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46.再開した世界

20秒前の世界が再び動き出した。


シェインが口づけをしようとリアの方に身体を傾ける。しかし、その瞬間、彼に黒いエネルギーの渦が届いた。シェインは、


「うっ!」


と呻いて地面に倒れこんでしまった。リアが悲鳴をあげる。


「シェイン!シェイン!しっかりして!」


アリスも駆け寄った。アーサスとゲネルは剣を抜き、辺りを見に走る。


シェインは動かない。やっぱり、あの程度の光じゃ無効化できなかったのか・・?皆が息を詰めてシェインを見つめる。リアはもう泣き出していた。


アーサスとゲネルが戻ってくる。


「周りには誰もいない。カーサがいたとしても、もう逃げたらしい」


アーサスが言う。その時、声がした。


「じゃあ、もう起きても大丈夫だな?」


シェインが顔を上げて笑っている。


「シェイン!シェイン!」


リアはホッとして彼に抱き着いて泣き出した。シェインは彼女を宥めるように抱きしめる。


「大丈夫か、シェイン」


「ああ、大丈夫だ。術の衝撃は喰らったが、それだけだ。意識も失っていない。おそらく完全に無効化できたんだと思う。・・成功したよ、リア」


そういうと、まだ泣いているリアの髪の毛に口づけをする。


「そうか。全部うまく行ったんだな。よかった。本当に時間は止まったのか」


「ああ。リアの、異次元からの助っ人たちがやってくれた」


「なんだかまだ信じられねーけどな。でも・・成功なんだな」


「カーサは間違いなくあの木の陰に潜んでいたわ。私の張った網にひっかかった。カーサだとエネルギーでわかった。だからそのまま式を続けたのよ」


アリスが言った。


「うまく行くと皆を信じてた。本当によかったわ・・」


アリスがまだ泣いているリアの頭を撫でている。信じていたとは言え、一瞬本当にシェインがやられてしまったのではないかと思ってショックを受けたのだろう。無理もない。


かわいそうなことをしたけれど・・。彼女がここまでショックを受けた姿を、カーサは目にしたはず。おそらく、自分の術が成功したと信じ込み、しかもリアを苦しめることができて、満足しているだろう。そういう意味ではリアのショックも報われたと思えるといいのだけど。


「カーサのあのレベルの術をまともな状態で、あの距離で受けたら、3日は意識が戻らないでしょうね。あの術は命を奪うものではないけれど、闇のエネルギーが強すぎて、しばらくは健康を害すると思うわ。それもきっとカーサは狙っていたでしょうね」


アリスは解説する。


「そうか・・。じゃあ、明日から3日間、体調不良で職務を休むことにするよ」


シェインが言い出した。


「そうだな。その方がいい方に動くかもしれねーな」


アーサスが言う。


「巫女と結婚式なんか挙げて罰が当たったんだ。ってことになって、その件がうやむやで終わるかもしれないだろ?」


「そう都合よくいくかな」


ゲネルが首をひねる。


「とにかく、騎士団には高熱を出してうなされているって言っとくぞ」


「ああ。頼む。そう伝えておいてくれ」


シェインは腕の中でまだしゃくりあげているリアに顔を寄せた。耳元でささやく。


「リア、落ち着いた?心配させてごめん。本当に今日は謝ってばかりだな。結婚式の日だというのに」


「謝ってばかり?シェイン、他に何したんだよ?」


アーサスが耳聡く聞きつけ、すかさず突っ込む。シェインは


「いや、ちょっと・・」


と口ごもり、赤くなった。それを見たアーサスは、


「赤くなったぞ?もしかして良からぬことを・・」


「アーサス!」


シェインがアーサスの口を塞ごうと飛び掛かる。アーサスはそれをかわし、


「図星か!」


と更にからかう。シェインは立ち上がり、アーサスを追いかけ始めた。


「何やってるのよ、もう」


アリスが呆れたようにつぶやく。するとリアが、クスクス笑っていた。


「よかった。落ち着いたわね。シェインのあれは仕方なかったのよ」


「わかっているわ、アリス。頭ではわかってた。でももし本当に彼が死んじゃってたら?って思ったら怖くてたまらなくなったの。せっかく愛する人と心が通じたのに、その愛を失ったら、私は生きて行かれないわ」


そう話すリアの後ろから、いつの間にか戻って来たシェインが抱きしめる。


「リア・・。本当にごめん。結婚式の日にそんな悲しいこと言わせるなんて、夫失格だ。でも、忘れないで。何があっても、君が僕の愛を失うことだけは絶対にない。


たとえ僕が先に死ぬことがあっても、僕の愛は変わらず君のものだ。絶対にそれだけは信じていてくれ。だから生きて行かれないなんて言うな。何があっても生きてくれ。僕に、約束してくれないか」


リアは振り向いてシェインを見つめた。又新たな涙が流れ出る。でもさっきとは違う涙だ。


「私こそ、ごめんなさい。シェイン。わかったわ。何があっても絶対に生きる。天命を全うするわ。だから、あなたも同じことを約束してね」


「わかったよ、リア。約束する。だけど、今は一緒に生きることを約束しよう。愛してるよ。ちなみに、明日から3日間、僕は絶対安静だから、お見舞いに来てくれてもいいよ」


「な、何言ってるの、騎士団の宿舎なんて行かれるわけないじゃないの!」


「大丈夫、昼間は誰もいないし、ゆっくりすごせるよ」


「おい、シェイン、お前いい加減にしろよ?こいつってこんな奴だったか?すっかりリアに骨抜きにされたな?」


「お前も真実の愛に巡り合ったらこうなるさ」


「だから、それをいい加減にしろってんだよ!」


終わらない言い合いに皆こらえきれずに笑いだした・・。


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