11.ラドゥとの出会い
「リア、ですね?」
「な、何で私の名前を知っているのですか?あなたは誰?!」
その光の女性は笑ったようだった。そして
「私は・・ラドゥ。未来のあなたです」
「・・未来、の・・私・・?!」
「そんなに驚くことですか?あなたも来世は信じているでしょう?」
ラドゥと名乗った光人の女性は、リアのことは全部知っているようだった。
リアは衝撃が大きすぎて、とにかく彼女の言葉の理解できた部分に反論を始めた。
「でも、来世はまだ起きていないのだから、未来の人間に会えるわけがないでしょう?」
「地球では時間は一方向にしか流れないものとされているのでしたね」
ラドゥはにこやかな声音で続ける。
「地球の外では時間はどの方向にも進めるのです。そして過去も現在も未来も同時に存在しているのです。それが宇宙の常識なのですよ」
(・・私はつまり地球の外、宇宙空間にいるということ?)
又リアのパニックの気配を感じたのか、ラドゥが宥めるように言う。
「体はちゃんと神殿にあります。今のあなたは魂、と言えば理解しやすいでしょうか。大丈夫。ちゃんと戻れます。私が今日こういう形であなたに会いに来たことは、確かに通常ではありえないことで、ショックを受けるのも無理のないことです。でもどうか話を聞いてください。あなたにとっても私にとっても、とても大事なことなのです。・・今あなたが抱えている問題にも深く関わっています」
ラドゥの言葉を聞いて、リアはハッとした。
「どういうことなのですか?カーサ様のこと・・一昨日からのことに関係があるということ?」
「そうです。信じられないとは思いますが・・心を開いて聞いてください。まず私は・・未来のあなたですが、今の私は地球人ではありません。地球ではない星に生きている。あなたから見たら宇宙人、と言える存在です」
のっけからその言葉は、リアの理解を軽くとび超えてきた。
「地球を卒業したら、地球からは制限がかかっていた情報も見られるようになります。私たちは、魂の記録を読むことができます。だからリアとして生きていた前世や、あなたのこともわかるのですよ。これが宇宙では普通のことなのです」
地球の他に人が生きているなんて考えたこともなかったが・・言われてみれば広大な宇宙で地球だけに人がいることの方が奇妙なのかもしれない・・リアはそう思った。
「分かりました。大丈夫です。続けてください。後でまとめて驚くことにしますから」
リアの冗談にラドゥがちょっと目を見開いた。
「リアってそんなに肝が座っていたかしら・・既に少しずつ変化が始まっているのかもしれないわね」
「変化ってなんのことですか?」
「順を追って話します。今、私があなたに接触していることは私の魂の記録にはありません。つまり、今回が初めての出来事になるのです。」
「え?それってつまり・・」
「はい。過去が変わります。過去を変えるために私たちは今出会っているのです」
「か、過去を変える?!」
「運命を変えると言い換えてもいい。あなたにとっては過去ではなく、現在と未来ということになります。そして私にとっても過去を変えることで、今と未来が変わることになるでしょう。そうする必要があるのです」
ラドゥは早口で続ける。
「もうすぐ瞑想の時間が終わるでしょう。あなたも体に戻らなければなりません。今後は神殿でなくても瞑想してここに来れば私に会えます。それができるように私とあなたの時空を繋ぎましょう」
そう言うと、ラドゥの体の光が一層強くなったかと思うと彼女の頭の後ろから明るいスカイブルーの光の帯が立ち上がり、リアの方に流れてきた。そしてその光がリアの体を包み目の前がスカイブルー一色に染まりやがて少しずつ消えていった。
眩しさに目を閉じていたリアが目を開くと、まだ目の端にスカイブルーの光がある。その光はリアの胸元から発していた。いつのまにか光は小さくなってリアの胸元で光を発している。驚くリアにラドゥは言う。
「今の光が凝縮して物質化したもので、光石と呼ばれています。これがあなたと私を繋ぐ通信機の役割を果たすでしょう」
そのスカイブルーの光を見てリアは思わず
「この色、シェインの瞳の色だわ・・」
とつぶやいた。それを耳にしたラドゥはにっこりした様子で
「未来のシェインと私からの贈り物ですよ」
と言った。
「やっぱり未来でもシェインとは一緒なのね?!」
大きな喜びの感情がリアを包む。
「もちろん。私たちは片割れ同士なのですから。でもまずあなたとシェインは未来の地球で一緒になるという「来世の結婚」の約束を果たして、その契約のエネルギーを解放しなければならないのです。」
「・・もし、それができないとどうなるの?」
「果たされない契約エネルギーは障害になります。そのせいで、魂がその先に進むことが難しくなり、魂の計画が滞る。ある程度は織り込み済みですが、最近、この滞りが魂の軸に歪みを生じさせ、放っておけば、周辺一帯の時空次元にもその歪みが広がっていくことがわかりました。この種の歪みは、放っておくと、宇宙全体に影響が及ぶ可能性があるのです。」
リアの想像もしていなかった壮大な話になり、どう考えればいいのかよくわからない。
「私たちは、定期的に過去の転生地を観察しています。今回、地球上での自分の魂の記録に異変を見つけたので、ここまで来たのです」
ラドゥの仕事は何なのだろう。リアは不思議に思った。
「ところで、「来世の結婚」を果たす可能性のある未来、その未来世のあなたである女性と、もう接触していますね?」
そう言われてリアはハッとする。
「あの夢で見た女の人ね?あの人も未来の私・・」
思わず物思いに入りそうになったリアだったが、ラドゥの声が引き戻した。
「もうあなたは戻る時間です。続きは次に会えた時に・・」
その言葉が合図となってリアは深い瞑想から覚めた。目を開くと神殿内の瞑想室だった。




