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転校生?

遅くなってすみません!

風が吹いている。


やはり屋上はいいものだ。


ここでは誰にも邪魔されずに昼休みを過ごすことができる。平和に過ごす。それに越したことはない。


俺は高校に入学して以来、昼休みにここ以外で過ごしたことはない。おっと。別に陰キャというわけではないぞ?


これは俺の能力に関係することだからだ。


そう。俺には少し変わったことができる。


だが決してすごいものではないし、誇れるものでもない。


ただ自分の「感情」によって風が強くなったり弱くなったりする、それだけだ。


感情によって風の強さが変わるため、コントロールが難しい。


親によると、俺が赤ん坊の時は大変だったそうだ。泣き叫ぶたびに家の中で強風が吹く。


なぜ、俺にこの能力がついたのかはわからない。親によると生まれたときからそういうことだったという。でもどうして俺なのだろうか。俺は何かを成し遂げるほどの力を持っていない。この能力がなかったら俺なんかただのモブだ。


「どうして俺はこんな無駄な能力を使えるんだろうな」


別にこの能力を不便に思ったことはない。感情によって風が変わる。それだけだ。


俺が小さかった頃は、この能力の意義を求めていろいろ試してみてはいたが、最近はこの能力の意味を求めることに飽きてしまった。


「そもそもなんで俺なのだろう。ほかにだれか適任がいたはずだ」


俺はこの能力を抑えるために人と接することはあまりしない。


そのため、この能力を日常的に使うことはめったにない。


こんなに適していない人はこの世界中で俺ぐらいしかいないだろう。


立っているのもつかれるので、俺はゆっくりと腰を下ろした。


バタン。


後ろからドアを開ける音が聞こえた。


この音が聞こえるということは、誰かが屋上にやってきたということになる。でもこの屋上は、俺以外が使っているところを見たことはない。


というか、本来屋上を使うことは禁止されている。


入ってきたのは女の人だった。おそらく同級生だ。ここまでは普通だろう。だが、一つだけ違和感があった。それは、彼女がこの学校の制服を着ていないことだ。


服装は……なんていうかものすごくふわふわしている。多分家がお金持ちなのだろう。


学校で制服を着ていないということは、その人物は学校の先生か、ただの部外者だ。


おそらく、答えは後者のほうだろう。


なぜなら、この学校で顔を一度も見たことがないからだ。


だが、部外者といっても同い年の可能性が高いため、転校生か何かだろう。


だが転校してきて初日で屋上に来るのはおかしい。


俺の転校生のイメージは初日でみんなと仲良くなるイメージなのだが。


もし、複数人で屋上に来たのならわかるが、来たのは一人だけだ。


「絶対何かあるじゃん……」


ま、俺には関係ないことだ。


俺はドアの後ろ側にいたため、あいつは俺がここにいることに気づいていないだろう。


もう少しで昼休みも終わるし、あいつがどっか行ったら俺は教室に戻るとしよう。


俺は立ち上がると、ばれないようにドアの方向へと歩き出した。


「待ちなさい」


……


なぜばれたのだろう。


ばれないようにしていたはずなのに。


無視して教室に戻るという手もあるが、おそらく最善の手は話すことだろう。


それに無視するのも少し罪悪感がある。


俺はあきらめて話すことにした。


後ろを振り向いて、今日初めての声を発した。


「何でしょうか?」


できるだけ印象を悪くしないように気を付けて話した。


「あなた、私の助手にならない?」


…………


……………………


「???????????」


どういう状況なのだろうか。


多分俺は今、ものすごくあほらしい顔をしているだろう。


「えっと、どういうことだ?」


助手?なんなんだ一体。


助手ってことは科学者?探偵?


いやいやまさかそんなことはないだろう。


第一、第一印象だけで決めるはずがない。


出会って一言しか言葉を交わしていないはずなのに、なぜ俺なのだろうか?


「シンプルよ。あなたには私の助手になってもらいたいの」


ごめん。シンプルすぎてわからない。


「えっと?助手って何のことだ?それに、なぜ俺なんだ?今初めて会ったばかりじゃないか」


女性は、少しため息をついた後俺に指をさしていった。


「あなたがいいの」


「おれ?」


一体どういうことなのだろうか。もしかして一目ぼれってやつなのだろうか。


「なぜ俺なんだ?別に、お互い面識があるわけじゃない。それに、助手って何のことだ?俺にはよく理解ができない。俺はほかの人を助手にするのをお勧めするが」


女性は俺の言葉を聞いていると、だんだんと顔が険しくなっていった。


「あーもうごちゃごちゃうるさいわね!私はあなたがいいの!」


「!?」


急に大声を出された背で少したじろいでしまった。


「も、もしかして一目ぼれってやつ?」


ミスった。慎重に言葉を選ばなければいけないのに、久しぶりに人と話したせいで普段の人との接し方を忘れてしまった。


女性の顔を見ると、怒っていることが目に見える。短気すぎないか?


「あーじゃあもうそれでいいわよ!私はあなたに一目ぼれした!だから私の助手になって!」

ますます理解ができなくなった。


「と、とりあえずいったん落ち着こう。もう授業も始まってしまう。申し訳ないが俺は授業に遅れたくない。それではさようなら」


面倒ごとには関わりたくないので俺が今出せる全速力で階段を駆け下りていった。


「あっ!ちょっ!待ちなさいよ!」


後ろから声が聞こえるが今はそんなことはお構いなしに走る。


階段を下りる。


風のせいで息がしづらい。


二階まで下り、階段から一番遠いところに教室があるが、まあ間に合うだろう。


チャイムが鳴った。


このままいけばぎりぎり教室に入ることはできる。


正直、普段は無口で静かな俺が走っているのをクラスメイトに見られるのは嫌だ。だが、そんなことは言っていられない。


ここの学校のチャイムは短いが、それでもなり終わる前に入れば大丈夫だ。


「待ちなさいよ!」


後ろから声が聞こえる。


「やばい、早く教室に入らないと!」


すぐ目の前にある教室のドアを開け、入ると同時にすぐさま扉を閉じ、一番後ろの席に行った。


クラスメイト達の視線がものすごく痛いが、とりあえず教室入ることがよしとしよう。


俺は自分の席に座ると、何事もなかったかのように前を向いた。


バタン


右からドアを開ける音が聞こえた。


「まさか、その程度で私が逃がすと思ってないでしょうね?」


まさか授業中に入ってくるとは思わなかった……


そして、俺のほうに歩いてきたかと思うと、俺の襟をつかんだ。


「おい!ちょっ!離せよ!」


だが、一向に襟を離す気配がなく、とうとう俺を教室の外へ連れて行ってしまった。


当然、クラスメイトは俺を助けてくれなかった。


なんなら、珍しく感情をむき出しにしたのにも関わらず、風も俺を助けることはなかった。

読んでくださり、ありがとうございました!

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