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アルゼンチンは亜爾然丁:2023.AM6:10~6:40

「2月の漢検、受かったら俺と付き合って下さい!!!」

清水の舞台から飛び降りる覚悟で発したあの言葉を、放課後の教室の静寂を、秋の光を、真っ赤になってうつむく芹沢さんの髪が戴くヘアバンドを、俺は覚えている。

正直何故漢検なのか。何故2月なのか。

付き合って下さいで良かったんじゃないかとか。あの日の俺にしたい突っ込みは、尽きない。

けど、俺は一念発起した。今ならアルゼンチンだって亜爾然丁と書ける。

そう。悔いはない。

だから俺はこの会場の机で堂々と指を組み、試験の時刻を待つ。

自然と笑みも浮かぶ。これは武者震いの代わりだ。とりあえず、試験担当が来るまで、瞑想を……。いや、筆箱から鉛筆出しとくかな。


………。


「何でエビフライ!!!!」

思わず叫んだ。しかも消しゴムじゃなくてハンペンじゃないか。

エビフライは5本。ハンペンは1個。これでどうやって漢検を戦えと!?


「安住君、大丈夫?」

綺麗な声がした。振り向かなくても芹沢さんだと分かった。俺はがばりと振り向き、泣きながら筆記用具を貸して下さいと言いかけて。

「はい。これ」

「え。これ。良いんですか?」

「うん」

はにかむ芹沢さん。日本一可愛い。

差し出されたそれは、ポッキー。

「でも、何で」

「今日、バレンタイン、だから」

頬を染める芹沢さん。宇宙一可愛い。

幸せだなあ。うん。ポッキーだって、チョコレートだし美味しいしでも漢検には筆記用具なんだよー。筆記用具なんだよおおおお!!!!

漢検受かんないと付き合えないんだよおぉう。


いや。まだ希望がある。試験官に借りれば良いのだ。


席に戻る芹沢さんのスカートの腰を愛しく見つめて、俺はバリバリとポッキーを噛み砕く。

借りる。堂々と借りる。それで幸福な家族計画だ。違う。恋人生活だ。

「貸して下さい」

「どうぞ」

試験官が差し出したそれを、受け取ろうとして絶句。

竹輪だった。渡されたのは、竹輪だった……!!!

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