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27.私の感慨

「・・そろそろいいんじゃない?」


私が寝そべったような姿勢で、誰かにそう言っている。相手は男性だというのはわかる。けれど、顔は全くわからない。その人も私のすぐそばで寝転んでいる。どこかの部屋の中。2人でテレビでも観ているかのような雰囲気。私はその人に手を伸ばし、彼の手を握ってもう一度言う。


「もうそろそろ会えるよ。大丈夫だよ。もう準備はできてる」


なんで?もう会えるよって・・会えてるじゃない?


そのビジョンにツッコミを入れていたら、意識が急速にはっきりしてきた。


あぁ、私はまだ東京に向かう夜行バスの中だった。もうすぐ目的地の池袋に到着するらしい。カーテンの外も明るくなっている。


今のビジョンは何だったのだろう。妙にリアルで実感を伴っていた。顔は見えなくてどんな人かは全く分からなかったけど、彼と一緒にいる空間はとても心地よくて安心感に満ちていた。

もしかして・・これって片割れと一緒にいる時の感覚に近いものでは?私は自分の片割れと魂での初コンタクトをしたのではないか?


私はこれまでにないそのリアル感に、妙な確信があった。「彼」が近づいてきている・・。1人バスの座席でドキドキしていた。



ほどなくバスはターミナルに入る。あぁ関東に帰ってきたなぁ。私は感慨にふけりながら、ちょっと離れた池袋の駅まで歩きだす。早朝なので行きかう人も少なく、考え事しながら歩いてもぶつかることもない。


朝の空気が気持ちいい。・・なんだか関東の空気の方が重苦しさがない。楽に息ができる感じがするというか・・。さすがにそれは私の関西苦手意識による錯覚なんだろうとは思うけどね。でもやっぱり清々しい感じがする。



駅に着いてすぐに電車に乗らずに、早朝から開いているカフェでもう少しだけ久しぶりの東京を楽しむことにする。


コーヒーとマフィンを食べながら外の雑踏を眺めていると、関西での日々がなんだか夢のように感じられてくる。そうでなくても、このところの一連の夢のおかげで、夢と現実の区別があいまいになってきているのだ。私は何と言っても夢を通して「過去」も生きているわけだし。


リアの時代と私の生きている今とラドゥのいるという、遠い未来の世界。今、夢でとは言え、この3つの時間と空間、人間が繋がって動いている。あ、全部「間」って字がつくんだ。私はなんだか哲学的な発見をした気になる。


そうだよね。これって「あいだ」とか「はざま」って読む。この全ては、単独では成立しないもの。時間も空間も人間もそれぞれが相互に繋がりあって作用しあって歴史を紡いでいく。そして、その複合体を「運命」って呼ぶのかもしれないなぁと思う。


運命は正しい「時」「場所」「人」が揃わないと動き出さないというしね。しかも、それぞれ「はざま」があることによって、「変更」「変化」「選択」の余地は本当はいつもあるものなんだろう。


今まで運命って絶対に抗えないもの、変えられないものというイメージがあって人は運命の前には無力って思っていたけど、それは真実じゃなかったのかもしれない。そんな風に考えると、人生に対する視点もちょっと変わってくる気がする。


しかもその3つの「間」は、全て繋がっているわけだから、どれか1つが動けば(変われば)、全部が動くということで。ちょっとした選択がきっかけで、運命がガラッと変わってしまうのはそういうことなんだろう・・。私は通勤ラッシュの始まった池袋駅前カフェで、ひとしきり「運命」について思いを馳せたのだった。



さて、そろそろ実家に戻りますか。あんまりゆっくりもしていられないのだ。


予定滞在時間は1週間。この間に不動産屋を回り、部屋を決め、必要なことを済ませる。よし、そろそろ現実世界に戻るぞ、しっかりしないと。私は気合いを入れて席を立った。


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