小学二年生 (2)
いやぁ...ハハ(苦笑)
小学2年生になって三ヶ月が経って、昨日から夏休みに入った。
去年の夏は近年稀に見る程の暑さだったそうで、熱中症患者がその前の年から倍近くにまで増えたらしい。その影響もあって、去年の夏休み、男の僕はいつもより外に出ることが出来なかった。
ただでさえ外が暑さで危ない上に、過剰な程に守られてる男が出れるわけ無いって言われればそうなんだけど、僕はず~っと家でテレビ見たりゲームしたりで正直退屈だった。男の子の夏といったら昆虫採取やろ...。
姉さんが時々遊んでくれたんだけど、それでも不満は出る。
友達と遊びに行ってる姉さんが恨めしかったよ...。
まあ僕には遊びにいくほど親しい友達いないけどね?
けど、今年は去年と比べて暑さは控えめ。多分外に出てもオッケー!
やっぱ小学生の夏休みといったら外遊びだもんね!
今年は遊ぶぞ!
「駄目です」
「あんまり外には出したくないかな...」
「なんで!?」
「危険ですので」
「やっぱり外は危ないから...」
マリアはいつも通りの無表情でキッパリとした物言いだが、母さんは僕の気持ちを察しているようで苦笑いだ。なのに首を縦に振ってくれない。
どうしようか...僕は今年どうしても外にでたい。去年のような夏にはしたくないのだ。
プールで泳いだりカブトムシ捕まえたりしたい!夏祭りに行って屋台のわたがし食べたり金魚すくいやりたい!花火を見たい!
ここでどうしてでも説得しなければ...。
...アレをしてみようか...上目遣い。
前世じゃあざとい系女子の常套手段で、その技の力を僕は味わったことが、その技の威力の高さは有名だ。やってみる価値はあるんじゃないかと思う。
...でも抵抗あるんだよな~。
男がやってもキモいだけじゃね?っていうね。
それに技の威力は使う人によって変わるし?
それやって引かれたら立ち直れないよ。
そんなマイナスな考えが僕の脳内に侵食していくが、それ以外の方法が思い付かない。
今は男っていうステータスに頼るしかない!
きっと許しがもらえる!
両手をキュっと握って顔の角度をちょっと下に。
けど目は相手の方を見て逸らさず、なおかつ涙目を意識。
くっ...恥ずかしいぞ。
「母さん、マリア、お願い...」
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「でけー...」
俺の目の前には、ここ周辺の市で一番を誇る大きさのデパートが建っている。
中に入ると、とても大きく開放的な空間が広がっていた。
市で一番というのは伊達ではないようで、ここしばらく大きなところに行っていない僕には感動ものだった。
僕が子供らしくワクワクしていると、回りの人が微笑ましい顔をしてこちらを見ていた。
外見は小学生でも中身は小学生ではないので、少し恥ずかしくなって母さんにぴとっとくっつく。
さて、僕はここに水着を買いに来た。
子供というのは成長が早いので、僕に合う水着が家に無かったのだ。というか、最後に行ったのがとても幼い頃なので、プールに行くのが決定すれば買いにくるのは必然だった。
どうやら姉さんも水着が無かったらしく、家族全員と、マリアが本社から呼んだ初対面のメイドのメイさんの五人で行くことになった。
ここのデパートはとても広いので、マリア一人では少々心配だったようだ。
メイさんもこの世界の例に漏れず美人で、髪の毛が明るい茶髪で軽くカールしている、可愛い系の人だ。
どうやらマリアの方が先輩らしく、マリアに対して敬語を使っていた。
...話は変わるが、水着を買いに来たということはそういうことだ。成功したのだ。上目遣いが。
効果は予想以上で、母さんが僕に抱き付いてきて、マリアは胸に手を当ててへたりこんだ。なんかよくわからんけどこの技は強いことがわかった。
ただやってる僕が恥ずかしいからもうやりたくはない。
「人いっぱい...」
こんな大型デパートであれば人は多く、その中に男がいればそこに視線が集まるのは必然的。僕は多くの女性からの注目を集めていた。
こんだけ見られると、正直怖いんだよなぁ...。
知らず知らずの内に母さんと姉さんの手を握っている両手に力が籠る。
すると、僕が怯えていることに気付いた母さんが、優しい手付きで僕の頭を撫でた。
顔を上げて母さんを見ると、とても優しい笑顔を僕に向けてくれた。
姉さんも僕をぎゅっと抱き締めてくれて、母さんの真似をするかの様に頭を撫でてくる。
「あっくん、大丈夫だよ~」
姉さんは僕を抱擁したまま声をかける。
僕は小学二年生、姉さんが四年生。小学生での二歳差分の身長の差は大きく、僕は姉さんの胸に顔を埋めているような形になる。
通路のど真ん中でやられると恥ずかしいけど、その分家族からの愛が伝わってきているようでとても嬉しい。心がとても温かくなる。
僕が落ち着いたのを見ると、二人とも解放してくれた。
マリアの方を見ると、マリアはいつもの無表情を少し崩し、笑顔を見せてくれた。
マリアの笑顔はとても珍しい。僕が産まれた頃からの仲ではあるが、無表情じゃない顔なんて片手で数えきれる程しかない。
そんなマリアの笑顔は、本当に綺麗だ。
...いやぁ、家族っていいね。
正気に戻って周りを見てみると、そこには嫉妬に顔を歪め、羨望と妬み嫉みの視線で僕たちを攻撃する人々がいた。
怖いよ。
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そんなこんなで無事水着を買って家に帰ってこれた。
どうやら水着を買ったのは僕と姉さんだけでは無いようで、母さんとマリア、さらにはメイさんまでもが買っていた。
プールに行くのは明後日なのだが、どうやらプールにはメイさんもついてくるそうで、僕を死ぬ気で護衛すると息巻いていた。死なれても困りますよ?
あぁ~明後日が待ち遠しい~...。
次回はプールへ




