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9.私の感銘

「・・おお。うたたねしちゃった」


15分くらいの間に夢の続きを観たらしいと気づき、私はこたつで体を起こす。


リアの話の続きだ。結局リアとシェインは想いが通じ合えたことを思い返しホッとする。


だけど、今回又不思議なことに気が付いた。言葉の件だ。


おそらくリアたちと私の使う言葉は全く違っていると思う。だけど、夢を見ている間、彼女たちの使っている言葉がそのまま日本語に、ダイレクトに変換されて耳の中に入ってきているような感覚があった。


でも吹き替えじゃなくてリアたちがちゃんと日本語をしゃべっているように聞こえるのだ。何という高等技術だろう。どういう仕組み?


それに、昨夜の夢よりも、今の方が、リアが近くにいた気がする。映画でいうと、カメラがかなり近づいて撮影されたような感じ。おかげで私にもシェインの顔がドアップでせまって見えてちょっと照れた。これは一体どういうことだろう・・?

よく眠る私だけど、さすがにこんな不思議な夢は見たことがない。


「そもそもこの時代はいつなんだろう。有史以前の超古代文明とか・・?でも日本じゃないよね?シェインって目が青いし銀髪だし・・」


昨日この夢を見てからというもの、リアたちのことばかり考えてしまっている。不思議で仕方ないけど、実際に見ているのだから実体験として受け入れるしかない。こんなこと言って夢に熱中しているのが、現実逃避に他ならないことは、私自身が誰よりもよくわかっているけど、なんだかこの行き詰まった現状への感情が、少し変わり始めた気がする。


私は山霧の件で、自分がこの上もなく不幸で呪われていると思い、人生に絶望していた。

未来なんて考えることもできなかった。けれど・・リアとシェインの話に、こんな私の状況なんて不幸と言えないのでは?と思わされた。


だって好きな人がいるのに、この生涯では結婚できないって、もう18とかでわかっていて、そのまま何十年と生きていかなきゃいけないんだよ?それはもしかしたら、結婚相手に出会えない辛さよりも大きいのではないだろうか。出会えない辛さには、それでもこれから出会えるかも、という希望はどこかにある。未来へ期待することは許されている。


だけど、リアたちには、愛する人と一緒になるという未来への希望は100%ないのだ。

どんなに努力しても変わることはない。その現実は彼女たちを打ちのめさないのだろうか。


時代が違うとは言え、20歳そこそこの若さにも関わらず、リアとシェインが見せた強さと使命感に私は強く感銘を受けていた。


・・リアと違って、私の人生にはまだ希望はあるんじゃないの?


山霧から離れ、店を辞めて半年、初めて私は未来について考え始めていた。そして、もう決して野次馬根性などからではなく、又このリアとシェインの物語を見せてくれるよう、淡く紫色の入った小さな2本の水晶に祈ったのだった。


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