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第七十一話 緊急事態宣言




 独立宣言から6日が経過した。


 その日、俺は『1ドル=700円』を示す為替レートを眺めながら、日本という国がいよいよ沈んでいくのを実感していた。


 円の暴落は、暴力的なまでに加速度的だった。


 海外ファンドの円売りと、国内資産家による海外逃避が重なり、もはや止まる兆しすらない。

 数日以内に『1ドル=800円』になるのは確実であり、1週間後には『1ドル=1000円』に到達してもおかしくはない。


 まさに異常なまでの暴落が、現実になろうとしていた。


 もはや経済の立て直しは不可能な段階まで来ており、後はコーヒーでも飲みながら優雅に終わりを見届けるだけだ。

 そして、日本が沈んだその瞬間を狙い、横から全て掻っ攫えば万事OK。


「……しかし、このコーヒー美味しいな。玲奈、豆変えた?」


 カップを軽く傾けて、一口。

 口に広がるのは、苦味と酸味のバランスが見事な芳醇な香り。鼻に抜ける香ばしさに、思わずため息が漏れる。


「よくわかりましたね。コナコーヒーと言う豆に変えてみました。これキャサリンさんから貰ったんですよ」

「……これ美味しいよ」


 コナと言えば、ハワイで栽培されている高級コーヒーじゃないか。

 さすがアメリカの諜報員だ。気が利いた贈り物と言わざる負えない。


「こんどプレゼントを変えそうか。……そうだな、コーヒーを貰ったしお茶なんてどうだ?」

「では、私が準備しておきますね」


 上流国民でお嬢様の玲奈に任せておけば問題は無いだろう。


 なんて、呑気な会話をしていた時、涼太が慌ただしく扉を開けて飛び込んできた。

 何事かと思い涼太の顔を見たが、その表情は焦りとも期待とも取れない顔をしている。


「正吾、テレビをつけて!政府が今から緊急会見するって!」


 その報告に思わず笑みがこぼれてしまう。


「……ようやく来たか」


 俺はゆっくりとカップをテーブルに置き、背もたれからわずかに体を起こす。


 この会見が、日本政府にとって『最後の悪あがき』になるのは、間違いないだろう。

 彼らは何らかの対策を打ち出してくるだろうが、今さら打てる手など限られている。


「テレビを映してくれ」

「OK。……はい、映したよ」


 涼太がリモコンを操作すると、巨大モニターに総理官邸の記者会見場が映し出された。


 報道陣で埋め尽くされたフロアには、一種異様な緊張感に包まれている事が一目で分かる。


 そして、今回の主役であり、日本のトップでもある犬塚総理大臣が壇上に立っていた。

 顔色は見るからに悪く、目元は落ちくぼみ、かつての覇気は微塵もない。


 そんな、彼の口から何が語られるのかを、日本国民は注視する。その言葉が、この国の未来を決定づけるのだから。



~~~



 会見場には、異様な緊張が張り詰めていた。


 フラッシュの光が瞬くたび、並ぶ閣僚たちの疲弊しきった表情が露わになる。

 目の下の深いクマに青白い顔。強張った口元と、不眠から来る生存本能のせいか目は半分閉じ欠けている。


 それだけで、何日も寝ていないかが分かってしまう。それ故に、現状の状況が、いかに悪いかを理解してしまうのだ。


 そして、報道陣もまた、沈黙の中に緊張を漂わせていた。

 記者たちは固くペンを握りしめ、今か今かと総理の言葉を待ちわびている。


 この会見が、『国家の命運を左右する決断』」であることを、誰もが感じ取っていた。


 そして会見開始予定時刻がやってくる。

 日本国民の殆どが、テレビやスマホを通して、会見を見ていた。


 やがて、中央に立つ犬塚総理がマイクに口を近づければ、会場が一瞬にして静寂に包まれる。

 誰しもが犬塚総理の言葉に注視し、一言も聞き逃さないように意識を全集中させた。


 そして、犬塚総理は12時になった瞬間、言葉を発する。


「……まず初めに、国民の皆さまに心よりお詫び申し上げます。現在、日本は未曾有の経済危機に直面しています。円はかつてない暴落を続け、金融市場は混乱し、社会の機能もすでに限界を迎えつつあります」


 総理が喋り出した瞬間、記者はペンを走らせ、生配信にはコメントが溢れかえる。


「この事態を招いた責任の一端が政府にあることは否定できません。しかし、今この瞬間も混乱が広がり、国民の命と暮らしが危機に晒されています」


 一拍置いて、犬塚総理は目を閉じ、深く息を吸い込んだ。

 そして、語気を強め、決断を口にする。


「よって本日、日本政府は国家の存続を守るために、『緊急事態宣言』を発令することを決定しました」


 その言葉は、重く、容赦なく場に落とされた。

 生配信のコメント欄は見えない程までに高速で流れる。報道陣の間には沈黙が走り、次に続く言葉を静かに待つ。


「この非常事態宣言に伴い、以下の緊急措置を即時実施いたします」


 そして読み上げられたのは、かつての日本では考えられなかったような強硬措置の数々だった。


「一つ、本日をもって、東京証券取引所および外国為替市場の全取引を一時停止します。株式市場も無期限で閉鎖し、さらなる投機的攻撃を防ぎます」

「一つ、個人および法人の銀行預金の引き出しに制限を設けます。一部の特定口座に関しては、1ヶ月間、出金を凍結する措置を取ります」

「一つ、円の価値を守るため、本日より為替や仮想通貨の取引を全面的に禁止します。国内の仮想通貨取引所には、ダンジョンコインを含む全ての取引の即時停止を要請しました」

「一つ、経済混乱を煽る虚偽情報が拡散されるのを防ぐため、インターネットおよびSNSの監視を強化します。政府の承認を受けていない情報発信を行った者に対しては、厳正な対処を行います」


 会見場は、まるで凍りついたかのように静まり返っていた。


 言論、資産、情報。それらすべての自由と権利を『緊急事態宣言』の名のもとに制限する。それはもはや『国民の自由と権利を奪う宣告』だった。


 そして、日本が民主主義国家から独裁国家へと移り変わる瞬間でもあったのだ。


 記者たちは唖然とした表情で固まっている最中、犬塚総理は数舜の沈黙を挟んで説明を続けた。


「……これらの措置は、決して国民の自由や権利を恒久的に侵害するためのものではありません」


 疲労に満ちたその顔とは裏腹に、声には迷いがなかった。

 言葉は冷静で、なおかつ淡々としていたが、そこには国家の崩壊を前にした政治家の苦渋と覚悟がにじんでいた。


「我々政府は、この未曾有の経済危機に対し、可能な限りの選択肢を検討しました。そして、今を乗り切るためにはこの措置しかないという結論に至ったのです」


 その言葉を発した瞬間、フラッシュが一斉に焚かれ、記者席からはどよめきとともに1人が立ち上がって声を発した。


「犬塚総理!この緊急事態宣言は、実質的に『戒厳令』ではないのですか?!」


 記者の鋭い声が、沈黙を切り裂く。


「国民の預金凍結、仮想通貨の禁止、報道統制……それらは民主主義国家として明らかに逸脱している措置ではないのですか?!」


 記者の鋭い目線とは対照的に、犬塚総理は視線をぶらさず、その言葉に正面から応じた。


「……戒厳令とは、軍が統治を担う体制を指します。我々は軍事政権ではありませんし、自衛隊に行政権を委譲する意図もありません」


 静かながらも、言葉の一つひとつには決して譲らぬ強さがあった。


「我々の目的は『国民を縛る』ことではなく、『国民と国家を守る』ことです。今、我が国は経済的な戦争状態にあります。あらゆる秩序が崩れようとしているこの瞬間に、手をこまねいているわけにはいきません」


 犬塚総理は今回の緊急事態宣言の正統性を主張するが、その内容が内容なだけに、到底国民が受け入れる事は出来ない。


 だからこそ、より一層鋭くなった記者が口を開いた。


「……それでも、国民の自由を制限し、財産を凍結する措置を『必要な犠牲』として許容するのですか?!」


 しかし、そんな記者を冷静に見据えた犬塚総理は、静かに、しかし力のこもった覚悟と共に言葉を吐き出す。


「もしも…………もしも国家が崩壊すれば、『財産』も『生活』も、そして『人命』すら守ることはできません。……この国の存続がなければ、何ひとつ救えないのです。だからこそ、これは『最後の防衛線』なのです」


 その言葉に嘘はなかった。

 だが、それは同時に、政府が『自由よりも国家を選んだ』という明確な告白でもあった。


 そして、その選択が、どれだけの反発と不信を呼ぶか。犬塚総理もまた、理解しきれてはいなかった。



~~~



 俺はコーヒーを口に運びながら、込み上げてくる笑いを必死に抑えていた。

 いや、正直に言えば吹き出しそうだった。


 政府が昔から無能なのは分かっていた。だが、まさかここまで愚かだとは思ってもいなかった。


 『非常事態宣言』


 おそらく、これは経済を立て直すための苦渋の一手であり、最後の賭けだったのだろう。

 だが実際には、火に油を注ぐような愚策も愚策。


 まさにゴルバチョフの『グラスノスチ(情報公開)』だな。


 あれは規制を『緩めた』結果、ソ連が崩壊した。

 対して日本政府は、規制を『締め付ける』ことで自壊の道を突き進んでいる。


 笑えるほど皮肉だ。いや、もう笑うしかない。


 そして、何よりもグラスノスチとは真逆な政策な所が、なお面白い。


 しかも、何よりも滑稽なのは、『円を守る』と言いながら、『円の使用を一時的に停止する』という支離滅裂な方針だ。

 国民は自分の銀行口座にすらアクセスできず、企業もあらゆる取引が停止し、経済は『停止』どころか『窒息死』しかねない状態に自ら追い込んでいる。


 確かに、『これ以上の金融攻撃を緩和したいだけ』ならば良い手段だが、あまりにもデメリットが多すぎる政策と言わざる負えない。


 これでは、国家が自ら経済の首を締めているようなものだ。


 しかし、俺たちにとってみれば、これ以上嬉しい事もない。


「奴らが自ら死にたいと言うのであれば、いいだろう。世界一優しい俺が、直々にとどめを刺してやろうではないか」

「ハハ、正吾が言うと冗談に聞こえないね」


 それは、そうだ。

 何せ、冗談では無いからな。

 

「玲奈、直ぐに配信できるように準備しておけ。涼太は『D.pay』の配布準備をしてくれ」

「了解です」

「おっけー。わかった」


 俺が言うと、玲奈は静かに頷き、涼太はパソコンを操作し始める。


「……でも、政府も馬鹿だよね。わざわざ『隙』を作ってくれるなんてさ」

「だな。もしも構成の歴史家がこれを見れば、笑い転げて死ぬだろうよ」

「ハハハ、その通りだね」


 涼太は、笑いながらも手は止めない。


「……OK、配布の準備は出来た。後は設定だけだけど、……どうするの?」

「アルカディア国民になった物には、一律で100万円分のダンジョンコインを配る」

「……100万円って、今のレートで言えば20万円ぐらいだよ?っあ、でも今はゴミ同然か」


 珍しい涼太の冗談に笑いそうになる。

 不意打ちとは、涼太もやってくれるな。


「……もちろん元のレートだよ。俺は『財務官僚』じゃないからな。出資を絞ることはしないさ」

「…………OK、準備出来た。で、国民にするって言ってたけど、どうするの?一人一人パスポートを見て判断なんて出来ないよ?」

「大丈夫だ。そこは日本が残してくれた遺産に頼るとしよう」

「『遺産』ねw」

「ああ、便利な『マイナンバーカード』と言う遺産をな」



~~~



 俺は玲奈と涼太に軽く頷いて合図を送り、全国に向けた『アルカディア緊急放送』の開始スイッチを押した。


 その瞬間、AIによって生成された大量の通知が、日本国内のネットワークに送られる。

 さらには、政府の緊急会見が流れる主要テレビ局の地上波・ケーブル電波に直接干渉し、チャンネルをジャックした。


 すべての通信電波域を乗っ取った事が涼太のハンドサインで知らされ、全てのテレビは俺たちの映像へと切り替わる。


 俺は玲奈に配信開始のサインを出すと、玲奈は静かにカメラを見つめ、口を開いた。


「日本国民の皆さん。政府の緊急会見をご覧になりましたか?」


 背後のスクリーン画面には、先ほどの犬塚総理大臣の会見映像が映し出される。


 疲れ切った顔の総理が発した『緊急事態宣言』と言う言葉。

 次々と並べられていく『資産凍結』『市場封鎖』『報道統制』という文字。


 それらは、政府自らが国民の自由を奪い、生活を人質に取ったという何よりの証拠映像だった。


「……政府の非常事態宣言。これは明らかに民主主義の権利である、『自由権』と『私的財産権』を侵害しています。さらに、この会見を見てお分かりの通り、彼らは『生命権』をも脅かす発言をしています」


 玲奈の言葉に合わせ、画面には会見の一部が流れる。


『もしも…………もしも国家が崩壊すれば、『財産』も『生活』も、そして『人命』すら守ることはできません。……この国の存続がなければ、何ひとつ救えないのです。だからこそ、これは『最後の防衛線』なのです』


 映像が流れ終わると、玲奈は一拍の間を空けて、いかにも悲しそうに喋る。


「……政府は、『国民を守るため』『経済を守るため』と言いながら、実際にやっている事は、あなたの資産を凍結し、自由を奪い、言論を封じようとしているのです」


 政府は『非常事態宣言』と呼んでいるが、実際には戒厳令に近い内容だ。

 まだ自衛隊を動かしての治安活動には踏み切っていないが、すでに治安部隊と民間の間で衝突が発生し、死傷者も出ている。


「皆さんもご存知のように、日本政府は『治安維持』を名目にデモに対して強硬な弾圧を行っています。これは、明らかに言論の自由を侵害する憲法違反です」


 玲奈の言葉に合わせて、ここ数日の日本国内の映像が次々と映し出される。


 『やめろ!これは平和的なデモだ!』『お前たち、それでも警察か!』『グゥア!目が!』


 催涙弾が群衆に投げ込まれ、人々が混乱の中を逃げ惑う。

 盾を構えた治安部隊がデモ隊を押し返し、警棒が振るわれる。

 次の瞬間、鈍い音とともに、男性の頭から血が流れ出す。


「このように非人道的行為を政府が命令して行なっています。さらには……」


 言葉に合わせて画面が切り替わる。それは銀行を映し出していた。


『預金が凍結ってどう言う事だよ!?』『家賃が払えない……どうすればいいんだ!?』『ふざけんな!さっさと金を出せ!』


 と言った銀行の前で叫ぶ人々が映し出される。


 彼らの表情には、焦燥と絶望が浮かんでいるが、それも当然だ。

 これまで必死に働いて稼いできた金が、政府の一存で『無』になったのだから。


 まあ、それをやったのは俺たちなんだけどな……。


 玲奈もそのことは分かっているが、一切臆面には出さない。それどころか、顔を伏せ、声を震わせて続けた。


「……政府は、『経済を守る』と言いながら、実際には国民の生活を崩壊させています。そして、次に彼らが取る手段は、明白です」


 さらに画面が切り替わり、次に映し出されるのは、自衛隊の演習映像。

 そこには、機動隊と自衛隊が市街地戦の訓練をしている様子が映っていた。


「自衛隊の動員……これは、単なる脅しではありません。政府は、民間人に対して武力を行使する可能性を検討し始めています」


 玲奈の言葉に合わせて、さらに画面は切り替わる。

 背後のスクリーンには、SNS上で拡散されている『DST隊員の匿名リーク情報』が映し出されていた。


 そこには、次の作戦内容が記されている。

 

『デモ及び暴徒の鎮圧作戦』


 詳細に記された作戦書には、催涙弾の使用を前提に、デモを逮捕することも明確に記されていた。

 明らかに弾圧する事を前提に作られた作戦書は、誰の目から見ても独裁国家と同じだ。


「……さらに、それだけには止まらず、政府はすでに特定のジャーナリストや反政府的な動きをしている者を監視リストに載せています」


 玲奈は、カメラを見据えながら、はっきりと告げた。


「これが、現在の日本政府の正体です。彼らは、自らの失敗を認めることなく、国民を支配することでこの混乱を乗り切ろうとしています。しかし……」


 玲奈は一瞬、言葉を区切った。

 画面が切り替わり、セイントのベール越しでも美しいと分かる顔が、アップで映し出される。


「……私たちは、そんな世界を受け入れるつもりはありません」


 玲奈は静かに、しかし確固たる意志を持って続けた。


「日本政府は、国民の財産と自由を奪いました。しかし、私たちはそれを取り戻す方法を提供します」


 画面が、また切り替わる。

 そこには、一つのロゴが表示されていた。


『D.pay』


 それは、ダンジョンコインを取引の出来る『通貨』として成り立たせる為に作ったアプリだ。


 仮想通貨を基礎としたブロックチェーン技術に、スマートコントラクトとDeFiを取り入れた技術だ。

 これにより、中央銀行を必要としない金融システムが確立され、現代の金融システムよりも自由度が高くなった。

 仮想通貨である特性として、マネーロンダリングなどの対策にもつながり、世界一クリーンな通貨と言ってもいいだろう。


「これは仮想通貨である『ダンジョンコイン』を通貨として利用できる様にするアプリです」


 玲奈は続ける。


「日本政府が、民間の銀行口座を凍結した現在において、円は紙切れに成り下がりました。しかし、ダンジョンコインならば、貴方の資産を守る事が出来ます」


 玲奈はわずかに微笑み、次の言葉を紡いだ。


「しかし、日本政府によって円を止められている今では、円をダンジョンコインに変換できません。なので、私たちアルカディアは、アルカディア国民になったすべての人に100万円分のダンジョンコインを支給いたします!」


 玲奈の言葉にコメント欄は『100万だと!?』『そんなにもらえるのか!』『今すぐ登録するわ!』と言ったコメントが散見される。


「アルカディア国民になるには、ダンジョン教会のホームページからなる事が出来ます。手順としては……」


ーーー

1.ダンジョン教会ホームページに行き、自身のアカウントにログインする。

2.ログインが完了したら、マイナンバーカードか、もしくは保険証の個人番号を入力する。

3.個人番号と指名と生年月日の入力が終われば、自身の顔写真を取る。

4.上の全てが終われば、アルカディア国民になれる。

ーーー


「この4つのステップを踏めば、アルカディア国民となります。アルカディア国民となった時点で、自動的に銀行口座が開設されていて、そこに100万円分のダンジョンコインが振り込まれています」


 玲奈が説明している間にも、D.payのダウンロード数はありえないスピードで増えて行く。


 その数字は驚異的で1万を超えたと思ったら、もう10万を超えた。さらには十万代は一瞬にして通り過ぎて、100万をすぐさま突破していく。


 これを見て俺は確信した。『勝った』と。




『グラスノスチ』

ゴルバチョフ政権の時、『ペレストロイカ(改革)』の一環で行われたのが『グラスノスチ(情報公開)』だ。

当初は、国の改革を促進するための『風通しの良い社会』を目指した政策だったのだが、この情報公開によって『ソ連時代の戦争犯罪』や『大粛清の実態』、『チェルノブイリ原発事故の隠蔽』や『政治エリートの腐敗』などが露呈し、最終的には政権が倒れてしまった。


国の経済と立て直そうとして『規制を強化』した日本と、国を改革しようとして『規制を緩和』したソ連をこの作中では比喩しています。

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