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3.リアの憂い

リアは寝床から体を起こした。


「今の夢は何だったのかしら・・」


腰まで伸びた美しい黒髪が流れる。


リア・コードレイ、巫女、18歳。


夢を解釈するのは得意だが、昨夜見た「夢」はよくわからない違和感があった。

果たして夢と言っていいのか迷うほどに。


見たことのない小さな空間。

そこはやはり見たこともない物が一杯で、

その中の寝床と思しき物に見知らぬ女性が一人寝ていてこちらを見ていた。


(誰・・?そこで何しているの?そのせまい場所は牢獄・・?

閉じ込められているの?)


目を覚ます直前、その女性が何かを言ったように思うが、理解できなかった。


「どこか遠い外国の人かしら?・・初めて見る姿だったし。

エネルギーも私たちとは全く違う感じだったわ」


リアは普通の人が見えない領域の物が見え、感じられる能力の持ち主だ。

だからこそ、このカリア王朝内第一神殿の巫女になれたのだ。

まだ見習い中の身ではあるが、その能力が、夢で目にした空間と女性は、

自分たちとは異質の存在だと伝えていた。自分はどこの誰に繋がったのだろうか?


何よりリアが気になったのが、その女性がひどく辛い想いを抱えている、

とわかってしまったこと。

全く異質な存在のようなのに、彼女から感じた感情は、

今のリアと、とてもよく似ていた。

だから、彼女は牢獄にいて、逃げられない状況なのかと思った。

リアは今精神的に、正にそういう想いだったから。


「神殿でご神託を受けてみたい気分だわ」


巫女自身が個人的なことを聞くのは禁じられているのだが、切実にそう思った。



リアは身支度を整えて自室から外に出る。

第一神殿は宮殿の敷地内に併設されている。


リアの幼い頃は両親と宮殿の外の城下町で暮らしていたけれど、

10歳から将来の巫女候補生としての教育所に入り、16歳で、そのまま神殿に入った。

広大な城内一帯が主な生活圏である。

巫女は世俗にまみれることは良しとされないので、

今は城外に出ることはめったにない。


神殿への道を歩いていると、


「リア」


と後ろから声をかけられた。


「シェイン!」


その声で誰かすぐにわかって満面の笑みで振り向く。


シェイン・フォリスタはリアの従兄で5歳年上の幼馴染。

幼いころからリアの面倒をよく見てくれる兄のような存在だ。

本当の兄はいるが、それよりよほど優しいのでリアは大好きだった。

騎士団に所属していて、先ごろカーサ・ワイ・マナリンド王太子付きの

専属騎士に任命されたばかりの若手のホープ。


白銀色の長い髪を後ろで束ねている。

瞳はスカイブルー、空の色。

騎士団の制服の紺色の上下を身に着け、剣を腰に差している。

朝から完璧すぎる。


同僚巫女たちが大騒ぎするはずだわ、と内心思いながら、

リア自身も見惚れていることに気づいていない。


「これから神殿に出勤か?」


シェインはいつもの優しい笑みを浮かべて聞いてくる。


「そうよ。シェインがこんな時間にこんなところにいるなんて珍しいのね」


「ああ、実は・・カーサ様の使いでお前に用があって来た」


この言葉を聞いた途端、リアの表情は曇った。昨日の出来事を思い出したからだ。

その変化をシェインは見逃さなかった。


「どうした、リア」


「うん・・カーサ王太子に昨日ね・・」


言葉に詰まったリアに、


「場所を変えて話そう」


とシェインが先に立ち歩き出す。

2人は神殿への道から逸れた脇道をしばらく歩き、

木立の中にある静かな池のほとりにたどり着いた。

ここはリアとシェインが落ち合う時に来る2人だけのなじみの場所だ。


「ここなら大丈夫だ。めったに人は入って来ない。・・何があった?」


真剣な目でこちらを見つめてくるシェイン。


「あのね・・昨日突然カーサ様が神殿に来たの」

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