表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/14

battle1 ビアンカvsフローラ(後編)

 そういや、俺も聞いた事があるぞ。リメイク版で追加されたヒロインがいるといないとか。

 たしか、名前は……。


「デブラ!」

「が~ん。ひどいよ、あおいちゃん。女の子に向かってなんて事いうの~」


 よよよと泣き崩れる真白。


「いやいや、違う違う。お前にデブって言ったんじゃなくて」

「デボラの事かぁ? でも、あれは性格がアレ過ぎてちょっとな」

「ボクも好みのタイプでは無いな」

「デボラじゃないわ。ヘンリー王子よ」

「「「…………はあ!?」」」


 ヘンリー王子って、良く知らないけど王子って言うくらいだから男だよな? 

 口をあんぐりする俺たちを尻目に、委員長は顔を上気させながら熱弁する。


「彼も主人公と幼なじみ。そして、10年間も奴隷という同じ境遇をすごし、辛い時も悲しい時も一緒にいたのよ。恋が芽生え、愛を育んでいてもおかしくないわ!」

「「「おかしいのはお前だ!」」」


 まさか、あの委員長にこんな性癖があったとは。

 いわゆる腐女子って奴か? 付き合い方を改めないといけないな。


「赤井くん、あなた三つ巴の戦いが好きだったでしょ? ヘンリー王子も混ぜてあげなきゃ可哀想よ」

「別に、三つ巴が好きって訳じゃないんだけど……」

「一応、ルドマンという選択肢もあるにはあるのだが……」

「ルドマンはおっさんじゃないの! 緑髪の美少年、ヘンリーじゃないと嫌よ!」


 頼む委員長、帰ってきてくれ。

 お前までおかしくなると、ツッコミが間に合わない。


 すると、真白がぽむと手を打ち。


「そうだ、混ぜちゃお~!」

「は? 何を?」

「ビアンカさんとフローラさんを」

「はあ?」


 何言ってんだ、こいつは。


「こう、細胞単位で混ぜてやって~、『フロンカ』さんを作ったらどうかな? そしたら、ビアンカさんもフローラさんも男の人も幸せになれるよ~」

「混ぜるって、どうやって?」

「……魔法とかで?」


 竜クエにそんな都合のいい魔法があるのか?

 さらに真白は、再びぽむと手を打ち。


「あ~、忘れてた! ヘンリー王子も混ぜてあげなきゃ~!」

「え? なんで、ヘンリーまで入ってくるんだ?」

「だって~、ゆかりんがヘンリー王子も混ぜてあげなきゃ可哀想だって言ってたもん」

「違う違う、黒田さん! そういう意味で言ったんじゃないわよ!」

「名前は究極生命体アルティメット・クリーチャー『フロヘンカ』でいい~?」

「人の話を聞きなさいよ!」


 クリーチャーって言ってしまってるもんな。俺にはもうキングギドラみたいな姿しか思い浮かばないよ。

 なんでこいつは、困ったら合成生物(キマイラ)を作ろうとするのかねえ。

 そういや、竜クエにもたしかキメラって敵がいたような……。



 *



「え~、ゲームのお話だったの~?」


 結局、ラチが開かなくなったので、もう一度おさらいをして真白に確認をしたところ、ようやく竜クエの中の話という事を理解してもらう事ができた。


「な~んだ。わたしはてっきり現実の人たちの話かと思ってたよ~」

「その割には、ドラ○もんとか魔法とか平気で言ってたよな」

「その竜クエ5って、セーブは何個できるの~?」

「冒険の書は……緑野、たしか3個だったよな?」


 黄村はセーブデータを1個しか使わないクチなのか、緑野に話を振る。


「そのとおり! 3個は取れたと思われるぞ!」

「じゃあ~、結婚イベントの直前でセーブして~、それぞれと結婚するデータを作ったらいいんじゃないかな~。疑似的にハーレムが作れるよ。チートでハーレム万歳、いえ~い」

「だから、いえ~いじゃないっての」


 でもまあ、落としどころとしては、それが一番無難かな。

 黄村も緑野もそうしてみるって言ってるようだし。

 現実の世界にも、セーブデータがあればやり直しが利くのになあ。


 今回の結論:セーブデータを複数使って疑似ハーレムを作ろう。ただし、主人公とヘンリー王子が結ばれることは多分ない。


「ところで~……、あおいちゃんはビアンカさんとフローラさんはどっちがお好み~?」

「俺か? オレは別にどっちでも……」

「さっき大っきな声で言ってなかった? 幼なじみが幸せにならない物語なんて、俺は認めない~って」

「え……」


 こいつ……、俺のセリフを聞いてたのか?


「こうも言ってなかった? 幼なじみ同士はくっつくもんだって。それって、どういう意味なのかな~?」

「え、いや、あれは、世間一般的にそういう話の方が受けるって意味で……」

「ふ~ん?」


 真白は大きな瞳で見つめながら、俺にせまって来る。顔が近い、近い。

 そして、真白はニカッと笑うと。


「あおいちゃん、今日は一緒に帰ろ~っ」

「なんで、お前と帰んなきゃなんないんだよ」

「おうちがお隣同士なんだよ? たまには一緒に帰ろうよ~。あんまり遅くなると、変質者が出るかもしれないから、あおいちゃんに守って欲しいな~」

「遅くなるのは、お前が道草して買い食いばっかしてるからじゃないのか。どうせ、次はフライドポテトを食うんだろ?」

「なんで、分かったの~? エスパー?」


 驚いたように目を丸くする真白。

 お前の事は、何でもお見通しなんだよ。何年いっしょにいると思ってんだ。


「さっき羊羮食ってたから、次はしょっぱいもんだろ?」

「あおいちゃん、わたしの事よく分かってるね~」


 そう言いながら、真白は俺の手をぐいぐい引っ張っていく。

 楽しそうに振り返る真白の姿は、窓から差し込む夕日を受けて金色に輝き、その笑顔はとても綺麗で。

 こいつ、色白でほっぺたもマシュマロみたいだけど、正直美人なんだよな。普段はパンダにしか見えないけど。たれ目だし。


 握られた手が柔らかくて温かくて、なぜか焦る。


 やっぱり、俺は…………。真白の事は苦手だな。


「んじゃ、俺たち先帰るわ」

「じゃ~ね~」

「ええ。また明日ね、おふたりさん」

「おう」

「さらばだ!」


 3人が俺たちを見送る視線が、『リア充爆発しろ!』と言ってるような気がしたが、たぶん気のせいだろう。

 俺は教室を後にした。



 *



「ちなみにあなたたち、『最後になるファンタジー7』のヒロインはどっち派?」


「SF7なら、ティファだな。幼なじみだし、乳も()てえし」


「ふっ、サイファン7ならエアリスだ。見た目は可憐だが、性格もしっかりしているからな」


「対照的ね。あなたたちの女性の趣味が、よーく分かったわ」


「にしても、ブルと黒田。あれで付き合ってねえんだからな」


「とっとと付き合えば良かろうに、じれったいな全く」


「まあ、幼なじみ同士って、私たちには分からない何かがあるのかもね」


「でもよ、ブルの奴はっきりしないのが嫌いって言いながら、自分が一番はっきりしてねえよな」


「「そだねー」」


「さっ、部活行くか」


「ボクも部活だ」


「私が委員長だけど、このクラス……先が思いやられるわ」

幼なじみシチュっていいですね。

男女でも男同士の組み合わせでも憧れます。


 挿絵(By みてみん)

 イラスト by 砂臥 環 様

(左から順に緑野(みどりの)葉矢斗(はやと)()(むら)(きみ)(ひで)(あか)()(あおい)()(どう)ゆかり、(くろ)()()(しろ)


2019.8.13追記:

砂臥 環 様よりキャラクターデザインを戴きましたので、載せさせていただきました!

すながさん、ありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お読みいただきありがとうございます!
『ブックマーク』『評価』『感想』
『レビュー』をいただけると狂喜乱舞します。

小説家になろう 勝手にランキング

『水兵チョップ海を割る ~西の島国の英雄譚~』
i410077
海洋バトルアクションファンタジー(完結済)です!
― 新着の感想 ―
[一言] フロヘンカ!! ガビグラゴみたいな!?(ぇ いやぁ、最後までニヤニヤで面白いです!!
[良い点] 少し(少し?)前に間咲さんのかっぽうでお見かけして読もう読もうと思ってまして……。 笑わないつもりで読んでいたのに「フロンカさん」のあたりで噴き出しました。そしてフロヘンカさんですもんね。…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ