鮮血の新洋主
それは年に一度、海を越えてやってくるという。
この町ではそれに備えて大騒ぎで、夏の悪天候も祟って大慌てで準備に追われている。
いよいよか、と先輩たちが息を張り、僕はただまじまじと見つめた。
「おい、今年はお前も参加できるだろ? 来いよ!」
そう言われて招集された。
実際どういうものかわからないし、そこまで興奮している感覚もまだわからない。
見よう見まねで支度にとりかかる。
「さあ、祭りが始まるぜ。この戦場で、朝まで倒れねえように、体調は大丈夫か?」
彼らはここを「戦場」と言った。
うん、確かに。
先輩たちの日々を見ていればそれも納得できる。
「届いたぞ! 時間通りだ!」
戦場の準備が整う中、届けられた物資に全員が群がる。
そして、それをテーブルに並べていく。
ニ十歳になったばかりの僕はその「戦場」の端っこにちょこんと座り、にんまりとしている先輩たちを窺う。
間もなくして鮮血の色を帯びたグラスがテーブルに並ぶ。
――確かにきれいだ。
でも、見慣れていない僕には普通のそれと差はよくわからない。
やがて、戦場に声が響き渡った。
「「「「乾杯!」」」」