絢斗VS刀哉
「それじゃ、よろしくな~。」
「絢斗が磔の言っていた凄腕の剣術の達人か。お手合わせをお願いする!!」
そう言い刀哉は腰から三尺ほどの刀、布都御魂剣を鞘から抜いて絢斗に斬り掛かり、絢斗も刀を抜こうとしたが鞘から抜けなかった。
「あれ~!?ちょっと刀が抜けないんだけど~!?」
「それは俺の能力、刀剣を統べる程度の能力の影響だ。」
「刀が抜けなくなったり、刀が砕けたりするのかよ~。」
そう言いながら絢斗は斬り掛かってきた刀哉の刀を指二本で白刃取りして受け止める。
「むっ、ならこれならどうだ?」
刀哉は絢斗から距離を取り、再び絢斗に斬り掛かる。今度は払い斬りをするか、絢斗は右手で刀哉の刀を受け止める。
「中々にいい太刀筋だねぇ~。毎日刀を振ってるのが分かるよ~。」
「その話し方はなんとかならないのか?」
「これが俺の素だからね~。」
そう言い絢斗は右手で刀哉の刀を掴みながら左フックを刀哉に放つが、刀哉はバックステップで左フックを避けた。
「じゃ、そろそろ行きますか~。破符 蒼火墜連!!」
絢斗は手の平から蒼色の弾幕を刀哉に向けて放つ。それを見た刀哉は弾幕を斬ったが苦痛に耐えている顔をしていた。
「絢斗、ただの弾幕ではないな?」
「よく気付いたね~、まあ当たり前か。その弾幕は摂氏100度の高温になってるんだよね~。続けて10個放つよ~。」
そう言い絢斗両手の手の平から蒼色の弾幕を10個放ったが、刀哉は体裁きで全て避けた。
「これくらいは避けられるか~。」
「俺を舐めているのか?」
そう言い刀哉は刀を鞘にしまって居合い斬りの構えを取り、絢斗に向かって突進する。
「居合い斬りか~、中々速いね!!」
「話せる余裕はあるのか?」
刀哉は居合い斬りで絢斗の首目掛けて刀を振るったが、絢斗は刀の鞘で居合い斬りを受け止めた。
「何だと!?」
「刀哉はやるね~。でもそろそろ実力を見せてほしいかな~?」
そう言い絢斗は鍔迫り合いの状態で、刀哉を蹴飛ばした。蹴飛ばされた刀哉は空中で体勢を立て直して着地した。
「分かった、まず己の実力を見せろって事だな?能力を解く。相沢絢斗殿、手合わせをお願い申する!!」
「いいよ~、全力でかかってきなされ~。」
刀哉は絢斗に一礼すると、絢斗との距離を瞬時に詰めて絢斗の首を斬ろうとするが、絢斗はバク転で攻撃を避け、着地と同時に刀哉を刀の刃のない部分で吹き飛ばした。
「ぐっ!!見事、だが負けられん!!」
「気が済むまでかかってきなされ~!!」
吹き飛ばされた刀哉だったが、今度は縦横無尽に動き回りながら絢斗との距離を詰めて首ではなく胴体を斬ろうとしたが、絢斗は刀で受け止める。
「いい動きだね~。でも、俺の首を取るにはまだまだ鍛練不足だね~。」
「それはわからぬぞ?」
絢斗と刀哉は刀と刀を打ち付け合いながら会話する。しばらくその状態が続いたが、絢斗が一瞬の隙を付いて刀哉から距離を取った。
「んじゃ、スペルカードを使っていこうかね~。斬符 閃光斬!!」
絢斗は居合い斬りの構えをし、突進ではなくその場で鞘から刀を抜いて刀哉に衝撃波を放った。
「ぐっ!!だがこれしきのこと!!」
刀哉は衝撃波を刀で受け流しながらスペルカードを取り出した。
「剣舞 疾風之太刀!!」
「おおっ!真空波を放ったのか。やるね~!!」
刀哉は納刀状態から抜刀し、真空波を絢斗に放った。真空波と衝撃波がぶつかりあったが、真空波が生き残り絢斗に向かって行った。
「負けちったか~、じゃあ次だね。斬符 遣らずの雨!!」
そう言い絢斗は刀を地面に落とし、刀の柄の部分を刀哉に向けて蹴り飛ばした。蹴り飛ばされた刀の周りに弾幕が配置されたが、刀哉は真空波で弾幕を飛ばした。
「刀を蹴飛ばすとは!!」
刀哉は首を横に振って絢斗の刀を避けたが、さっきまでいた所に絢斗の姿は無かった。
「何処にい「ここだよ~ん。」くっ!!」
絢斗はいつの間にか刀哉の後ろに居て、刀哉の背中を斬った。斬られた刀哉は苦痛に耐えながら絢斗の足目掛けて刀を振るったが、絢斗は大きくジャンプして避けた。
「何故俺の後ろに居る?」
「遣らずの雨のスペル効果で蹴飛ばした刀の所に瞬時に移動出来るのさ~。さて、刀哉はもう1つの人格みたいなものがあるよね?それを出してもらおうか~。」
そう言い絢斗は刀哉の体を死なない程度に超高速で切り刻み、殴り飛ばそうとした時、刀哉が絢斗のパンチを受け止めた。
「悪いな、こいつを死なせる訳にはいかんのだ。」
「来たね~、さっきまでとは雰囲気が全然違うね~。」
絢斗はそう言い雰囲気が変わった刀哉と鍔迫り合いをする。さっきまで余裕そうな表情をしていた絢斗だが、一瞬で真面目な表情へと変化した。
「神の実力じっくりと見させて貰うよ~。」
「それまでお主が立っていたらな。陣符 刀光剣影。」
そう言い刀哉は絢斗に斬り掛かるが、絢斗は腑に落ちない表情で刀哉の攻撃を受け止める。
「な~んかおかしいね~。そういう場合はこうだよね~。」
絢斗は死角から襲いかかってきた刀哉の方を見ずに体を捻って避ける。避けた後、幻影の方の刀哉の首をはね飛ばした。
「こんなもんか。じゃあそろそろ受ける側も飽きてきたし、折角だから本気で攻撃するからすぐ死なないでね~?」
「お主の戦い、見届けさせて貰うぞ。」
刀哉はそう言い防御の構えを取る。それを見た絢斗は首を回し、縮地を使って刀哉の横に移動して肩を浅く斬った。
「速い!?」
「まだまだこれからだよ~。」
絢斗は刀哉の切り上げ攻撃をバク転で避け、そのまま空中に留まり、にやりと笑った後、空中を蹴飛ばしながら刀哉を錯乱する。
「えっ!?何がどうなっているんですか!?」
「そういえば、ハリスマリーは超技術について知らなかったな。どう説明す「ごめ~ん磔!!」どした終作?」
磔の目の前にテヘペロ顔で次元の狭間から顔だけ出している終作が現れた。
「ハリスマリーはレミリアの血を分けてもらったって言ったじゃん?あれはレミリアじゃなくてティアーシャ・スカーレットという吸血鬼だったんだ!」
「嘘の情報教えるなよ終作!?」
「ついでにハリスマリーは紅魔館の従者だぜ、間違った情報を教えてごめんねごめんね~!!」
「おい待て!!終作の野郎め、言いたいことだけ言って帰りやがった。」
そう言い終作は憎らしい笑顔を浮かべたまま次元の狭間に姿を消した。
「本当にあれはなんなんでしょうか?」
紅茶を飲みながら観戦していたハリスマリーがびっくりした顔でフィールドを見ていた。
「あれは超技術だなハリスマリー。」
「磔さん、超技術ってなんでしょうか?」
「超技術って言うのは人間がもっている最大の身体能力を引き出す技術の事なんだよ。普通の人間は不可能な、超人の使う技術であるために『超技術』と呼ばれるんだ。」
磔がハリスマリーにそう説明すると、ハリスマリーは真剣に磔の説明を聞いていた。
「まず超技術の基本中の基本の縮地、ハリスマリーも見ただろうけど地面や空間を高まった身体能力で0.1秒間に100回蹴ることで超高速で移動する方法だ。」
「0.1秒間に100回ですか!?霊愛さんは凄い人なんですね!!」
「感心してるところ悪いけど、縮地はここにいる人達の半数以上は使えるんだ。」
「ということは磔さんも!?」
ハリスマリーが唖然とした表情で磔に訊ねるが、磔は苦笑いしながら頷いた。
「縮地で驚いていたら身が持たないぞ?次にさっき絢斗がやっていた動きは空歩という技術だ。これは物体が何もない空間を高まった脚力で蹴り、それによって起こった風で何もない空間を歩く技術なんだ。ちなみに縮地と併用可能だぞ。」
「す、凄いです。」
ハリスマリーが話の盛大さに付いてこれずに放心状態になっていると、絢斗が刀哉の首を斬っていた。
「ここまでとはな、だが我も負けるわけにはいかんのだ。」
「首を斬ってもダメージが入っていない所を見ると、相手の攻撃を無効化する能力でも持ってるのか~い?」
「ご名答!!」
刀哉はそう言い先程までとは比べ物にならない程のスピードで絢斗の首を斬ろうとしたが、絢斗はしゃがんで避けた。
「よし、もう一丁スペルカードだ!斬符 春雨!!」
絢斗はそう言い霊力を使って刀を数十メートル伸ばし、刀哉に向けて横に振るったが、刀哉は能力を使って絢斗の攻撃を断ち切り、今度は心臓目掛けて突きをした。
「ヤバいよヤバいよ!!ってな~んちゃって。」
絢斗は慌てたふりをして突きを体を捻って避け、刀哉の手首をへし折る勢いで蹴り飛ばした。だが刀哉の手首はへし折れず、ただ数メートル飛ばされただけだった。
「なるほどねぇ、断ち切る程度の能力か~。ならこれだね~。斬符 マスターソード!!」
絢斗は刀に霊力をふんだんに込め、縮地と空歩を使って刀哉に近付き、刀哉の首をはね飛ばした。
「えっ。」
「マスターソードは原因結果、物理法則、概念等を断ち切るスペルだよ~。恐らくその断ち切る能力はかなりの負担なんでしょ~?最初の方より弱くなってたから斬らせてもらったよ~。」
そう言い絢斗は能力を使って刀哉を復活させた。復活した刀哉は絢斗に向かって一礼をした。
「勝者相沢絢斗!!」
「手合わせ感謝する絢斗。だが1つ訊ねたい、何故俺の攻撃が一切当たらなかったんだ?」
「そのことかい~?それは超技術の1つ、陽聞を常に使っていたからなのさ~。陽聞は相手の動きを高速演算によって導き出し、また対象の呼吸を読むことで攻撃を相手に併せて回避するという技術だよ~。」
「なるほど、俺もその技術を習ってみたいものだ。」
「試合が終わったら教えてあげるよ~。」
絢斗と刀哉は話し合いながら観客席に戻った。
「あれ?磔がいねえな。まあいいか、次の試合を始めるぞ!」
霊斗がそう言うとアルマとパルスィ、フランとこいしがフィールドに現れた。
「次の試合は桐月アルマ&水橋パルスィVSフランドール・スカーレット&古明地こいしだ。ではスタート!!」
闘技場の控え室
「皆~、磔のパーフェクト超技術講座が始まるぞ~?」
「「……。」」
「すまん、ちょっとふざけすぎた。んじゃ、ハリスマリーと尾都に超技術とは何かを教える。」
ハリスマリーと尾都に冷ややかな目で見られた磔はわざとらしく咳ばらいをして説明を開始する。
「ハリスマリーにはさっき説明したけど、超技術は人間がもっている最大の身体能力を引き出す技術で、普通の人間は不可能な、超人の使う技術であるために超技術と呼ばれるんだ。」
「なるほどねぇ、それでどんな種類があるのかしら?」
「まずは超技術の基本中の基本の縮地だ。地面や空間を高まった身体能力で0.1秒間に100回蹴ることで超高速で移動する方法だ。試しにやってみるぞ。」
そう言い磔は縮地を使って広い控え室の出口まで行って戻ってきた。尾都は見えていたのか感心したように腕を組み、ハリスマリーは見えなかったのかおろおろしていた。
「本当に縮地を使ったんですか!?」
「ああ使ったぞハリスマリー、ちょっとハリスマリーにはきつかったか?」
「大丈夫よ磔、私には見えていたから後でハリスマリーにどんな感じだったか教えるわね。」
「次に空歩だが、物体が何もない空間を高まった脚力で蹴り、それによって起こった風で何もない空間を歩く技術だ。ちなみに縮地と併用可能だぞ。」
そう言い磔は空中に浮かび、空中を蹴って控え室の出口まで移動し、元の所に戻った。今度はハリスマリーも見えていたらしく、二人は興味津々で磔を見ていた。
「これを使えるようになれば空中での動きがもっと早くなれますね!!」
「けど、これは脚力が弱い人には使えないんだ。まあ二人とも大丈夫だろうけど。」
「ちなみに超技術は磔が編み出したのかしら?」
尾都の問いに磔は首を横に振って否定した。
「超技術は霊斗が編み出したんだ。次に衝撃玉砕、これは簡単に言えば防御貫通攻撃なんだ。掌底を相手に打ち付け、その衝撃を相手の体の内部に与えるという攻撃だ。鎧を通り越して攻撃を与えることが可能だったり、鎧や鱗を破壊したりすることが可能で、かなり強力だが、腕力が高くないとすぐに発動出来ないというデメリットもある。」
磔はそう言い隣に置いてあった鋼鉄よりも何倍も硬い置物を用意した。
「ハリスマリー、試しにこの置物を壊してみてくれ。」
「ええっ!?これ壊せるんですか!?」
そう言いハリスマリーは天叢雲剣を取り出して斬ったり、弾幕をぶつけたりしたが置物は傷1つ付かなかった。
「という風に普通の攻撃じゃ絶対に傷付かない物体でも衝撃粉砕を使えば!!」
磔は短く息を吐き、置物に掌底を喰らわせる。すると置物はバラバラに崩れ去った。
「とまあ、こんな風に内側から物体等を破壊することが出来るんだ。じゃあ次、次は防御系の超技術で模演というものがある。これは脳の限界を解放した上で、何かのマネをする技術。全ての動きを寸分狂わずにコピーすることが可能だけど、高速演算能力が求められるので、頭が悪いと使うことができないぞ。」
「うう、凄すぎてどれくらい凄いのか理解出来ません。」
「後でゆっくり教えてやるからハリスマリー。それで模演の応用で陽聞という技術があるんだ。陽聞は相手の動きを高速演算によって導き出し、また『対象の呼吸』を読むことで攻撃を相手に併せて回避するという技能で、模演を使うことができる者なら大体が使用可能だ。」
「あと何があるのかしら?」
尾都の問いに磔は腕を組み考えていたが、ポンっと手を叩いた。
「あとは肉鎧だな。肉鎧は全身の筋肉と神経の能力を高めることで鋼の如き防御力を得ることが出来るんだ。また、その間は霊力を全身に張り巡らせているため、見えない鎧を着ているようなイメージだ。更に霊力が身体中に張り巡らされているため、霊体の相手にも触ることが可能。ただし霊力の消費が著しいけどな。」
磔はそこまで説明すると傍に置いてあった水を飲む。
「まだ他にもあるのかしら?」
「あるぞ尾都、だけど一旦休憩だな。ハリスマリーが超技術を理解するのに苦しんでるから少し時間を置いてから続きを説明する。」
「ふえぇ、すみません。」