おはよう
更新ペースは遅いです。
「秋人様、起きてください」
この家でメイドをやっているマリアが僕の体を揺らし、僕は目を覚ました。
カーテンの奥からは小さく小鳥のさえずりが聞こえる。
のろのろと遅い動作で体にかかっていた毛布を退かしながら起き上がって背を伸ばすと、ポキポキと心地よい音が聞こえる。
「おはようございます、秋人様。今日は入学式ですので、少々急いで支度をしなければ...」
「ん...わかった」
伸びを終えてだらんと体を弛緩させるとベッドから下り、スリッパを穿く。
カーテンの隙間からだだっ広い部屋に入ってくるほんの小さな日差しに、僕は朝から少し憂鬱になり、小さな溜め息をもらした。
何故かと言われれば、僕は雲ひとつない晴れやかな空よりも、少し曇った空の方が好きだからだ。
メイドのマリアと一緒に自分の部屋から出て廊下を渡り階段を下りきると、左にリビングに繋がる扉が現れる。その扉を開けるとリビングがあり、そこでは僕の姉である夏実が椅子に座って口にパンをくわえていた。
「おはようあっくん!」
「おはよう、姉さん」
姉さんは元気いっぱいの小学三年生。僕と二歳差である。
いつもいるはずの母さんがここにはおらず、そして姉さんは朝が弱いはずなのに、異様にテンションが高い。
「姉さん、テンション高いね。どうしたの?」
自分の席に腰かけて、既に置いてあった出来立てだと思われるトーストをかじりながら聞くと、姉さんは嬉しそうに答える。
「そりゃ勿論、あっくんの入学式だからだよっ!」
そう、今日は僕の小学校の入学式だ。
僕は左手で少し寝癖がついた頭を軽く掻くと、僕がさっき通った廊下とリビングを繋ぐ扉が音を立てて開かれる。
「あら、おはよう秋人」
扉を開けた張本人は、僕の母親である春子だった。
「ん、おはよう母さん」
扉から顔を覗かせた母さんはとても美人で、三十歳は超えているのだがどうも僕には二十代前半にしか見えない。メイドのマリアもすごい美人で、この家にいる人達はなんだかレベルが高い。
...これから小学校生活を送るんだし、早いとこ、この世界に慣れないとなあ。