011話 総長(ドッペル)、悪臭神キュレィムの部下として活動する
<伊月サイド>
ヒュー達を暗黒属性の魔力で洗い流したら綺麗なジャイ◎ンレベルに浄化された。
さっきまで怨念の穢で臭かったからね。
過剰な力の奔流で消滅するかと思ってたんだけど、耐えた。
ゴブリンゾンビ共々生き残った。
そして・・・
「我が主神様!是非とも下僕としてお使い願います」
と懇願されて困っている。
闇の勢力を女神マーキュリーの配下にするのは時期尚早、とりあえず私の配下でいいか。
ん?こいつらを使って各都市を適当に攻めれば・・女神信仰復活を促進できるんじゃないか!?
ラノベの有名アンデットさんも自作自演やってたよね!
こいつらなら最適だし、私もこっそり参加してこいつらの主神の悪評を流せば・・ついでに怒れる神との初戦闘も・・くくく、一石二鳥だ。
「よし、お前らを配下にしてやろう・・あ、やば!?私のドッペルを残すので指示に従うように!」
「「「はい!」」」
<伊月サイド>
本体の伊月は仲間の危機に慌てて帰っていった。
私は本体の1割以下しか力はないけどステータスを見る限り問題なさそうだ。
<ステータス>
名前:山本伊月のドッペルゲンガー1号
年齢:なし
性別:女神
種族:世界神(lv1000以上)
存在値:レベル10/1000
スキル:竜化(◎暗黒:【始原の黑邪】)
称号:【神からの簒奪者】【暗黒竜の怨敵】
ドッペルは数体作れるんだけど・・世界神レベルの存在が同時に増えても大丈夫かな?
やっぱりどこかで自身の力の保有量を確認したいな。
「そういえば、百合香は将軍なんだろ?主人は誰なんだ?」
「私のすべては伊月様のものです」
そういうのはいらん!
聞き出した話によると、こいつの主人は暗黒の神。
魔族領域には7人の魔王(百合香も魔王のひとり)が統治していたが、そこにその神が支配を開始して魔族領は神の統一国家になったそうだ。
「名前は闇の神キュレィム様・・とにかくあいつは瘴気、穢がくっさいんですよ」
「お前、元主人に対してひどくない?」
「既に伊月様の下僕ですから」
「で・・本当に臭いのか?」
「はい」
「私も経験したが、確かに瘴気は臭いよな」
「はい、すっごく!」・・そうか。
アンデットに「臭い」と言われる、ということは相当な年月をじめっとした怨念を溜め込んで熟成しているな。恐らく闇の神が堕落した存在なのだろう。
つまりはいじけニートだ、引き籠もっている間に妄想で憎悪をマシマシにした存在だろう。
女神マーキュリーの配下に2〜3名の神が欲しかったので、ちょうどいい。
ん?闇の神には詳しい?あー、日本には結構いるのよこういうやつら。
闇の聖人レベルだけど京都の修学旅行でも色々粘着されて戦闘も楽しかった。
妖怪の類も多くて頭領のぬらりひょんとも仲いいのよ、私。
その代わり聖なる存在にはタツキ以外に出会った事ないのよね。
それとドッペルになって分かったことがある。
それは魔法や発氣が体から離れない理由だ。
私はいわば魔力体のようなものなのだけど・・本体に早く戻りたい!という願望がすごいの。
どうも本体は、エネルギーにとって安らぎの場所らしいのよ。
おそらくエネルギーイーターの能力と関係があるのだろうけど。
その辺り調査は本体では難しいのでドッペルの私が研究するつもり。
あ、そうだ。ヒューは新たな主を得たことで名前を変えたんだよ。
今は百合香(軽く提示したら『かわいい』と頬を染めて承諾された、トンボも頬が赤くなるんだね。
<ステータス>
名前:ヒュー ⇒ 百合香
年齢:なし
性別:オス ⇒ メス
種族:伊月の眷属【闇】(ダークリベリュール・カイザー)
存在値:レベル71 ⇒ 92
スキル:【大空の覇者】【巨大化】【分隊生成】【思考共有】
称号:主神とずっと一緒!
ちなみに称号の【主神とずっと一緒!】は私が「こいつもういらないな」と思うと死ぬらしい。
随分と懐かれたものだよね。
だいたい種族がアンデットから私の眷属って、そんなの有りなの?
男が嫌いという私の意志に沿って雌になってるし・・ま、私の異空間で飼えばいいか。
ちなみにアンデットだったゴブリンは、というと・・・
<ステータス>
名前:001〜104
年齢:なし
性別:なし
種族:百合香の眷属【闇】(ダークゴブリン・カイザー)
存在値:レベル3 ⇒ 39
スキル:【思考共有】【金剛】
称号:主神とずっと一緒!
こいつらも捨てたら死ぬらしい。
名前はナンバリングされており、私が対象を見ると名前(数値)が表示される。
この存在レベル39の兵士が104体(消滅した個体も当然居た)もいるのよ。
私、魔王と僭称してもいいんじゃないかな?
まあ、当面は闇の神キュレィムの大将軍として逆布教活動する予定。
ヒュー以外の他の将軍との戦闘も楽しみだ。
「よし、早速これからラ・メール王国の3つの都市を攻撃するぞ」
「「「「「おおーーっ!」」」」」
作戦内容を説明後、巨大化した百合香の足にゴブリン達が飛びつき、背には私と護衛のゴブリン2体が搭乗する。
「ではしゅっぱーーーーつ!」
東都ザラデタンの上空からゴブリン34体と百合香の分隊34体を投下して、王都ラ・メールでも同じことをする。
一通り暴れた後で、百合香の分隊に回収してもらい、それぞれラ・メールの森に帰還する。
最後に西都メントレームでゴブリン達を投下して帰還予定だったんだけど・・・強そうなのがいるじゃない。
「百合香、ちょっと遊んでくるね」
「了解」
【始原の黑邪】で漆黒の騎士(今回は顔に仮面を装備)に変化して、髪も黒く変化させて飛び降りる・・・まずはアイツだな。
<ミリエールサイド>
私はザラデタン侯爵の長女ミリエール、15歳です。
一応、騎士団長の職についております。
私には特別な力があるようでして、下腹辺りにある不思議な力を体内に充満させると魔力を使わずに身体強化が出来るのです。
しかも魔力での身体強化をすれば2重で強化出来ます。
そのため、近隣で私より強いものは皆無。
出来れば強者が集う隣国のレオンハル王国に嫁に行きたいと思っています。
今日の夜会はレオンハル王国のゴルゴラル・レオンハル王太子が参加されるので、ぜひアピールを!と張り切っていましたが・・・
「大変だ!魔物の襲撃だーー!!!」
その言葉を合図に、ゴルゴラル・レオンハル王太子とメントレーム侯爵が嬉々として飛び出していった。
くっ!?私としたことが出遅れたわ。
私も2重強化【ダブルアップデート】を掛けて外に飛び出した。
夜会のためドレス姿ではあるけど戦闘中にドレスも何も関係ない、肌を晒そうが負けるよりは全然いい。
なんなら裸でも問題はない。
「な!?・・・お前!こんの馬鹿者がーーー!!!」
ん?・・気がつけば黒き騎士が仁王立ちしていた。
あれ?いつの間に私は地に伏して・・ああ、こいつに倒されたのか。
「女子が周囲に肌をさらすとは・・何たる破廉恥!」
・・・は?こいつ何をいってるのか。
その後、何故か正座させられてしこたま怒られた。
今は女性の貞操・純潔について延々と講義されている。
逆らいたいのだけど強烈な威圧で逆らえない。
伊月は男嫌いをこじらせており、思考がいわば明治時代のおばあちゃん。
女性の貞操には特に厳しいのだ。
そんな変人の眼の前に、うら若き少女がドレスのスカートを切り裂き、ドロワーズ丸出しで走る姿を目にしたのだから、説教の10や20は出てくるだろう。
「操?・・・強い男ならなんでもいいし」
「なら、もっと強い男が現れたらどうするんだ!」
「え!?誘惑して乗り換えればいいんじゃない?」
「な!?・・・こ・・・バカモンがーーー!!!」
強烈なゲンコツを食らって・・・私はまた気絶した。
そして今は、父であるザラデタン侯爵と一緒に正座させられて黒い鎧の騎士に怒られている。
ちなみに助力は期待できない。
何故なら私達の周囲に最強の二人、ゴルゴラル・レオンハル王太子とメントレーム侯爵が白目を向いて打ち捨てられているからだ。
「こんな破廉恥な痴女を育成したのは・・・お前か!」
同じく白目を向いていた父は叩き起こされて、現在私の隣で正座させられていると言う訳です。
魔物に怒られてる私達、なんかシュールだわ。
その後、くどくどと耳にタコが出来るのでは?というほど叱られて、最終的には・・・
「もう我慢ならん!立派な淑女に鍛え上げてやる(女神教会にぶち込もう)」
と、誘拐されてしまった。でも、この黒騎士が強いのは間違いない。私のお婿さんこいつで良いんじゃないかな?
ゴツっ!「ぎゃ!」「私は女だ!」
えっ!?・・・私のお婿さんは別に女でも男でも強ければどうでもいいんですけど?
この黒騎士は何を言っているのやら?この世は強さが全てなのよ!
より優秀な子を残すために・・この方を私の婿に決めたわ!
これだけ強いんですもの、絶対に逃がしませんわよ。