小学校の入学式 (2)
「男性の方はこちらになりまーす!」
ここの学校の教員らしき女性と警婦さんが大きな声で呼びかけをしている。どうやら女の子と男の子は集まる場所が異なるらしい。僕は姉さんと別れると、そちらへ向かった。
扉には「男性のみ」と書かれており、ここで式が始まるまで待つようだ。
扉の前で母さんとマリアと別れ、スライド式のドアを引いて中に入った。
「おはようございまーす...」
中はなかなかに広く、玩具や有名な雑誌漫画などが置いてあってテレビもついており、ここは本当に学校なのかと疑ってしまいそうな部屋になっていた。
部屋は俺と同い年位の男の子が数人しかおらず、そして何故かとても重く冷たい空気に包まれていた。
どうしたんだ?
「...新しい下僕が来たようだな...」
ん?下僕?
その声がする方を向くと、目を瞑って足を組み椅子に座っている、ちょっと偉そうな態度をとった男の子がそこにはいた。
「クク、自己紹介をしな」
その男の子は、相変わらずの態度と格好でそう告げた。
「えっと、古月秋人です」
「クク、そうかそうか、古月か。俺も自己紹介をしてやろう」
僕が自己紹介をすると、その男の子も自己紹介を始めた。
「神から愛され...神から授かった...神にも匹敵するような美貌の持ち主...!俺の名はっ...」
いきなり訳のわからない自己紹介を始めた男の子は、名前を言おうというところで溜めに入った。
数秒間の間、ジーッと溜めた後、口を開いた。
「佐藤、黒雷だ...!」
「!?」
...ブラックサ○ダー...!お菓子...!圧倒的チョコ系駄菓子...!
「フフ、俺に合った美しい名前だろう?」
僕の息を呑んだ様な声に気を良くしたのか、黒雷君はさらに続ける。
「ブラックサ○ダー。漢字で書くと黒の雷...俺のこの漆黒の髪と、現れただけで雷のように辺りを一瞬にして明るくしてしまうような冴える美貌。俺にピッタリすぎる...」
黒雷君は僕の登場からずっと閉じていた目をカッと開き、僕に向かってビシッと人差し指を指した。
「そう!僕はとてもうつくしッ......!?」
それだけ言うと、黒雷君は石の様に固まってしまった。目が凄い開かれているから少し面白い顔になってしまっている。
「...どうしたのブラックサ○ダー君。固まっちゃってるけど」
「...ふざけるなっ...!」
「え?」
「君なんかよりも俺の方が美しいんだ!」
黒雷君は怒った様に言った。
...何?いきなり下僕って言われて次にナルシストな自己紹介されたと思ったら怒られんの?僕。
僕が本気で困惑していると、助けが入ったかのように扉がノックされた。
「しっ、失礼します。入学式が始まりますのでっ、外に出てくださいっ」
扉が開くと、そこには茶髪の意志が弱そうな女性がいた。彼女は僕たち男子の新入生に指示を出しに来たようだ。
...助かった。あのお菓子な名前の子は情緒が不安定なのかな?
偉そうな男の子の名前をブラックサ○ダー君に変更しました。