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磔VS幻真1 恩とは何か

「うおおおおおおお!!!」


幻真が雄叫びを上げながら磔の体を真神剣で縦に斬ろうとするが、磔はそれを体を翻して避ける。


「まだまだ!!」


幻真は磔に攻撃を避けられる事は想定済みだったのか、すぐに横払いに切り換える。だがそれも磔はジャンプをして避ける。


「だったらこれで!!」


攻撃を避けられた幻真は一瞬悔しそうな顔をしたが、すぐに腰に付けてある短剣3本の内1本を左手で掴んで磔に投げ付ける。


「見えてるぞ。」


磔は慌てずに右手で投げ付けられた短剣を掴み、遠くへ投げ飛ばした。


「何でだよ、何でアクセルモードを使っていない磔に攻撃が当たらないんだ!?磔を殺して俺も死なないといけねえのに!!」


「死のうとしてる奴なんかに負けねえよ。」


磔が冷たく言い放つと、幻真は大量の弾幕を磔に放った。


「デタラメに放っても意味ねえ、ぞ!!」


弾幕の隙間に入り込んで避けようとした磔だったが、そこに真神剣を構えた幻真が向かって来ていた。


「デタラメなんかじゃねえ!!俺はお前を殺す為に戦ってるんだぞ!!そんな状況でデタラメに攻撃なんかするかよ!!」


幻真は声を荒げながら叫ぶと、アクセルモード4の状態の赤色と金色が混じったオーラが真神剣に纏わり付いた。


「やべ!!」


「おせえ!!アクセルソード!!」


磔は急いで幻真の攻撃範囲から抜けようとするが、周りに弾幕が配置されていて逃げ場が無く、オーラを纏った真神剣を木刀で受け止めた。


「無駄だ!!」


木刀で受け止めた磔たが、すぐに木刀が砕ける音と共に真神剣で斬りつけられ、追撃の回し蹴りを喰らって会場の壁に激突した。


「へぇー、幻真も強~くなったんだねぇ。」


「そりゃ強くなるでしょうよ。でも何かおかしいわね。」


ヘラヘラと笑いながら試合を見ていた終作の隣に桜が腑に落ちないと言った表情をして向かってくる。


「あんた何か知ってるでしょ?」


「知らな~い、知らな~い。俺わかんな~い!つーか知りたくもな~い!」


あっけらかんと言った表情をする終作を見た桜は額に青筋を浮かべながら終作の顔を掴んだ。


「いいから答えなさい!!」


「ぎゃあ~!!桜に乱暴される~、ヘルプミ~!!」


「いいぞぉ!!もっとやれ桜!終作の顔をへこませてやれ~!!」


ミシミシと音を立てながら終作の顔を掴んでいる桜を見た終夜は満面の笑みで桜を応援していた。


「てめえ終夜!!H.S同盟に入れてやんねえからな!!おめえの席ねえから!!」


「それだけはご勘弁を会長殿!!どうか私に今一度のお慈悲を!!」


「あんたら、ふざけている場合じゃないのよ!!」


悪ノリする終夜の顔も桜は掴み、二人の顔を地面に叩き付けた。


「「あじゃん!!!」」


「ったく、少しは危機感を持ちなさいよ。」


桜は溜め息を付いて、痙攣している二人を見下ろした。


「あらあら、大変ねぇ。」


「尾都、見てたなら止めなさいよ。」


上空からニコニコとした笑みを浮かべながら尾都が桜の隣に降りてくる。それを終夜は目線だけを上にしていたが、尾都は見て見ぬふりをした。


「尾都、見られてるわよ?」


「別に気にしないわよぉ、見られて顔を赤くするなんて桜も女の子ねぇ。」


「うっさいわよ。ところで尾都は今何が起きてるか知ってるかしら?」


桜は試合を見ながら尾都に尋ねる。試合は今、幻真が氷の属性を付与した真神剣で磔の左腕を斬り付け、動きを止めていた。


「知ってるわよぉ、でもね、私達がどう動こうがどうにも出来ないのよ。」


「またそのパターンなのね、全く磔の世界は厄介な力が働くわねえ。」


尾都の発言でどうすることも出来ない事を察した桜は苦虫を噛み締めた表情で試合を見る。


「それと、幻真と磔の能力を教えてくれないかしら?」


「そっか、尾都は知らなかったわね。幻真は『龍を操る程度の能力』よ。名前通りの能力で、属性も操る事が出来るわ。」


桜の説明を聞いた尾都は興味深そうに頷いていた。龍を操るというのが珍しかったのだろう。


「それで磔は『何事にも動じずに行動する程度の能力』よ。これも名前通りの能力で、どんな状況でも動じずに行動する事が出来るわ。」


まあ、相手との力量差が開き過ぎてると上手く発動しないらしいわと桜は言葉を付け足した。


「思っていた以上にぶっとんだ能力じゃないのねぇ。」


尾都は磔の能力を聞いて桜に尋ねたが、桜は尾都の言葉を首を横に振って否定した。


「そうでもないわよ?磔は今ある能力の前は違う能力を持っていたのよ。それで色々と試行錯誤して今の能力に落ち着いたらしいわよ?」


「中々に凄い事をするのね磔。」


尾都が感心している最中、磔と幻真は鍔迫り合いをしていた。もっとも、磔は凍った左腕を剣の代わりにしていた。


「属性を付与する攻撃、懐かしいねぇ、俺も前に使っていたな。」


「懐かしんでる暇があったらとっとと殺られろ!!」


幻真は超技術『縮地』を使って磔の懐に潜り込んで足を斬ろうとしたが、磔は当たる寸前に跳躍して幻真から距離を取った。


「これでも駄目なのかよ!!」


「ふぅー、さて幻真。ここで一つ授業といこうか。」


磔の突発的な発言に幻真は怪訝な表情になるが、すぐに表情を元に戻して真神剣を改めて構え直した。


「そんなことに付き合ってる暇はねえんだよ。」


「まあそう言うなって。幻真も使うアクセルモードに付いて説明してやるよ。」


磔の発言に反応した幻真は真神剣を構えたまま、磔の言葉に耳を傾ける。


「じゃあ始めに聞くが、幻真、どうやってアクセルモードを発動させると思う?」


「知らない、使う時は体に気合いを込めてるから詳しくは知らない。」


「だろうな、なら教えてやるよ。アクセルモードはな、俺達の体にある霊力や魔力、妖力等の流れを加速(アクセル)させて発動すんだよ。」


磔の説明を聞いて幻真はハッとした表情を浮かべた。


「だからアクセルモードを発動させる時は気合いを込めないといけないのか。」


「幻真の場合はそうして発動させてるんだな。で、2、3と上がる理由は霊力等の流れを更に加速させて発動する。」


そう言いながら磔は凍った左腕を元に戻していた。


「で、その派生系がソウルモードだ。まあ簡単に言うと脳の使われていない部分を強制的に使用するようにする技だな。」


「だから額から炎が出現するのか。」


「それらを同時に行うことでソウルドライブモードが使えるって訳だ。」


磔がそこまで言い切ると、幻真は炎が纏った弾幕を磔に放ったが、磔はそれを拳で弾く。


「アクセルモードがどういう仕組みなのかは分かった。それで、何で磔はアクセルモードを使わないんだ!?」


「使わないというより、゛今は使えない゛と言った方が正しいかな。」


「そうか、なら殺されてくれ。解放 ソウルモード。」


幻真は冷たく言い放ち、磔の心臓目掛けて真神剣を突き刺そうとしたが、磔は体を翻して避けて裏拳で真神剣を弾き飛ばした。


「さっきから聞いてれば殺して殺させてって、幻真、てめえは命を何だと思ってんだよ?」


「うっせえな!!俺が殺されねえと俺の世界が消滅すんだぞ!!けどお前は殺しに掛からないと俺を殺してくれねえだろ!!」


幻真はそう叫び、腰に付けてあるもう一つの刀の柄を持って居合い斬りをする。磔はそれをしゃがんで避けるが、僅かに掠った。


「っ!!」


傷は掠り傷程度だったが、磔は体が痺れて一瞬動きを止めた。その隙を狙って幻真は切り上げで磔を真っ二つにしようとする。


幻真の今持っている刀は『雷刀 ゼニシア』と呼ばれる物で、ある人がギリシャ神話の三神の神具の贋作を作ろうとした時にの一本で、ゼウスの雷の贋作であり、制御機構が仕込まれてカミナリ型の刀身の刀になった。


雷で相手の感覚を麻痺させることが出来る為、掠り傷を負った磔は体が痺れてしまった。


「俺が死ねば俺の世界の皆は助かるんだ!!安い犠牲じゃねえかよ!!」


「妖夢はどうすんだよ?」


磔は幻真の切り上げをギリギリで避け、バックステップで幻真から距離を取った。


「幻真の世界の魂魄妖夢、お前の恋人はどうすんだよ?お前が死ぬことを受け入れてくれんのか?」


「受け入れてくれないさ、けど俺が死なねえと妖夢が死ぬんだ!!それだけじゃない、俺はあの世界で妖夢以外にも沢山の人から数えきれない程の恩を貰ったんだ!!その恩を返す為に死のうとしてるだけだ、邪魔をすんなよ!!」


幻真は怒り狂った表情で叫び、磔に向けて空間を埋め尽くす程の弾幕を放った。


「恩を返す為に死ぬのか?それは違うぞ幻真。」


磔は自分の目の前に結界を張って、幻真の放つ弾幕を防ぎながら尋ねる。


「違わなくねえ!!俺の世界の人達から命を救って貰った、それを今度は俺が救うんだ!!分かりきった口調で決めんなよ磔!!てめえは俺の世界で俺の受けた恩と俺の世界の何を知ってるんだ!?」


幻真は更に弾幕の量を増やし、磔の結界を壊そうとする。


「だからって、命を救って貰った皆の為に死ぬのかよ?」


磔はそう言い放ち、幻真に本気の殺意を向ける。それを感じ取った幻真は一瞬怯み、その隙を狙って磔はある超技術を使って幻真の目の前に移動して胸倉を持ち上げた。


「死ぬことは、恩返しじゃねえぞ幻真!!お前が死んでお前の世界が救われたとしても、救われた人達は悲しむだろうが!!それは恩返しじゃねえ、ただの自己満足だ!!」


「っ!!」


磔は本気の殺意を幻真にぶつけたまま、額に青筋が浮かび上がる程激怒していた。


「お前を救った人達は、お前に生きていてほしいから救ったんだぞ!!お前に恩返しさせるつもりで助けた訳じゃねえ!!」


磔は先程よりも更に怒り、幻真を地面に叩き付けた。磔がこれほど激怒するのは訳があった。


磔も遠い昔、まだ聖人で外の世界で暮らしていた時にある女の子に庇われて命を救って貰った事があった。庇った女の子は命を救えて良かったと言いながら死んでいった。だが救われた磔はそれが原因で女性恐怖症となってしまった。


それだけじゃない、幻想郷に来てからも自分を庇った事で死んでいった人達を何人も見てきたし経験もしてきた。磔も自分が犠牲になって幻想郷を救った事は何度もあった。だが後程生き返ったとしても、嘆き悲しんでいる人達を見て後悔の念だけが増えていった。


自分が経験してきたからこそ、他の人に同じ経験をさせたくない。その思いから磔は死のうとしている幻真に向けて激怒していた。


「よく覚えておけ幻真!!生かして貰って死ぬことは、弱い奴のする事だ!!」


そう叫び、磔は幻真を試合会場の壁に向けて蹴り飛ばした。だが蹴り飛ばされた幻真は空中で体勢を整えて地面に着地した。


「磔の言いたい事はわかってんだよ。それでも、俺は俺の世界を救いてえんだ!!弱い奴で充分だ、それで俺の世界が救われるならそれでいい!!」


「口で言っても分からねえか。」


磔は殺意を静め、幻真に向けてクイクイと手を振って挑発する。


「なら徹底的にぶちのめして体全体に覚えさせるしかねえな。覚悟しろよ?俺はあらゆる方法を使って幻真を止める。生易しい事なんかしねえからな?」


「上等だ!!」

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