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009 HEROは散歩する


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



テクテクテクテクっ♪



るんるんるん♪



エリスは上機嫌で歩いていた。歩きながら途中でスキップを入れたり、サイドステップを入れたり、クルクル回ってみたり。



「にひひ〜♪」



エリスは異世界の美しい大草原を眺めて……そして、ニヤけていた。



軽い足取り。それもそのはず、エリスの両足には、エリスの髪色と同じようなピンク色の鮮やかなパンプスが光っていた。天女の羽衣の『伸縮自在』と『色彩変化』を応用して、格闘すること小一時間。



エリスは「透明なシースルーストッキング」を開発し、その次に、繋がる足先の部分のみ「ピンクのパンプス」に変化させるテクニック(布とゴムの特性を応用)を覚えたのである。



天野美月だった頃、コスプレ衣装づくりに没頭したおかげなのか、ファッションに関するアイテムが、どんな構造で構成されているのか、この異世界では容易くイメージできる様になっていた。



もちろんメカニックなど興味の薄い物質はイメージが難しかった。しかし、大好きな洋服や、靴などのファッション小物などに関してはスキルを応用して無事に生み出す事に成功した。やっとこの世界を歩ける、エリスはそう思うと嬉しさのあまり微笑んだ。



「これで服には困らないし、もしかしたら着せ替えも一瞬でできるし…アテナ様の羽衣って凄すぎますー!!」



『女神の加護』



全く知らない土地でも、誰かの祝福を受けていること、それが嬉しかった。私は1人じゃないんだ、女神様達がついてる。そう思うと不思議と力が湧き出てくるエリスだった。



「やっぱり新しい服ってテンション上がるな〜♪今なら、トリプルアクセル…ううん、4回転も出来そう」



エリスの目の前には色とりどりの草花が咲いている高い丘が見えていた。傾斜はなだらかだが、それなりに距離があった。



あの丘の向こうには何が見えるんだろう?



エリスは散歩がてら丘の頂上を目指していた。スキップをしながら、ふいに昔踊っていた「楽曲:Beautiful World」の構えを取る。



異世界の草花を銀盤に見立てて、ホール全体の観客席に向かって、右手を高らかにフワリとあげて、大きく優雅にお辞儀をする。



そして、フワッと初動のステップを踏み出し、丘の頂上に向かって走り出す。観客は異世界の大草原。ステージの演者は私。



小学生の頃に初めてスポットライトを浴びて、ステージに立った日の事が懐かしい。誰だって初めての舞台は怖い。大勢の観客が見ている中で、初めの一歩を踏み出す事、その一歩の重さは異常だったなと思い返す。



すると、エリスが次の一歩を踏み出したその瞬間に、ピンクのパンプスに異変が起こった。足元が僅かに光だし、あたかもブレードのついたスケート靴の様に滑り出したのである。



「え!?ウソ!?滑ってる!!!?」



驚きのあまり、少しよろけたものの、前に重心をかけて一気に滑り出す事で無事にバランスを取ることができた。



滑る感覚は前世で愛用していたスケート靴と全く一緒だった。パンプスにブレードこそついていなかったが、まるでホバーのように地面スレスレを滑っていた。



「ええーーっ!!?凄い!!ギリギリで浮いてる!!!」



慣れるまで、あっという間だった。突然の嬉しい変化に、エリスは地面を銀盤の様に蹴りだして、加速をつけてグングンと滑り出す。



大きな弧を描き、勢いをつけて…



ダブルルッツ、ダブルトーループ…いい感じ…



華麗なステップやスピンを挟みながら、異世界の美しい景色がクルクルと回り出す。銀盤と違って、地面には高低差があったが、それがまた楽しかった。地面の上を滑れるなんて、日本では考えたこともなかった。これが異世界なんだ。エリスは子供のようにはしゃぎながら加速する。



「よし!…トリプルアクセル!!!」



と、エリスが思いっきり踏み込んでジャンプすると、軽く3mほどジャンプしてしまった。



「ふえ!??わっ!きゃあああ!!!」



クルクルクルクル。クルクルクルクル…



ジャンプの最高到達点についたエリスは思った。じゅ、10回転くらいしたかも…



「お、お、おちるぅ〜〜!!!」



回転を緩めて、スカートが舞い上がらない様に前を抑えると、そのままフワリと落下して行く。自分の足で飛んだ高さのためなのか、不思議と怖さはなかった。



フワリフワリ。



風にスカートをなびかせながら、真っ白なワンピースから白い足を伸ばすと、キレイに着氷できた。足も全然痛くない。余力のスピードを活かしながら再び滑り始める。



「ふえーーー。ビックリした。この星の重力って弱いのかな」



ジャンプの高さにも驚いたが、地表を滑れる事で、何よりも移動がものすごく楽になったと感じた。エリスの漕ぎ出す1歩の力が強いのか、登り坂であっても自動二輪車の様に少ない力で、グングンと登ることができた。



「あ、桃の木はっけん!!」



丘の頂上には霊桃の木が何本か生えており、エリスはその中の1つに目掛けて加速し、ジャンピングすると、シュシュッと両手で素早いパンチングを2回繰り出し、2つの桃をキャッチした。不思議と体が軽く、イメージ通りに動きを繰り出す事ができた。



桃の木の周りでループを描き、滑りながら桃の実を剥いて食べた。三時のおやつの時間に丁度良い時間帯だった。もう1つの桃はスカートの内側にポッケを作り、そこに入れておくことにした。



「あーーー。楽しかった!」



久しぶりに滑れた高揚感と、口の中も桃の甘味で幸せな気持ちになり、エリスは丘の頂上からの景色を眺めた。



「んー気持ちいい♪……ん?」



すると、遠くから走って近づいてくる1つの人影が見えた。周りを見渡すが、どうやら人影は真っ直ぐエリスに向かって近づいてくる様だった。小さな点だった人影は、徐々に大きくなっていく。



「ーーさまぁーー」



人影が何やら叫びながら近づいてくる。急いでいるのか、全力疾走しながらエリスに向かってくる様だ。



え、誰だろう?



「女神さまぁーーーーー!!!!」



えっ!?誰だろうこの子…

あ、転んだっ!



その人影は、エリスの目の前に猛スピードで転がり込んだ。





--- テロレロリン ♪ ---

[ヘスティア]の加護により、自動で情報が開示されました。


【名前】

前世:天野美月 16歳

現世:エリス・ロヴェラ 16歳 (Lv 1)


【ユニークスキル】

・オーラ (Lv 3)

身体強化、物理防御、魔法防御、

炎特性、炎耐性、冷特性、冷耐性、

ゴム特性、布特性、すべり特性


【装備スキル】

・天女の羽衣 (Lv 3)

[スキル:魔力操作 LV.3]

[スキル:色彩変化 LV.3]

[スキル:伸縮自在 LV.3]

[スキル:形状記憶 LV.3]

[スキル:自動クリーニング LV.2]

[スキル:オートロック LV.2]

[スキル:空中浮遊 LV.1]


---




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



Copyright(C)2020-まあふ

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