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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

目標<マイル・オダ第六天魔カップ>で1着をとろう!

作者: 水森つかさ

青色や赤色に染め抜かれた織田木瓜の家紋が、会場にたなびく。

スタンドには、公家衆や武士たちといった元亀天正のツワモノどもから、紫色のローブを着て妖しいオーラを放つ魔法使い、はるか未来につくられた全身流体金属のアンドロイド、はてはグレイ型の宇宙人までが詰めかけている。

すべて、織田信長の関係者である。


「ときは今 あめが下知る 五月(さつき)かな

さあ、全世界の織田家臣団が待ち望んだ、夢のレース<参る(マイル)・オダ第六天魔カップ>です。

各次元から集ったノブナガたちが、1600(関ヶ原)メートルを駆け抜け、世界最強の織田信長になるのは誰か?

実況はわたくし、てんぷら大好き徳川家康」


異世界の力を身につけた信長に、福耳を全長3メートルにされた徳川家康がマイクを握って言った。


「解説は、光秀の謀反にお困りならご相談を、豊臣秀吉でお送りします」


信長死亡の黒幕である世界、阻止する世界、無関係だった世界、と複数の世界線の人格が合体して、アイデンティティの揺らいでいる豊臣秀吉は言った。


スタンドの観客たちから声援が飛ぶ。

パドックに異なる世界線の信長たちが入場してきたのだ。


カメラが切り替わり、家康は、一人ずつ信長を紹介していく。


「ここで注目の出走信長を紹介していきます。この評価は不満か?周囲に、その肉体美をアピールしています。

3番人気 4番 ノブナガ・フクキナイ

人生50年どころか、人生0年目の姿をしています」


「いや~、かの信長様の軽量化には目をみはるものがありますね。鉄砲伝来前にも関わらず立派な鉄砲も伝来しています」秀吉は言った。


「尾張の外裸とらノブヒデ・イナリマンの遺志を引き継ぎ、衣服なき天下を目指せるか?」


全裸の49歳中年男性(のぶなが)が、スクリーンにどアップで映し出される。


「検非違使から逃げられるかも含めて、レースが楽しみですね。」秀吉は投げやりに言った。


さらに大きな歓声を受けて入場してきた信長は、スーツを着て、へこへこしている。物腰がとても低く、両手をすり合わせている。


「光秀の機嫌取りは任せろ! サラリーマン生活で磨いたスキルが炸裂する。昨年、支店長に昇進。

彼の末脚こびうりに敵うノブナガはいるのか?

2番人気 13番 ミツヒデニ・ビビッテル」


「「「してんちょー、がんばってくださーい!!!」」」


OLたちが、応援幕を広げる。まるで会社の運動会だ。


「キンカン頭を欄干(らんかん)にぶつけない慎重さ持ち合わせています。」家康は言った。


「部下の頭を手すりにぶつけたら、裁判沙汰ですからね。社会人として、普通では?」秀吉は言った。


もっとも大きな歓声で迎えられたのは、トレーナーにジーパンという大学生のような格好をした信長であった。


「観客からは、声援があがっております。1番人気は、誰もが認めるこの男!

大本命 1番 ノブナガ・ゲンダイジン

現代人の記憶を持った織田信長っ!!

今期、最強の逃げ信長。未来予測・火薬チート・科学チートなんでもござれ。尾張に、300年はやい産業革命(チート)を巻き起こす!」 家康は言った。


「未知の展開への対応力が課題ですが、それを問題にしないスタート・ダッシュが魅力ですね。

ほかのノブナガを寄せ付けない圧倒的なスピードを持っていますよ」秀吉は言った。


「各ノブナガいっせいに土田御前ゲートインです!」


ファンファーレのち、会場に一瞬の静寂が訪れると、種子島が鳴り響いた。


「さあ、スタート!おおっと、ノブナガ・ゲンダイジン!

出遅れ、いや、ゲートから出ようとしません! 」家康は言った。


「もしかすると、今はやりの反出生主義に影響されたのかもしれませんね」

秀吉は、ふーん、と鼻くそをほじりながら、就活したくない大学生が好む理屈っぽい雑誌を読んでいる。


「現代人ゆえの落とし穴!これは大波乱の展開!紙吹雪が舞う!敦盛も舞っている! 」


スタンドでは、大魔法使い柴田勝家が、一番人気ノブナガ券を外して怒り狂っている。デスデビル・ゴーレムたちに騎馬突撃を命じて、レース中止による払い戻しを狙う。王国の騎士団を、一度の突撃でSEPPUKUさせた恐ろしき部隊である。


勝家の好きにさせてたまるかよと、万ノブナガ券に賭けている九鬼嘉隆宇宙艦隊は、星を数百個消し飛ばす反物質ミサイルすら防ぐTEKKOU船バリアを展開する。


スタンドは、異次元織田家臣団ウルトラウォーズの様相をみせている。



荒れに荒れるスタンドとは対照的に、レースは大本命であったノブナガ・ゲンダイジンの失格を除いて、穏やかに展開していった。


「さあ、1534(生まれた年)メートルを通過!最後の直線に差し掛かります」


最終カーブで、父親の位牌に灰を投げつけると、ノブナガたちは一斉に加速していく。


「各信長、順調に平手政秀(じいや)を切腹させていきます」


「うーん、これは倫理的にかかっていますね」


秀吉は、折り重なった平手政秀の死体を見ながら、ドン引きした顔で言った。


「さあ、1560メートルを通過、桶狭間スポットだ!ああっとここで、12番2番人気ミツヒデニ・ビビッテル、討ち死にです!今川義元に討ち取られてしまいました」家康は言った。


「光秀との出会いを恐れて、美濃に行きませんでしたからね。人材不足でしょう」秀吉は言った。


「さあ、残り40メートルだ。各ノブナガ、天下取り(スピード)をあげていく!

ここからノブナガのピンチは、多いぞ!

9番 ノブナガ・ジテンシャ おっと、六角攻めに失敗!」家康は言った。


「信長様とはいえ、自転車ですからね。六角レンチで分解されてしまいました」秀吉は答える。


「17番 ノブナガ・イセカイニーク 敵地に単身で旅行し、北畠氏に捕まりました」


「伊勢と異世界を間違えてしまったようです。うっかりさんですね」


「4番 3番人気 ノブナガ・フクキナイ あっと!松永秀久に討ち取ら(逮捕され)れました」


「腐っても弾正台。都の平和は守られました」


ノブナガたちは、次々と脱落していく。


「先頭は、16番 ノブナガ・ユダンスル、3ノブナガ身空いて、2番 ノブナガ・ケイビナシ、5番 ミツヒデニ・メチャオコル と死亡フラグが続いております。

さあ、人生50年を迎えるには、本能寺の変があるぞ!各ノブナガここを超えることはできるか?

光秀、一斉に点火!」家康は叫んだ。


爆発!燃えさかる本能寺! ついでに、信忠も自害!


「これ、備中高松城から帰るのしんどいんですよね」秀吉は言った。


「16番 あっさり討死、2番 自害 と落信長が続いております。1582メートルを抜けるのは、どの織田かぁっ!!!」


「あっと!燃えさかる本能寺から、一人抜け出した。えっと……誰?」


家康は困惑した様子だ。


「18番 オダ・ウジハル(小田氏治) ですね。信長様と同じ1534年生まれの関東の大名です。まあ、私に領地を没収されましたけど」秀吉は言った。


「さあ、18番 オダ・ウジハル!山崎の戦い、清州会議と難所をゆうゆうと抜けていきます」


「彼、関係ありませんからね」


「小牧・長久手の戦いも突破したぁ!!!ちなみに、あれは徳川の完勝です」


「はあ?負けてないし。お家取り潰しすんぞ」秀吉は青筋を立てる。


「秀頼のお世話やめよっかな~?」


実況と解説が火花を飛ばすあいだにも、レースは進む。

他の信長は、1582メートル地点で脱落してしまい、オダ・ウジハルだけが、直線を進んでいく。


「18番 オダ・ウジハル そのまま突っ切って、ゴール!! 

おっと、スタンドの織田一族が猛抗議しています」家康は言った。


「当然ですね」


「本部の判定はどうなるか?」


電光掲示板にオレンジ色と赤色の光がともる。


<確定 Ⅰ 18 オダ>


「オダ扱いです!!!フィクションによっては、織田を小田にした事例もあるので、ギリギリセーフ扱い!」


「ぜってえ、セーフじゃない」秀吉は言った。


「オダ第六天魔カップを制したのは、織田ではなく小田!

最強の織田信長は、小田氏治となりましたぁぁ!!!

それではみなさん、次の時代(江戸幕府)でお会いしましょう」

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