021話 総長、マッチポンプのラ・メール攻略戦③(西都メントレーム襲撃)
<メントレーム侯爵サイド>
「・・・レオンハル様にしこたま怒られてしまった」
女神信仰はそれぞれの自由にさせておけ。
と思っていたが、天界を維持するためにはそうもいかんらしい。
私が放置していたのには理由がある。
我が一族の秘匿事項で女神信仰に加え魔法の呪文に【女神様からの力の譲渡】に関する追加呪文を加えると効果が大幅に増す、というものがある。
どうやら、我が侯爵家の初代が聖剣マキナの使い手、聖騎士だったようで、神聖剣を十全に使用するための不足分を女神から補填される呪文だったらしい、それが魔法にも応用可能だった。
ならば、知るものは少ないほうがいい、それなら信者も少ないほうがいい。
レオンハル様なら分かって頂けると思いそれとなく濁して話したところ怒られた、という訳だ。
まあ、この恩恵はメントレーム侯爵家だけが有していればよい。
我らは今後も女神を信仰はする、何故なら女神とは大事な魔道具なのだからな。
そして翌日、現在は西都メントレームの民の5割、兵士、騎士達、約2万の総動員で、先程現れた100体近い黒ゴブリン軍団との戦闘を繰り広げている。
昨日から水の浄化機能が無くなったことで民達は【女神信仰の大事さ】に気づいたようだ。
だから女神信仰を煽りに煽って強制的に戦闘に参加させている。
これは時間稼ぎだ。
今までの黒ゴブリンの行動から民をむやみに殺害する気はないのは分かっているので、戦闘は長引くはずだ。
その時間稼ぎの間に我ら一族はレオンハル様から頂いたオーブを使って王都に向かうつもりだ。
そして・・くくく、この動乱に乗じて王座を奪うのだ。
無能な王に成り代わり、このメメン・メントレームが王座につく!
「へー、こういう女神信仰者もいるんだね?いや女神を道具として使う輩かな」
「だれだ!・・ぬ!貴様は黒騎士!?」
「今まで秘密にしてくれてありがとね。これ以上女神から力を抜かれるのは困るんだよ」
「何を言っているのだ。お前らの敵、女神の力を削ぐ事に協力してるのだぞ」
「理解する必要はない。お前の一族・・移動のためにすべて邸宅に居るそうだね。ならば・・【ダークストーム】一族丸ごと邸宅ごと消えろ!」
メントレーム侯爵の足元から黒風が湧き上がり、巨大な竜巻に成長していく。
「おわ!?があーーーーー!!!」
それに飲み込まれる侯爵とその一族。
邸宅をひと飲みにする程に成長した黒き竜巻に侯爵邸は更地に変貌するが、瓦礫は出ない。
この竜巻に巻き込まれて中心部の暗黒魔力に触れたものすべてが消滅した。
臭いゴミを根こそぎ分解、綺麗に!究極の掃除機の完成だ。
邸宅の上モノだけ掃除したので、地下に避難している民達は問題ないだろう。
女神信徒に傾いている民達なので殺す必要もない。
そういえば、ここ数日で西都の女神信仰が改善してるんだよね。なんでなんだろう?
(黒騎士達は水の浄化機能が停止していることを知らない。暗黒竜と聖女帝のみ知る)
<シルビー・メントレームサイド>
「さて、シルビー・メントレーム。お前の願い叶えてやったぞ」
一族を抹殺する黒騎士との密約が無事に完了した。
おかげで女神の力を吸い続ける寄生虫達をようやく排除できた。
私はメメン・メントレーム侯爵の長女、シルビー・メントレーム、聖騎士である。
幼少の頃から女神様のお話が大好きで、いつの間にか熱心な信奉者になっていた。
そして女神様をボロ雑巾などという輩を、それこそ10歳も年上の男性だろうが片っ端からぶん殴ってきた。
国王に対しても後ろから飛び蹴りを食らわして逃げたことがある。
お陰様でなのか?10歳の時に【聖騎士】というありがたいスキルを得ることになりました。
有頂天になっていた私に
「さらに力を上げる秘匿呪文がある」
と父より聞き、その力を活用しながら更に強くなりました。
ですが、ある時呪文を使った際に苦悶の声が聞こえてきたような気がして、その後注視しながら呪文を使っていたのですが、ついにその声が女神様の苦悶の声だと突き止めた。
それを父に相談したら・・・
「だから何だ?」
と、既に知っていた。
怒りで視界が真っ赤になった。
父への怒りではなく女神様を蝕む寄生虫だった私自身に対してだ。
それからは私を含めた寄生虫達の生息範囲、駆除方法を考えていたが正直行き詰まっていた。
一族全員が揃うことが少なく、なにより自分自身の処分をどうするのかが難しかった。
先日黒騎士との戦闘中に思い切って相談してみたら
「そんな呪文が・・みな殺してやる」
と協力を得ることが出来た。
そして今日、魔物襲撃で邸宅に集まった一族の抹殺。
お陰様でほぼ目標は達成された。
「呪文を知るもの。最後は私ですね・・よろしくお願いします」
黒騎士が大剣を構える。
これで女神様を苦しめる寄生虫は全滅する。
女神様が健やかにお過ごしいただければ後悔はないのです。
「そうだな、お前が死んだら・・次は女神の首を取る!」
「!?」
黒騎士の剣が振り下ろされるが、黒騎士の言葉で後悔が生まれた。
そうだよ!こいつ敵だったじゃん!
親身に相談に乗ってくれたのですっかり忘れていた。
私の次に殺されるのが女神様!?そんな事を許せる訳が無い。
ですが初動が遅れた今、出来ることなど・・考えろ!考えろ!そうだ呪文・・だめ!これ以上女神様には負荷を掛けられない、あの苦悶の声は聞きたくない。
ならば・・そうだ!
さびれた教会をあっという間に立て直したという、侯爵内でも噂になっていた異世界人に縋ることにした。
この一瞬のひらめきを実行した事が功を奏す。
『聖女帝伊月様、どうかお力を!・・この瞬間だけでもいいのです。女神様を守る力を私に!』
剣を振り下ろしていた黒騎士が一転、防御態勢を取ると、その防御の黒き盾に光芒を纏いし拳が叩き込まれる。ノックバックで黒騎士が10m以上後退する。
「呼んだ?・・え!?黒騎士お前・・こんな幼女を殺そうとしたのか?」
いつの間に現れたのか!?
光りに包まれたその雄姿は・・神に愛された金髪に金色に輝く瞳、まさに聖女様。
でもちょっと待って下さい!
「あ、あの聖女帝様。幼女とは?私は既に成人して24歳になりますが」
「・・・は?・・は?・・24歳!?マジで!」
・・・3度見されました。
無謀だった賭けには勝った!
ああ・・このお方が聖女帝伊月様。
ですが・・何か誤解があるようです、私は立派なレディなのですよ!
胸だって・・ありませんが。
このくびれ・・ありませんが。
でもでも!24年も生きてきた、立派なレディーなのですよ!
<聖女帝伊月サイド>
私は今、この天界に来て最大級の神秘に遭遇して驚愕している。
眼の前に居る年齢5歳時程で身長は1m、茶髪ツインテールの可愛い幼女が・・24歳!?
まてよ?この可愛い幼女が24歳と言うことは、これ以上成長しないのか?
・・よし、私の部下にして生涯愛でよう。
有無を言わせない早業で、この幼女を抱き上げて、その頭を丁寧に撫でまくる。
「お姉ちゃんがこの黒騎士ぶっ飛ばしてあげるから。私の部下になろう。そうだ、飴美味しいよ」
速攻で作ったストロベリー味の飴を差し出すと、おずおずと飴を受け取りその口に、そして蕩けるような顔で美味しそうにムグムグさせている姿が小動物みたいで可愛らしい。
「「かわえーな〜」」
そうだ、一緒にこの小動物を観察している黒騎士に殺害しようとしていた苦情をいれる。
「仕方がないだろ!女神の力を一方的に引き出す秘匿呪文を知ってるんだから。私も断腸の思いで試したのよ。もとより殺すつもりは無かったし」
ほうほう、そんな呪文があったのか。
そして死が迫る際にもこの娘は呪文を使わずに私を呼ぶ事を選んでくれたのか。
なんと可愛らしい、これはもう運命の出会いだね。
とりあえず黒騎士を蹴り飛ばして追い出す。
この娘に力を与えられるのは聖属性の私だ。
「お前は外の奴らと戦ってこい!」
「うわっ!てめ!!!見つけたのは私が先なのに・・後で覚えてろ!」
闇属性の黒騎士(役)には、この娘を強くするのは無理なのは分かっているので、すごすごと退散していく。
「シルちゃん、お姉ちゃんが新しい力をあげるからね〜」
と、頭を撫でる。
「いえ、ですから伊月様より年上なのです〜」
かわええ、この天使の困った顔も可愛い。さて強さはどうかな?
<ステータス>
名前:シルビー・メントレーム
年齢:24歳
性別:幼女
種族:幼児族(人族)
存在値:レベル27
スキル:【聖騎士】
称号:【努力家】
性別は・・幼女?種族は・・幼児族?どういうこと?更に詳細を鑑定してみた。
幼児族とは・・・
前世で多くの子供を殺害した魂が生まれ変わる種族。
生涯幼児の姿だが誰にも好かれず、不便で不幸な人生を送る、一種の神罰。
だが稀に、世界に献身したが非業の最期を遂げたものが、来世で幼児族に生まれ変わる事がある。
その際は愛らしい見た目で誰からも愛され、幸福な人生を送る、一種の祝福。
・・・うむ、シルちゃんは間違いなく後者の方だろうね。
可愛いシルちゃんとは末永く一緒に居たいので最近手に入れた【上位聖人】スキルをあげよう。
これで最低でも800年は一緒にいられる。
あとは、怪我をしたら大変だ【切り裂けるもの無】スキルもあげる。
これで切り傷への対策は万全だ。
聖騎士だから【剣神】を・・いや、なにか違う。
とりあえず聖属性を追加してみて・・【剣聖】スキル完成!これをあげよう。
発氣も覚えていれば健康で元気に過ごせるはず。
いきなり目覚めさせると痛みに苦しむので、1時間ほど抱っこしてじっくりと発氣を開眼させる。
シルちゃんは抱っこ後は恥ずかしげにムズがっていたが、5分もせずにすやすやと眠ってしまった・・本当に可愛い!
やはり24歳とは嘘なのではないだろうか?
<ステータス>
名前:シルビー・メントレーム
年齢:24歳(!!!鑑定に間違いなし!!!)
性別:幼女
種族:幼児族(人族)⇒ 幼児族(聖人)
存在値:レベル27 ⇒ レベル100
スキル:【聖騎士】 ⇒ 【神聖騎士】【上位聖人】【剣聖】【切り裂けるもの無】
称号:【努力家】 ⇒ 【努力家】【伊月の愛子】
うむうむ、まあこんなところかな。
満足しているとタツキが現れた、何か用だろうか?
私の異空間は本体とドッペルどちらにもつがなるらしく、娘達は気が向くとドッペルの方にも現れる。
『なにかに誘われてきたのじゃ。おや?この娘か・・これじゃ!この娘を守護するのじゃ』
「えっ!?随分いきなりだね」
『えっ!?ダメダメダメ!』
・・・アリスがうるさい。
「タツキがそこまで気に入るのは珍しいね、いいよ。一応本体にも報告しておいてね」
『了解なのじゃ』
ふむ、この幼女をタツキが守護してくれれば万全の体勢だろう。
と安堵したのもつかの間。
『だめ!絶対に駄目!タツキはずーーーっと私のそばにいるんだから!・・そうだ、そいつを殺せば・・・タツキちゃん帰ってくるよね?』
シスコンをこじらせ、ヤンデレしそうなアリスが大反対、物理的なシルちゃん排斥運動を開始しそうだが・・まあ、特に問題はない。
『そんな事言うアリス姉さまは、だいっきらいなのじゃーーー!!!』
で、早くも撃沈した。
タツキの成長にもつながるんだから、アリスには「可愛い子には旅をさせろ」って言葉をいい加減理解して欲しい。
それに、神獣や幻獣にはこういう直感は大事なんでしょ?
自分で言ってたじゃない。
あ、西都メントレーム襲撃戦は、メントレーム連合軍を黒騎士達が追い込んだところで、女神の援軍として神獣ララム(フェンリル)達が加勢に。
しばらく互角に戦闘を繰り広げた後に、女神の加護復活イベント(演技)を経て、黒騎士は王都へ攻略先を変更した。
いまはメントレーム連合軍が勝どきを上げているところだ。
まあさ、可愛い天使のシルちゃんを得た事に比べれば、戦闘結果なんてどうでもいい些事だよね。
戦闘の詳細をきっちり説明して頂けないと困るのですが・・・




