28.リアとアリスの作戦会議
ラドゥとナイーシャと会って聞いた話を、リアは翌日即行でアリスに話した。もう隠す必要はない。ラドゥにも協力を仰げと言われたくらいだし。
まぁ打ち明けられたアリスの方は「やっぱり聞くんじゃなかった・・。」と頭を押さえてうめいていたが。
とにかく、作戦会議をその夜、夕食を一緒に取りながら、リアの部屋で開こうということになった。
*
ノックの音がして、リアはドアを開けた。
「アリス、いらっしゃい。今日はありがとう」
「お邪魔します。いいわよ。これ、差し入れ」
そう言ってアリスはおいしそうなパンのはいったかごを差し出した。
「わぁ、ありがとう!アリスが焼いたパン、おいしいんだよね。今日はシチューよ。待っててね。すぐに出すから」
2人は、協力して夕食のお膳を準備し、すぐに温かいシチューとサラダ、パンが並べられた。
巫女たちは原則的に自炊で、毎食自分で料理する。神託を下ろすのに肉食は厳禁のため、2人とも肉は食べない。毎日忙しく、あまり、誰かと一緒に夕食をとることはないため、今夜は久しぶりのにぎやかな夕食。考えるべき問題はあったが、ひとまず2人はこの時間を楽しむことにした。
「いただきまーす!・・わぁ、やっぱりアリスのパンおいしい!シチューとすごく合うわね」
「よかった。喜んでもらえて。シチューもいい味よ。野菜だけとは思えない出汁がでていておいしい」
「嬉しい。たくさん食べてね。それにしても、アリスって料理も上手で、いいなぁ。絶対いいお嫁さんになれるタイプよね。ねぇ、なんで巫女になったの?好きな人とかいなかったの?」
ぶっ!とアリスが真っ赤になってむせる。
「な、なに言い出すのよ、突然!もう。好きな人なんていなかったわよ。あなたと違ってね。私の場合、巫女になるのはもう生まれた時から決まっていたことだったの。幸か不幸か、うちの家系はかなり強烈な巫女の資質に代々恵まれていてね。次に女の子が生まれたら必ず巫女にって神殿から言われていたのよ。で、生まれたのが私」
「そうだったんだ。私は叔母様に薦められはしたけど、一応自分で決められたのよね。色々な人がいるんだね。当たり前だけど、考えると不思議な気がしてくるわ」
「でも決め方はどうであれ、きっと、神殿にこの時に巫女として勤めて出会っているのは、きっとそういうことになっていたんだと思う。偶然じゃないはずよ。あなたと私が友達になってこんな話をしているのもね。」
「そうね。色々な選択の結果、出会っているのよ。そうだ、私の未来世だというラドゥは、彼女の魂の記憶では、自分がリアの人生を生きていた時、あなたとは友達にならなかったんだって。だから、彼女の過去の記憶とは、今はもう違ってきているのよ」
「へぇ、そうなんだ。なんだか不思議ね。私たちけっこうすぐに仲良くなったわよね?何がきっかけだったっけ?」
リアはお茶を用意するために席を立ちながら答える。
「忘れちゃったの?私が初日に遅刻をしちゃったのよ。緊張しすぎて寝過ごしちゃって。で、神殿まで全力疾走してる前を同じように走っていたのがあなただったんじゃない」
その時の様子を話しながら思い出し、リアは笑いだす。アリスも笑いながら、
「そうだったわね。私は新入生じゃなかったけどね。でもあれがなかったらもしかしたら今回も友達になることはなかったかもしれないわよ?運命を変えるためにお互いの魂が少しだけ目が覚める時間を遅らせたのかもしれない」
2つのティーカップにお茶を入れてリアが運んで戻ってきた。
「え?魂ってそんなこともするの?」
「するわよ。必要とあらばね。魂は私とあなたが今回友達になった方がいいと判断した。もしこのことが、以前と違うのだとしたら、私たちはきっと、運命を変えるために友達になったのよ」
「これからすることのために・・?」
「そう。シェインにかけられる術を無効化するために。きっと、これはもうあなたたちだけの問題じゃないのね。今朝の話を聞いていて、そんな気がしたわ。この地球、ううん、宇宙全体にとっての問題なのよ。人間の念とか想いとか術って良くも悪くもそのくらい本当は力があるの。下手すれば宇宙を破壊してしまうくらいね」
「・・そうなんだ・・。怖いのね。人間であることってそんなに責任のあることだったんだ」
私たちの想いで地球や宇宙が壊れてしまうかもしれないなんて・・。でもそう考えると、ラドゥたちがこんなに複雑で大変なプロジェクトを始めたのもわかるような気がする。
「ラドゥたちは宇宙の安定を取り戻そうとしているのね」
「そうね。それに近いと思う。とりあえず、カーサ様が術をかけるのを邪魔する、ということなら、少なくともカーサ様の遠征部隊が帰還するまでは何もできない。今できるのは、シェインが無事に帰ってくるように祈ることくらいよね。遠征部隊が帰還するまで、どうやって監視するか、もう少し時間があると思うからお互いに考えてみよう」
リアは頷く。
「それはそれとして、瑠璃子って女性に、そのラドゥが言ったことを伝える方法ってあるの?彼女の片割れに光を送って、とか」
アリスが当然の疑問を口にした。
「今のところ、ないの。でも、ラドゥは近いうちに彼女とも通信できるようになるって言ってた。後ね、今回のことが始まってから、ちょっと変な感覚が続いているの。
すぐそばに誰かいて私の話を聞いていて、私が見ているものを一緒に見て、私が考えていることも聞いている感じがするようになったの。時には、私が知らない言葉がふっと口から飛び出したりするの。奇妙で怖いって思ったりしたけど、でも闇の要素は感じないの。
もしかしてこれって瑠璃子?って。瑠璃子が私と一緒に体験してるんじゃないかしら。だとしたら瑠璃子はもう全部知ってるはずよ。私たちは同じ魂なんだから、可能性はゼロではないわよね。これも魂の仕業じゃないかしら」
「なるほど。今回のプロジェクトは、瑠璃子がとにかく片割れに出会うことが一番の鍵なんだから、彼女を中心に動いているのは確かでしょうね。じゃあ、とりあえず彼女のことは心配せずに、私たちは私たちにできることをしていこう」
アリスはお茶を飲み干して立ち上がった。ひとまず今夜の会議はここまでのようだった。




