12話 家族は新婚旅行の続きへ旅立つ。
第一章 完!! 皆様本当に応援ありがとうございました!
次回からは一日一本投稿にペースを落としますので、ご了承ください!
ラクレスSIDE
「はむはむ……この、ワタアメという奴。愛らしい見た目に反して暴力的な甘さよの、ふふふ、こんなおいしいものが食べ放題とは、妾お祭り気に入ったぞ」
にこにこと笑いながらワタアメをほおばるセラス。
その後村で例年通り祭りを迎えることができ、僕の魔王討伐200年を記念したお祭りはミルドリユニア軍を撤退させた喜びも上乗せされて盛大に行われた。
「お祭り好きー!」
エルドラドの名前を聞いて青ざめていたメルティナの精神状況は少し心配であったものの、セラスと村を回りながら全く同じ格好でワタアメをたべる姿を見るに、全く問題はなさそうで僕は安堵する。
「そぉかメルティナも好きか」
「うん! 大好き!」
二人して同じ場所にワタアメをつけてはにかむ姿は何とも微笑ましく、村を歩きながら屋台や出し物に二人で目を丸くする姿を少し離れたところで見守る。
セラスと二人で祭りを回るつもりだったのに、すっかりメルティナに取られてしまい、僕は少しの嫉妬を覚えながらいつも通りリアナと二人で勝利の美酒に酔う。
「ラクレス様」
そんな中、珍しく僕を背後から呼ぶ声が響き、振り返るとそこにはアミルさんがいた。
「……アミルさん、どうしたの?」
「一度ならず二度までも、村を救っていただきましてそのお礼を」
ぺこりと頭を下げるアミルさんであったが、僕は慌てて首を振る。
「そんな、いいんですよ。 セラスも言ってたでしょ? 祭りが始まるまでは、何かが合ったら僕たちの方で対処するって……セラスもあんなに楽しそうだし。 それよりも、今度は一人も被害が出なくてよかったですよ」
笑う僕にアミルさんは短く「えぇ」とつぶやくと、楽しそうにセラスと村を回るメルティナに優しい瞳を向ける。
その瞳は本当の母親のようで、血はつながっていなくとも彼女とメルティナがどのように一緒に過ごしてきたかは語らずともその表情だけでわかってしまう。
「ラクレス様……もし聞き届けていただけるならで構わないのですが」
ふと、アミルさんはメルティナを見つめながらそんなことを呟く。
その瞳は何かを決心したような。 そんな表情が見て取れた。
「何? 僕にできることなら、何でも聞くよ?」
「ありがとうございます……迷惑は百も承知ですが……その」
アミルさんは震えている。 その瞳には、恐怖と迷いが見て取れる。
「言って……迷惑だなんて思わないから」
そんなアミルさんの言葉を僕は促すと。彼女は何かを決心したように一度深呼吸をし。
「……妹を……メルティナをどうか、一緒に連れて行ってあげてほしいのです。 できることならば……あなた方の家族として」
アミルさんは泣きそうな表情で肩を震わせるようにそう言った。
「……メルティナを? どうして」
「メルティナは、赤ん坊の時に森に捨てられ泣いているところを私が拾い育ててきました。幼くして両親を亡くした私にとって、あの子はたった一人の家族であり、妹でもあり、娘のような存在です。 あの子もきっと私を姉として慕ってくれているのでしょう……それはとてもうれしい……ですが……それと同時に、私ではあの子の親にはなってあげられない」
「アミルさん」
「あんなにあの子が大人になつくのは初めてなんです。 セラス様とラクレス様に、あの子はきっと親というものを感じているのでしょう」
「そんなことは……」
「あの子のことは私はなんでもわかっているつもりです……本当は、本当は離れ離れになんてなりたくないし、また一人ぼっちになってしまうのはとても寂しいです。 ですが……私と一緒にいるよりも、あなた達と一緒にいた方があの子は幸せになれる。 あの子を育ててきたからこそ、痛いほどそれがわかってしまうんです」
アミルさんは一つ、祭りに似合わない雫をほほに伝わせながら懇願をする。
セラスとメルティナの方を見ると……そこには無邪気に笑いあう二人の姿。
「……………わかりました」
二人の笑顔とアミルさんの涙の願い。
断る理由を僕には見つけることができなかった。
■
「本当に何から何まで、ありがとうございました」
「うむ、世話になったな」
頭を下げるアミルさんと村人たちに見送られて、僕たちは祭りの次の日に村を出ることにする。
綺麗な森に静かな生活。
僕としてはここでセラスとメルティナの三人で静かに暮らすことも大賛成ではあったが。
セラスとしては新婚旅行を続けたいとのことであり、僕たちはアミルさんにこの辺りの情報を貰ったのちに早々にたつことにした。
「……しかし、本当に良いのでしょうか? あのようなものをいただいてしまって」
アミルさんはそう困惑をしたような表情を見せると、心配そうに背後で村の子供たちと遊んでいる巨大なゴーレムを見る。
「構わぬ……交渉とワタアメの対価だと思うがよい」
満足げに笑うセラス。
結局保留にしていた村との取引で提示をしたのは、僕とセラスが暮らす家をこの村に建ててもらう代わりに、村の護衛を引き受けるという契約であり、アミルさんも村の人たちもいやがる顔一つせずに僕たちをその取引を受け入れてくれた。
あのゴーレムは、新婚旅行に出かけてしまう僕達の代わりに村を守るようにセラスが作り上げたもの。
【グレータージャイアントゴーレム】第十階位魔法によりつくられたあのゴーレムは、並みなドラゴンなら単騎で撃破ができる性能を持つため、村の護衛としては十分すぎるほどだろう。
当然家一つと釣り合う代物ではないことは確かだが、それでもかまわないと笑うセラスを見るに、どうやらこの村をいたく気に入ってしまったようだ。
「本当に……ありがとうございます」
重ねてお礼を言うアミルさんは言うと、その後で不安げにメルティナへと視線を送る。
「……お姉ちゃん」
僕たちと一緒に旅に出ると聞いたときは、大喜びをして跳ねまわっていたメルティナであったが……いざ旅立ちの時になると、泣きそうな顔で肩を震わせる。
その表情は奇しくもアミルさんそっくりであり……二人が本当の家族なのだということが伺える。
「ラクレス様とセラス様の言うことをちゃんと聞くのよ。 悪いことしたら……お姉ちゃん、どこにいても駆けつけて…………げんこつするからね……」
「…………うん。行ってきますお姉ちゃん」
今にも泣き崩れそうなアミルさんではあったが、必死に唇を噛んで耐える。
メルティナの出発を邪魔しないように……いかないでと叫びたいのを必死に抑えているのが伺えた。
「いこう……メルティナ」
「はい……ラクレス様」
メルティナの手を引いて僕たちは村を去る。
「「「ありがとうございましたー、ラクレス様―! セラス様―!」」」
村の人たちから贈られる感謝の言葉。
今まで一度も得ることのできなかったその温かい村との絆は、隙間だらけの僕の心を埋めてくれる。
「嬉しそうだな、ラクレス」
「そう?」
「あぁ、口元がほころんでおるぞ。なぁメルティナ?」
「はい、ラクレス様とっても嬉しそう!」
自分の頬に触れてみると、確かに口元がほころんでおり、胸に潜んでいた寂しさも気が付けばどこを探しても見当たらなくなっている。
「……そっか、居場所ができるってこんな感じなんだね」
「そうだ……そして未来永劫その居場所は奪われることはない」
メルティナとつないでる手と反対の手をセラスは指をからませて握る。
「セラス……ありがとう」
全てを与えてくれた彼女に……僕を幸せにしてくれた彼女に贈る言葉はそれしか見つからず。 そんな陳腐な言葉でさえも彼女は嬉しそうに微笑み。
「まだまだ新婚旅行はこれからだぞお前様……共に、いや三人で存分に楽しもうではないか!!」
そう言ってどこまでも澄み渡る青空にその声を響かせた。
【次の目的地……聖女幽閉都市水の都・ヴェルネセチラ】
面白かった、続きが読みたい! と思っていただけましたら評価、ブクマ、感想どしどしお願いします!




