・ドラゴン。
流石に相手にならないでしょうけど、どこまで健闘してくれるかしら?
ティエの相手にはならない。その予想はあっさり覆された・・私もまだまだ未熟だわ。
「さあ、何時でもいいよ」
相手はエンシェント・ドラゴンのティエだ。格下のベローネは初手から全力で行く。
「光の鳳凰、来い!」
ベローネの体から水色に輝き、光が収まるとベローネの背後には水色の光の鳳凰が現れていた。
「ぴーちゃん行くわよ!憑依、鎧装!」
ぴゅるるる〜!と、水色の光の鳳凰が一声鳴くとその姿が軽鎧に変わってベローネの体に装着する。
「何よあれ!信じられない」
イツキが叫ぶのも無理はない、ステータスは変わらないのに鎧装後は存在感の次元が違うのだ。
あの鳳凰は一体!?幻獣でも聖獣、神獣ではない。生命体なのかすらも不明。
もちろん、ベローネの魔力でもないし発氣でもない。
そもそもベローネよりも高位の存在なのだ。ティエも驚いている未知の力!
「全力で行きます!」
そして、ベローネの姿が掻消えたと思ったら、ティエの左脇腹に拳を叩き込んでおり、油断していたティエは吹き飛ばされていた。
「ほえー、障壁が無ければ、ものすごく痛かっただろうね」
「く、障壁ですか・・全く打撃効果がないみたいですね」
ティエがお返しとばかりに顔面に右拳を叩き込むが、ベローネは両の腕をクロスして耐えた。
防御力1500のベローネなら、戦闘力が10倍以上のティエの拳を受けたら両の腕ごとその顔も潰されるはず。
だが、ベローネは苦痛は感じているようだが、骨が砕けた様子すらない。
「あれ、強めに殴ったのに?」
驚くティエにローキックを右足に叩き込むが、態度を改めたティエの障壁とその筋力で跳ね返される。
「!?」予想外の反動にベローネの体勢が崩れた。
その隙にティエの右足上段からのかかと落としがベローネの左肩に叩き込まれ、その身を地に伏せることで勝負は決した。
ベローネは悔しそうですけど、相手はエンシェント・ドラゴンですからね。
結果を見ればあっさりと終わりましたが、お互いのステータスを考えると信じられない状況でした。
「ナターシェは見えてた?」
「残像程度しか。ここで鍛えることが出来ないのが悔やまれます」
ゲーム運営側であるナターシェは、ここで鍛えても全く成長しないのだ。
イツキの仲間でありながら、周囲が強くなる中で現状を維持することしか出来ない。
ナターシェは本人も気づかぬまま涙に濡れていた。
「現実世界に戻ったら・・きっつい修行よ」
「・・・はい」
「イツキ様、私の戦闘は・・って、ナターシェさんを泣かしてる!エロハラですか?エロハラですね!」
「ふふふ、何よエロハラって。変な造語を作らないでよ、ふふふ、あ〜可笑しいわ」
<勇者ベローネ サイド>
ああ・・この微笑みを見ることがイツキ様を愛する者たちのご褒美。
周囲を見渡せば、この場に居るナターシェさん、スズナもミランジュリもティエもイツキ様を見ていて、皆さん幸せそうな顔をしている。
きっと私もあの様な顔をしているのだろう。
ベローネが、勇者として生涯を掛けて守るべきものが定まった。
それが、無能な王のせいで永らくの間、心の中にぽっかりと空いていた場所にカチリと嵌まった。
その日の夜・・・
「今日から私も加わって、ヴィーナスと二人で細胞の一つ一つまで愛してあげますわ!」
その日の私達は、天国より更に上位の世界がある事を知った。
ただ、その場所を何度も往復したことで、その極上空間から戻れず・・気づけば2日程滞在していたようです。




