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6.「来世の結婚」

しばらくして落ち着いたところで、2人は芝生の上に腰を下ろし、向かい合った。

シェインはリアから一瞬たりとも視線を外さない。そして話し始めた。


「リア、僕がカーサの使いで来たと言ったのは、お前に渡すように言われてきたものがあるからなんだけど、お前の話を聞いたら、ただ渡して戻るわけにいかなくなった」


そう言うとシェインは、制服の懐から小さな箱を取り出した。

リアが蓋を開けてみると、水晶の原石だ。その形が変わっていて背丈の少し違う2本の小さな結晶柱が並んでおり、その姿はまるで、仲の良い恋人が寄り添っているかのようにも見える。


「珍しい形・・かわいい。これは水晶ね。紫が入っているから紫水晶かしら。これってカーサ様からの贈り物ってこと?」


カリア王朝では、水晶が産出するため、色々な物に利用される。

小さなものは宝飾品やアクセサリーの加工品、原石のままの結晶も一般的な贈り物の1つだ。又、呪術や魔術学の分野でも水晶はよく使われる。リアたち巫女にも水晶はなじみがあるものだ。


「ああ、そうだろうな。で、ちょっといいか」


シェインは騎士であると同時に、優れたシャーマンの家系でもある。リアとは違うアプローチだけれど、見えないエネルギーを感じ、扱うことができるのだ。


「これは・・」


シェインが眉をしかめる。


「奴の本気だな・・。術がかかっている。これは・・まずいな」


王太子もエネルギー使いなのだ。


「この水晶にはカーサの術エネルギーが入っている。強い想いが入った石は時を超えるんだ。この石は、来世で生まれ変わったお前の元にある日やってくる。そして来世でもカーサの魂をお前の元に引き寄せるだろう。石の作用で、お前も奴に会ってすぐ親近感を抱くはずだ。そして男女の関係になるだろう」


・・・何だかちょっとゾクッとした。時を超えて執拗に追い掛け回されるなんて、まるで・・。


「・・ストーカー・・」


リアがつぶやく。


「なんだ?それ。すとーかー?」


シェインが怪訝な表情で問う。


「・・え・・何だろう。私言ったよね?無意識に口から出たんだけど・・」


リアも首をかしげる。2人には意味を成さない言葉だった。


「とにかく。このままじゃ、奴の思惑通り、来世のどこかで奴につかまることになる。本心からでないとはいえ、王太子の求婚に「はい」と言ってしまったことで「来世の結婚」という魂の契約が結ばれてしまった」


リアは青ざめる。あの口約束だけで本当に来世での結婚の約束が成立してしまったのか。


何ということ・・。そんなリアを痛ましい目で見やりながら、シェインは、王朝に伝わっている「来世の結婚」の伝承について説明する。


「その契約はお互いの口約束だけで成立する。2人の愛が強ければもちろん、それだけ契約も強くなるが、気持ちの伴わない口約束でも、契約はできてしまう。だが、その約束の“来世”はそう簡単にはやってこない。何千年も先の未来で、しかも2度はないと言われている。チャンスはほぼ1度きりということだ。


奴とお前が同じ時に生まれるとしたら、因縁の強い僕も、かなりの確率でその時に生まれるはずだ。だけどその来世で又、奴とお前を争うなんてまっぴらだ。そもそもお前は僕の片割れなんだから。お前と僕は元々一つの魂なんだよ。僕の魂がそう告げてるんだ」


「・・シェイン・・ちょっと衝撃的な情報が多すぎるわよ?!てか片割れって何なのよ?!サラッと言ってくれちゃって!」


「・・リア、お前、何か口調がいつもと変わってないか?」


「シェインに突っ込まれちゃったわね」


又、口からふっと出た自分の言葉にびっくりする。え?突っ込まれる?・・・これは間違いなくリアの言葉ではない。確かに何かが変だ・・一体私に何が起こっているの・・?

巫女であり、エネルギーに敏感なリアですら、この時点で何が起きているのか全くわかってはいなかった。

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