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第四十七話 まさにロボットは男のロマン




 涼太が正気に戻ってから話が再開された。


「それで話は戻るけど、スキル内容を教えてくれない?」

「…え?全部?」

「そう。何ができるのかを把握しておいて損はないだろう?」

「分かった」


 そう言って、涼太はモニターにスキル内容を書き出していく。

 さすがはパソコン作業が得意な涼太だ。手で書くよりも遥かに速いスピードで文字が映し出されていく。


ーーー 

〈機械工学〉

・機械工学に対する知見を得る。

〈電子工学〉

・電子工学に対する知見を得る。

〈ロボット工学〉

・ロボット工学に対する知見を得る。

〈魔道工学〉

・魔道工学に対する知見を得る。

〈プログラミング〉

・プログラミングに対する知見を得る。

〈工作技術〉

・工作技術の技能を得る。

〈人造機械〉

・人工機械の製造とその知見を得る。

〈人造生命〉

・人工生命の製造とその知見を得る。

〈物質創造〉

・自身が想像した物質を創造することが出来る。

・また、レベルに応じて内容と規模が決まる。

〈魔道眼〉

・魔法の原理原則を見抜く目を得る。

〈設計図〉

・設計図を正確に書けるようになる。

〈回路図〉

・回路図を正確に書けるようになる。

〈疑似空間〉

・自身の想像して作り出した空間を自由自在に操ることが出来る。

〈早熟〉

・ほんの少しだけレベルアップに必要な魔素量が減少する。

ーーー


 と、こんな感じだ。

 色々あり厄介そうに思えるが、これらのスキルを一言で表せば『何かを作る事に特化したスキル』となる訳だ。

 戦闘とはかけ離れたスキル達だが、涼太にはこれ以上ない程に適切なスキルに思える。


「ねえ正吾、これって僕にロボットを作れって言っているのかな?」

「さあ。でも、ロボットって」

「「めっちゃいいよね」な」


 所詮、俺たちも男だ。ロボットと言う言葉に酷く惹かれる。


 もちろんだが、俺も日本国民としてアニメや漫画を嗜んでいる。その中で、世界的に有名な『エヴァ〇ゲリオン』『コード〇アス』『ガ〇ダム』『ア〇ドノア・ゼロ』なんかも見ていて、めちゃくちゃファンだ。

 そんなのだから、ロボットと言う言葉に心躍らせない方がおかしい。


「もし……もしも人型ロボットを作れたら……」

「うん、それ、めちゃくちゃロマンあるよね」


 ガシッと腕を組み合わせる俺たちは互いの思いを静かに交わし合う。しかし、そんな俺達2人に対して、玲奈は冷ややかな目を向けてきている。


 この激熱展開が玲奈にはさっぱり分からないのだろう。


「はぁ、私はBLに興味はありませんが、今の姿は慎んだ方が良いと思いますよ」


 なんて、いらんアドバイスまで投げてきた。いや、確かに涼太は腐女子が好きそうではあるけれども……。


「「……」」


 俺と涼太はそっと距離を離した。


 流石にBLのネタにされてはたまらん。


「ごほん。それはともあれとして、涼太はロボット作れそうか?」

「んー、分からない。色々スキルにポイントを振って見てはいるけど、これで本当に人型ロボットが作れるのかは試してみるまでは……」

「そっか、じゃあ仕方がない。試してみて行けそうだったら、連絡ちょうだい。お金とかは全部こっちで準備するから」

「分かった。じゃあ、出来そうだったら連絡するね」


 こうして男のロマンたる人型ロボットが出来るかもしれない、と言うワクワクが一個増えたのだった。



~~~



 なんて話をしたのが昨日の事。

 そして、今日の朝。早くも涼太からの連絡が来ていた。


『正吾、今日徹夜で色々試してみたんだけど、ロボット作れそう!』03:11


 深夜3時に送られてきた事を除けば、なんとも素晴らしい報告だ。

 俺はベッドから飛び起き、『今からそっち行くわ!』とだけ返事を打ちかえす。すぐさま涼太の家に向かう準備を始めると、物音で玲奈が起きてきた。


「……正吾さん、こんな朝早くからどこか行くんですか?今日は予定はなかったはずですが?」

「それが、涼太からロボットが出来そうだって連絡があってな」

「なるほど。では、私は今日は休日にします。男同士でどうぞ」


 玲奈の言葉は『私は興味ないので、どうぞ好きにしてください』という意味だった。


「OKだ。じゃあ1人で行ってくるわ」


 俺はすぐさま準備して、ホテルを出た。




 昨日は夜遅くまで涼太と話していたため、近くのホテルに泊まっていた。

 幸い涼太の家は徒歩圏内だったので、コンビニで朝食を買い、ゆっくりと歩きながら向かう。


 ちょうどこの時間帯は、出勤するスーツ姿のサラリーマンたちが、熱い日差しの中、出勤していく。

 そんな中を悠々自適に歩くのは、なんとも優越感があった。今なら出兵する兵士たちに敬礼でもしたくなる気分だ。


 涼太の家に到着すると、昨日少し片づけたとはいえ、まだ部屋の隅にはゴミが残っている。

 それでも今の俺の気分なら、この部屋でもダンスができそうなほどに気分は上々だ。


「おはよう涼太」

「おはよう」


 挨拶を交わすと、早速話したいことでいっぱいの俺たちは部屋へ入る。

 そして、予想外の光景に目を見張った。


 いつもは散らかったゴミの山がある部屋が、片隅に積み上げられ、作業スペースがしっかり確保されている。

 普段の涼太からは考えられない変貌ぶりに驚いていると、彼が手に何かを持ってきた。


 手渡されたのは小さなプラモデル。

 いや、これはただのプラモデルじゃない。異常なまでに精巧な作りだ。中までしっかりと部品が存在しているのが分かる。


「これ……」

「そう、40分の1スケールの模型だよ。直径は25センチで、40倍すれば10メートルになる」


 全体的に角ばったデザインは、『ガ〇ダム』や『アルノドア・ゼロのカタフラクト』のようなイメージだ。

 中身を確認すると、コックピットらしき空間もある。油圧システムを採用した構造は、まるで人型ブルドーザーだ。

 だが、ひとつだけ気になる点があった。


「なあ、涼太。この模型には何故エンジンが付いていないんだ?」


 そう、油圧システムまで精巧に再現してある模型には、機械の心臓部でもあるエンジンが無かったのだ。


 もちろんだが、エンジン無しで動くような、ご都合主義のロボットなど現実には存在しない。

 それを覆すのがスキルと言われれば反論できないが、流石にそんな都合のいいスキルは無いだろう。


 と、すれば、この模型にはエンジンのようには見えないエンジンが付いているのだろうか?


「僕が設計したロボットにはエンジンは付いていないよ」

「は?」


 動力なしではただの置物だ。エンジンじゃなくても『エヴァンゲリオン』のようなバッテリーは必要だろう。

 だが、それらしきものも見当たらない。


「……涼太のことだから、このロボットは動くんだろ?」

「そうだね。でも説明なしだと正吾も不安だと思うから、1から説明するね」


 涼太は模型にエンジンが付いていない理由を二つ挙げた。


「まず、物理的な問題。現代のエンジンでは10メートルのロボットを動かすのは無理なんだ」

「具体的には?」

「例えば、軍用ヘリのT700エンジンは最大3000馬力を発揮する。でも、これをロボットに積むと致命的な問題がある」

「問題?」

「熱だ。ターボシャフトエンジンはジェット噴射を利用するから、何千度もの熱を発する。密室コックピットの真下に積んだら、全員蒸し焼きだよ」

「なるほどな……」


 オーブンで焼かれたい人間など居ないだろう。


「そして、もう一つはエネルギー不足だ。この3000馬力のエンジンを使っても、60トン超えのロボットを動かすには出力が足りない」


 …え?じゃあこれを動かせるエンジンは存在しないってこと?だからこの模型にもエンジンを乗せていなかった?

 いや、それはおかしい。それが課題ならわざわざ俺を呼ぶ必要がない。


「……でも、俺を呼んだってことは、他に手段があるってことでしょ?」

「そう、他にエンジンと呼べる物があったんだよ。それは正吾もしっている」

「……俺が知っている?」


 俺が知っているエネルギー源?……もしや。


「そうか!魔石か!」

「正解。魔石は現代の発電技術で核融合や核分裂に次ぐエネルギー効率を持つ。大規模な発電には適さないものの、小さな発電では核融合、核分裂を抑えて1番。放射線も出ないし安全性も高い」

「でも、それでロボットは動かせないのか?」

「魔石単体じゃエネルギーが足りない。魔石炉を3つ連結させないとまともに動かせないよ」

「じゃあT700エンジンだったら何機積めば動く?」

「ざっと5機かな」

「……マジかよ」


 3000馬力が5台、つまり15000馬力。それだけ出力が必要なら、人型ロボットが実現しない理由も頷ける。


「もちろん、この15000馬力は計算上のもので、摩擦や空気抵抗を考慮していない。言っちゃえば机上の空論で、15000馬力では足りないと僕は予想している」

「……じゃあ、魔石炉でも無理?」

「いや、正吾を呼んだのにはちゃんと理由がある」


 涼太の目が輝いた。


「魔石じゃなくても、魔素を使えば効率の良いエンジンが作れると思ったんだ。だけど、魔石は物質の限界まで魔素が注がれていて、これ以上魔素を入れるのは不可能だった。でも、ただ一つだけ例外がある」

「何だ?」

「正吾、それは……僕たち人間だよ」

「……人間?」

「そう、人間。もう少し正確に言うならば、レベルアップしていくと魔素を溜め込む事ができる。それこそレベル5を越えれば1階層でドロップする魔石を超え、20レベルだったら、正吾から貰った3階層のボスモンスターに相当する魔素を貯める事ができる。レベル100を越えれば5階層のモンスター並みの魔素になり、ロボットを一時的に動かせるだけの魔素を得る。そして、レベル300辺りでロボットを安定的に動かせるだけの魔素を貯める事ができる訳だ」


 何ちゅうことだ。人がロボットの核とは…。まさにエヴァン〇リオンの様に人間が核になるのか。

 …シンジ、エヴァに乗れ。…いや違うか。どちらかと言えば碇シンジよりも碇ユイの方か。だって俺、核になるんだもん。


「つまり俺たちがエンジンであり電池ってことか?」

「その通り。でも問題もあるんだ」

「……何が?」

「簡単に言うと、レベル300の人間はロボットに乗るよりも生身で戦った方が圧倒的に強いって事だね。

 それもそのはずで、常に魔素をロボットの維持に使用している訳で、その分の魔素を戦闘に回した方が強くなるのは当たり前なんだよ。

 つまりは、今現在においてロボットはロマン以上の代物にはなれないって事だね」


 なるほどね。確かにそれは問題だ。

 ロボット兵器は実用性あっての物でもある。ロマンで1台作ってみるのは良いが、到底売り物にはなりえない。


「なるほどな。それは問題だ。だけど、結局は俺たちのロマンの為に作っているから、1台は絶対に作ろうか」

「分かった。……色々、話して来たんだけど、正吾から質問とかある?」


 そう…だな。


「……質問と言うよりかは疑問点なんだが、なんでこのロボットは油圧システムなんだ?」

「…?それは、どういう事?小さな力で大きな力を生み出せる点や、メンテナンスとかを考えれば、最適だと思うんだけど…」

「いや、そうじゃ無くて、わざわざ現在の技術に囚われなくてもいいんじゃないかって話。だってこれは魔素と言ったファンタジーの要素から来るロボットなんだぜ?わざわざ現代の技術に囚われなくてもいいんじゃないかって…」

「!!……………、そうか。……そうだよね!そうだよ!なんで僕は気が付かなかったんだ!確かに油圧システムなんて使わなくても、魔法で代用できるかもしれない!そうなれば重い油を使わなくていいから、機体重量を軽く出来るかもしれない!…そして、油圧システム以外にも……!!!」


 いきなりヒートアップし始めた涼太は、パソコンに向かって信じられない勢いで設計図に手を入れていく。

 正直俺からしてみれば、何をやっているのか分からないが、大興奮のせいで昨日から寝ていないハズなのに目は充血して怖い事になっている。


「……涼太…大丈夫か?」

「……」

「これは…駄目だな。もう完全に自分の世界に入っている」


 過集中に陥ってしまった涼太には、言葉など届かない。

 俺は仕方がなく涼太にメッセージを書いた後、そそくさと家を去る事にした。




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