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10.リアのいつもの朝・・?

リアは神殿へのみちを急いでいた。


又一日が始まる。今日という日は、昨日までと全く同じようにみえるのに、実はもう同じなどではありえなかった。


この数日でリアに起こった出来事が、これまでの世界を打ち壊したように感じていた。

シェインと想いが通じたことは思いがけない喜びだったけれど、王太子のことがその幸せな気分に影を落としていた。手放しで喜んではいられない気分だった。


この一連の出来事にはもっと何かがある気がする。あの、異世界の住人のように見えた夢の女性のことも気になっていた。


しかし、リア一人で抱えるには複雑すぎる問題だった。シェインとはお互い職務があるのでそう自由に会うことはできないし、かと言ってこんな話、仲の良い巫女仲間のアリスにだって相談できる話ではない。加えてリアは、何かから早急に行動を起こすように急かされているような気がしていた。


「でも何をどうすればいいのか・・全くわからないのよ?」



リアは足早に神殿に入り、一番奥の部屋に進む。そこがカリア王朝第一神殿に祭られている女神の祭壇で、リアのような若手の巫女はまず女神様への供物や花などの上げ下げ、祭壇や神殿内の掃除をする。掃除が終わったらその日のご神託を下ろす先輩巫女の補助。それが済んだら、続いて個人的に神託を求める人たちを案内する。


リアはまだ神託を下ろす仕事はさせてもらえない。これら一通りのことが済むと昼休みだ。午後からはリアたち新人は巫女としての能力を高めるための授業がある。そこで瞑想や舞い、祝詞、神託などを学ぶ。


リアは今日は、瞑想の実習の予定なので、瞑想をするための少し暗い部屋に入る。


「リア、こっち」


同僚のアリスと一緒になった。アリスはなんだか意味ありげな笑みを浮かべてリアに顔を寄せてくる。


「リア、昨日シェイン様と一緒にいたでしょう」


「え、何で知ってるの?」


「チルザが見たと言っていたの。あ、でも大丈夫よ。先輩方にはバレてないから。新人の巫女は身内の男性と親しく話すのもご法度なんてひどいわよね」


「ちょっと緊急の話があったのよ」


深刻な顔のリアを見てアリスも真顔になる。


「ご実家で何かあったの?」


心配してくれるアリスに努めて笑顔をつくってリアは言う。


「ううん。両親は元気よ。先週手紙も来たし。そうじゃなくて・・。ちょっと今は話せない事情があるの」


「そうか。わかった。これ以上聞かないわ。でも・・私にできることがあったらいつでも言ってね?」


アリスはそう言ってポンと肩をたたいた。彼女の友情にはいつも救われている。


教師を務める巫女が入ってきた。授業が始まる。リアとアリスも正面を向く。

リアは見習い巫女で神託は実習すらしたことがない。けれど瞑想は何度も行っていてしかもかなり優秀だった。自分が無になって何もない空間にぽっかり浮かんでいる感覚になる瞬間があり、それが好きだった。今瞑想することで心の静けさを取り戻せるかもしれない。



瞑想が始まり、リアも瞑想に入った。すぐに深い瞑想状態に入り、心が落ち着いていくのが感じられる。いつものように何もない空間に浮かんでいる感覚が来た。


真っ暗なその空間の中では自分の体がどこからどこまでなのかもわからなくなる。


その闇の中に・・突然光の点が現れた。リアは戸惑う。


瞑想中にこういうものが見えたことはない。だがその光の点は消えることなく、それどころかだんだん大きくなって人型になった。


「な、何?」


その光の人型は、光り輝いていて顔はわからなかったが、どうやら女性らしいと

シルエットでわかった。その人の光のおかげで、リアも空間に浮かぶ自分の姿を見ることができた。


そして、その光人が話し出した時、リアは再度声を上げた。


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