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016話 総長、マッチポンプのラ・メール攻略戦(決戦前日)②

<魔族領隠れ里 善鬼サイド>


ここは、人族にも魔族にも知られていない隠れ里。

猛抹汰弄もうもたろうなる鬼神から逃げ出し、この天界に移住した鬼族達がひっそりと住む村だ。


向こうの天界では鬼達が猛抹汰弄もうもたろうの指示で各村を襲撃して金銀財宝を奪い取り孤島に立てこもると、猛抹汰弄もうもたろうが「鬼退治」と称して鬼を討伐。

マッチポンプで金銀財宝を自分のものにしていた。

同様の手口で九州、中四国地域で猛威を振るっていたのだ。


だが、悪事の片棒を担がされる事に疲れた鬼達は、ついに決起して別天界へ逃げ出した。

移住してからは、各村の蓄財を調べていた諜報能力をフル活用して周囲の状況を細やかに把握、厄介事を回避し続けて千年近くもひっそりと暮らし続けている。

金竜襲撃で騒がしくなった時期はあったが、元々ここは世界のはずれで被害なし。

そんな隠れ里であるこの村に、今まさに災厄が訪れようとしてる。


「善鬼、本当に行くの?確かに私の占いでは【参加は大吉、不参加は凪続く】と出ているけど、大吉とは何なのか不明なのよ・・・あれらは神の端くれである私が見ても恐怖。私だけ生き残り、みな死ぬ可能性もあるわ!やっぱり参加は危険よ」

私に再考を促しているお方はこの村の村長である豪鬼姫だ。

親であった鬼神、猛抹汰弄もうもたろうから我ら先祖を逃がして下さった方、ご本人である。

この方は慈愛系の神であるため戦闘には適さないが【未知詠みちよみのうらない】という特殊なスキルをお持ちなのだ。

当時、我らの先祖が逃げおおせたのもこのスキルを活用した豪鬼姫のおかげである。


豪鬼姫は白鬼しらおにという特殊な種族で、肌は白く、髪と瞳が漆黒、角は額に1本、銀色の角が生えている。名前とは反比例でスタイルもよく巫女服姿が愛らしく村一番の美人なのだが、何故か誰も劣情を催すこともがない不思議なお方である。きっと至高の存在だからなのだろう。


なお、本人は

「いつか・・いつか燃えるような恋がしたい!」

と言っている。

不死の神が いつか と言っている時点で駄目だと思うが・・・


「陰鬼衆が命がけで探ってきた情報です。教会の聖女帝、暗黒竜、漆黒の騎士、闇の神キュレィム、この四大強者がラ・メール王国王都で戦闘を繰り広げる。ならば、それぞれ疲弊したところで一気に勝負を仕掛けるのです」

「あら?あの引き籠もりの闇の神キュレィムも参加するのですか?」

「周囲が慌ただしく、七冥魔将しちめいましょうも集合しています。間違いないかと」

「そう・・ですがやはり認められません!隠れ里に引きこもり、しばし動向を見守るのです。それからの交渉でも遅くはありません」


確かに豪鬼姫の言うことも分かる。

だけど4勢力がそのまま残ると、真っ先に滅せられるのは我ら流浪の民である鬼族になるのでは?

という不安が拭えない、それに卦の【大吉】も我らを後押ししている。

他の鬼たちも参加して、どうするべきが最善か?と考えていた。

だが、この隙をついて悪魔達が忍び寄っていたのだ。


「ほう、手頃そうな部下が居るではないか!」

「な!?貴様らは何者だ!」

「我達は天界神ガイアから遣わされたものだ。指示に従え!ゴミは強者の為に働くものだ」

そこに居たのは、天狗、鬼、孔雀、虎、牛、であった。

こいつらめちゃくちゃ強いオーラを出しているぞ!幻獣なのか?


「(天狗の)私はかつて毘沙門天と崇められた【上杉謙信】だ!」

「(鬼の)我はかつては武神と謳われた【武田信玄】である。お前らの同胞ではない」

「(虎の)【豊臣秀吉】だ。人生を謳歌したので余生はどうでもいいですな。スローライフなるものを望む」

「(牛の)【徳川家康】です。天下統一をなしとげたので、余生はどうでもいい。帰って寝たい」

「ぐわっはああ!(孔雀の)私はこいつらを統べる【第六天魔王】織田信長の娘【織田信姫おだのぶひめ】である!可愛いだろ?綺麗だろ?当時から美姫と称えられていたからな」


何か得体のしれぬ輩が現れたが、天界ガイアって私達が逃げてきた天界の事では?

もしや!?我らを連れ戻しに来た、猛抹汰弄もうもたろうの尖兵なのでは?

慌てて豪鬼姫を守るために村人が自身の身体で防壁を作る。

だが、こいつらはさらなる恐ろしき大魔王の呼び水だったのだ。


「陰鬼達を辿ってきてみれば。なんか追加で使えそうな人材がいるじゃん。今日は収穫祭だ!みんな狩り尽くして女神マーキュリーに献上しよう」

「は?・・【第六天魔王】織田信長の娘【織田信姫おだのぶひめ】に逆らおうなど。おい愚者!名前を教えろ」


そこに現れたのは

「第・・姫?お前名前長過ぎ、私は聖女帝、山本伊月」

だった。


ああ、やはり4大強者の一角であるこの聖女帝は次元が違う。

豪鬼姫からは出会ったら恭順一択と聞いていたが・・この村、大丈夫なのだろうか?

しかし、天は私達を見放さなかった。

我らの代わりに人身御供になる輩が居てくれたのだから。


「な!?くはははは!貴様が山本伊月か。まさかお前の方からのこのこ現れるとは。主よりお前を殺すように命じられていたが探すのが面倒だったのだ。私ってラッキー!」

「・・・あ?」

相手の殺意に応じて伊月の衣装が見たことがない真紅の衣装に変化した。


5体の獣達はそれぞれ人の姿に変化して・・この波動、この方々は聖人のようだ。

流石の聖女帝でも5人もの聖人には敵わないのでは?


「剛拳の謙信、堅守の信玄、奇手の秀吉、愚直の家康、そして・・鼓舞の信姫!さあ、小娘の首を取れ!者共!」


聖女帝伊月ドッペルゲンガーサイド>


私達をこそこそ探っていた鬼共。

配下にして忍び働きをさせようと里を訪れてみれば・・なんと戦国武将を名乗る5人衆に出会った。

どうやら私を殺しに来たらしいが。


謙信と家康が私に迫り攻撃を開始する。

「聖爆烈拳」「聖爆烈脚」

お、謙信は聖属性の使い手か。

ふむ、手数は多いけど動きに無駄が多いね。

今の2倍は手数を増やさないとカスリもしないぞ。


軽々といなしていると

「猪突猛進!」

家康が突っ込んできた。


特に能力を感じないので抑えつ・・けられない!?

私が私の力で吹き飛ばされた?

これは・・【物理反射】か、面白いスキルだ。


そして、体勢が崩れた瞬間に後ろから私に首を狙った秀吉が迫る。

【奇手】って暗殺者かよ!

でも実力は低いかな。

発氣で作った腕を出して逆に殴りつけると秀吉の前に盾が現れ代わりに拳を受けて砕けた・・【堅守】信玄か。


「くくく、まだ私は力を使ってないぞ伊月よ。これがスキル【天魔王】だ!」

信姫の体からぶわわっ!と、放たれた全魔力?が4名に向かう。

それぞれの能力を大幅に強化する・・らしい。


「・・・あとは・・・任せた」

力を使いすぎて地に伏す信姫。


ただの自己犠牲の力?天魔王とは一体・・期待外れだね。

あと、らしい、というのはエネルギーイーターで相手に力が届く前に根こそぎ頂いたからだ。


「な!?き、貴様ーーー!!!」

悔しがるならもっといい伝達方法を考えるんだな。


ちなみに私にはしょぼすぎて増強効果なし。

こんなものか。この程度の技は一度見たらもう通じない。


謙信には上位属性の暗黒属性を拳にまとい、聖属性をすべて圧倒。

家康の能力は低レベルの【物理反射】だったので、それ以上の物理ゲンコツで沈黙させた。

二人が抑えられたら残り二名は脅威ですらない。適当にボコして終了した。

倒れた5名は私の異空間【教育部屋】に放り込む。

あとで(洗脳でもして)女神マーキュリーの熱烈神徒に育て上げる予定だ。


「改めまして伊月様。私は豪鬼姫、最下級の神であります。もちろん女神マーキュリー様に逆らう気は毛頭ありませんし、天界を運営する女神様を尊敬しております」

「既に知っていると思うけど私は聖女帝、山本伊月です。実は皆さんを勧誘に来たのです。その諜報力を活かして各国の情報収集をしてくれないかしら?陰鬼衆は手練れだから期待しているの」

「でしたら隠れ里の存続・維持の支援をお約束いただければ」


「もちろんOK!」

言ったら即時有言実行!


隠れ里に隠蔽と侵入阻止の神聖属性結界を張り、その解除権限・各種操作を込めたオーブを豪鬼姫に移譲する。


「こんな簡単に?」

「女神様のお力です。聖人程度は手が出せません」

「とりあえず明日はここで大人しくしてね、終わったら詳細を交渉です」


ん?でも当日の戦闘を見てもらったほうがいいかな。

その方が今後の交渉がしやすいだろう。


「いえ、やはり豪鬼姫は王都に来たほうがいいかもしれません」

「???なぜですか?」

「あなた、いわゆる男の娘ですよね?この村では縁がないようですが、人族なら同じ志向の男性が居るかと。それに決戦の最中に良縁があるかもしれません。しかも危機的状況では吊り橋効果が期待できますよ」


「「「「姫様!?」」」」

「男だったのですか・・それで誰もが姫様に欲情しなかったのか」


鬼族男性は、つがいを直感で決めるらしい。

豪鬼姫は同性だから直感も何もない。

女性の方は男から求婚されない限り直感は働かないそうだ、受け身だね〜


「良縁!?今から行きます!」


姫はやはり出会いに飢えていた。

交渉の結果、豪鬼姫をお持ち帰りすることになった。

・・・人質という意味でも大成功だ。


<魔族領隠れ里 善鬼サイド>


男に間違いなかった(巫女服から男子シンボルを出さないで欲しかった)豪鬼姫は意気揚々と伊月殿についていった。

まあ、姫様が幸せになれる切っ掛けになるなら、と快く送り出した。

というか私も付いていきますよ、交渉役は必要ですから。


ですが、流石に婚活とは言えんので

『姫様は村人を思ってそういったんだ、実際は人質。だが俺が交渉するから安心しろ』

と広めておいた。


その後、黒騎士の来訪があったらしいが結界を見た途端に「先を越されたか」とすんなりご帰宅頂けたそうだ。

聖女帝の結界はすごいのだな、これなら安心して外出できる。


<???サイド>


ここは暗黒界。堕落した神、高位悪魔が支配するいわゆる裏世界。

光があればそれに反発する闇も存在する。

その闇が敵対する高貴なる神々が治める世界への侵略を進めている。


「天界神マーキュリーの神力が危険域に入りました」

「よし、下級神を3体、中位悪魔5体、悪魔兵1000体で派遣しろ!そして強者共が集まる場所へ奇襲してすべて滅せよ!天界神を孤立させるのだ」

「は!10日後には出撃可能です!」

「天界プルートに続く2つ目の天界を奪取するのだ。あそこを落とせば攻略中の天界ジュピターへの支援ルートも増強できる」


「「「すべては黒き女神様のために!」」」


<天界ガイア 女神ガイアサイド>


あの無能共の反応が無くなりましたね。

5名の聖人を一瞬で・・伊月おもちゃも成長しているのですね。

さて、どうしたものでしょうか?

あまり繁茂に手下を派遣すると女神マーキュリーに気づかれ、干渉行為を責められてしまいます。

何かアイディアは・・あら?過去に女神マーキュリーに渡した3振りの剣のうちの一振りが起動しておりますね。

男同士のあれを見てから目覚めてしまってホモホモうるさかったのよね、こいつ。


貴重な二振りの剣は惜しかったですが、あのゴミの処分費用と思えば安いものでした。

あらあら、剣の使い手は貧弱なのですね・・そうですわ!

剣を経由してこの持ち主に加護スキルを与えれば、強者好きの伊月おもちゃが勝手に挑むでしょう。

過去の私物ですからある程度の干渉権限は残ってます。

スキルくらいなら付与できるでしょう。


とりあえず剣関連のスキルは・・・

【剣王】

【剣帝】

【剣神】

【切れぬもの無】


貧弱な体を補うスキルは・・・

【上位聖人】

【切り裂けるもの無】


こんなところでよいでしょうか。


ふふふ、伊月おもちゃが無様に切り刻まれる姿を見れないのが残念ですが、反逆者には死があるのみです。



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