日常 1
強張りが解けた体、瞼の外に感じる光。
ぼやけていた意識がゆっくりと覚醒していく。
「ああ、夢、か」
声に出し、ゆっくりと目を開く。
夢。確かに、夢だった。
というか、そもそも何故あんな夢を見たのだろうか。あいつとは、ホントに接点なんてないのだが。
「あさぎり、はるか、ねぇ」
口に出してみる。
朝霧 遥。クラスメイト。女子生徒。
成績優秀、運動神経抜群。見た目良し。
……まぁ、うん。男子生徒の憧れの的、になるのも良くわかるなぁ。
とはいえ、本人は色恋に興味がないのか、どんな男が告白してきても、
『あなたに興味がありません』
だもんなぁ。
むしろ、あいつが興味ある男って、どんな人だろうか。
『遠見くん、意外と話しやすいのね』
「話しかけにくい、って思われてんのかねぇ~……くぁあ」
あくびが出る。
別に、クラスで一匹狼を気取ったり、無駄につっけんどんな対応をしている訳じゃない。
それなりにクラスメイトとも会話するし、何かの話で盛り上がったりもする。
むしろ、自分ではおしゃべりな方ではないか、と思うくらいだが。
『あなたが、私に興味がないから』
それは、確かに。
彼女の事は良く知らない、だがそれでもどこか壁を感じる事も多かった。
一本線を引かれているというか、遠巻きに見られている、というか。
それに対し俺は、彼女との距離感が分からないし、率先して興味を引きたいとも思わなかった。だから、話しかける事も少なかった。それが朝霧からしたら、『興味がない』と取られたんだろうなぁ。
「全く興味が、ない訳じゃあない、あぁあふ」
あくびが出る。
ふむ、俺はまだ眠い、という事か。どうにも意識が覚醒しきらない。
仕方ない、こういう時は二度寝をして眠気を取ることが先決だ。
仕方ないのだ、頭が回らないと学業にも身が入らない。
本文を全うするために、俺は仕方なく意識を手放すのだ。うんうん、そうだ、仕方なくだ。
「というわけでもう少しおやすみ……」
目を閉じる。
眠気はすぐにやってくる。
あぁ、次は夢を見ずに寝れますように……。
「寝るな、馬鹿者」
―――ひゅんっ
短い罵声。
空を切る音。
そして
―――どすっ
鈍い音。
遅れてやってくる、
「……?!!んんんんっむぬっ……???!!」
鳩尾の鈍痛。
息が、できなくなるっ……!
声も出せず、俺はベッドの上をのたうち回る。
痛い、苦しい。
というか、何が起こった?いや、大体わかる、さっきの声は
ずるっ、とベッドからずり落ち、
「んぐぅう!」
背中から落下した。あぁ……せめて、もっとまともうめき声をあげたいものだ……。
「目覚ましでも起きず、あまつさえ二度寝までしようとは。いい度胸だな?愚弟」
イライラしたような女性の声。
俺がゆっくり目を開けると、そこには