絢斗VSガブリエル2
「さあて絢斗、あいつをどうやって倒す?」
終作はヘラヘラと笑いながら絢斗に訊ねる。終作の表情を見た絢斗はニヤッと笑い出す。
「ボコボコのギッタンギッタンにしようぜ~!」
「となれば、突撃じゃい!!」
一見するとふざけてるようにしか見えないが、これも絢斗と終作の作戦だ。その証拠にガブリエルは二人を見て怒り狂ってる表情になった。
「ふざけやがって!!てめえらは跡形もなく消し飛ばしてやる!!」
「「きゃー、こわーい!」」
絢斗と終作は大袈裟に驚くが、その隙にガブリエルの後ろに回っていた。
「後ろががら空きだぜ~?」
「何っ!?てめえらいつの間に!!」
絢斗がガブリエルの腕を斬ろうと下から切り上げるが、ガゴン!という固い音に阻まれる。それを見た終作がガブリエルの腹を蹴り飛ばそうとするが、見えない壁に阻まれた。
「あれれぇ?おっかしいぞぉ~?何か阻まれたぞ?」
「神以上に位が高い天使だぞ?貴様らの攻撃を防ぐ手段などいくらでもある。だが、貴様ら人間や悪魔ごときに本気にならざるを得ないとはな!!」
ガブリエルがそう叫び、暴風を発生させて絢斗と終作を遠くへ吹き飛ばした。
「おわっ!こんな力があるのかよ。こりゃやベェかも。」
暴風で飛ばされた体を空中で体勢を整えて着地する絢斗が冷や汗を流しながら呟いた。これは全力で戦っても勝てないかもと。
「まずは悪魔の貴様から殺す。」
「俺を殺るってのか?そいつは無理な話だな。」
終作はガブリエルを見ながらヘラヘラして挑発するが、ガブリエルは気にもしていなかった。
「直接的なら無理な話だろう。だが、こうすれば良いだけの話だ。」
そう言いガブリエルは何十人の分身を作り、空間に穴を開けて何処かに行った。一見すると逃げたように見える。
「分身にも嫌われたのか~?なあ終作?ん、どうしたの~?」
絢斗はガブリエルに挑発しながら終作の方を見るが、終作はいつものヘラヘラした表情をしていなく、険しい表情になっていた。
「てめえ、やりやがったな?」
「さあどうするクソ悪魔?貴様なら俺が何をしたか分かるだろ?こんなところで突っ立ってていいのか?」
ガブリエルがニタァと邪悪な笑みを浮かべながら嘲笑う。それを見た終作は舌打ちしながら次元の狭間へ向かって行った。
「絢斗、こいつの相手を頼んだ!俺はやることが出来た!!」
「おいおい俺にも説明してくれよ~?一体何がどうなって「貴様は知る必要はない。ここで死ぬからなぁ!」ちぃ!!」
終作に説明を仰ごうとした絢斗だったが、ガブリエルから放たれた水刀に阻まれる。それを見た終作は急いで次元の狭間の入り口を閉じる。
「終作があんな表情をしたんだ、余程やベェ事をしたなてめぇ?一体何をした? 」
「今言っても面白くない。貴様が我にひれ伏してから答えてやるよぉ!!」
「誰がてめえなんかにひれ伏すかよ!!想符 アクセルモード5!!」
絢斗は紫色の闘気を出現させ、目と髪色も闘気と同じ色になり、ガブリエルに向けて斬撃を放つ。
「ほぉ?人間の分際でそこそこやるな。だが所詮は下等生物、貴様らの攻撃など効かぬわ!!」
ガブリエルは絢斗が放った斬撃を直接体に受けたが、傷一つ付いていなかった。
「ええっ~、さっきまでと態度が違いすぎる。こいつ頭大丈夫かよ?まっ、斬撃で駄目なら直接斬るしかないね!」
絢斗は亜音速を越えるスピードを出し、ガブリエルに近付いて刀で斬り付けるが、また見えない壁に阻まれた。
「貴様の攻撃など本気の我には効かぬ。さっさとひれ伏せぇぇ!」
ガブリエルは絢斗の後ろから高圧水流を流し、絢斗の背中に穴を開けようとするが、絢斗はガブリエルのすぐそばにある瓦礫と場所をチェンジして避ける。
「あぶねぇ!!あと一歩反応が遅れてたらヤバかった~。」
「運良く避けれたみてえだな?だが次はねえぞゴミ虫?」
ガブリエルは絢斗を見ながら嘲笑う、それを見た絢斗は縮地を使ってガブリエルの懐に潜り込む。
「おらぁ!!」
ガブリエルの心臓に刀を突き刺したが、ガブリエルの体が予想以上の固さだったのか弾かれて絢斗の体が後ろに吹き飛ばされる。
「くっそ、さっきとまるで硬度が違うぞ!?」
「今のは攻撃かぁ?攻撃っていうのはな、こうやるもんだぜ?」
ガブリエルが右手の指を弾く、すると水の弾丸が絢斗の周りに配置された。
「包囲網か?でもこんなもん!!」
「遅いぞ下等生物。」
絢斗が何らかの動作をする前に水の弾丸が一斉に絢斗の体を貫いた。間一髪で致命傷は免れたが、体中のあらゆる処に穴が空いた。
「がはっ!!くそっ、こんな程度の傷!!」
「まだやるのか?やれやれ、これだから下等生物は。」
ガブリエルはため息を付き、水の縄で絢斗を縛り上げ胸ぐらを掴んだ。
「貴様は異世界に放した我の分身が何をしてるか気になるよなぁ?そうだよなぁ?」
「は、なせ!!」
絢斗は必死に縄から抜け出そうとするが、その度にガブリエルは縛る力を上げていく。
「そうジタバタするな、我の分身は異世界の貴様の家族に会いに行ってるだけだ。貴様の体と乗っ取ってな!」
「!!!」
「気になってきたよなぁ?今貴様を殺そうとしていら我が貴様の家族に何の目的で会いに行ったか知りたいか?」
ガブリエルはそう言いニヤリと笑う。それを見た絢斗はガブリエルに頭突きをしようとしたが、その前にガブリエルが水で作った剣が絢斗の脇腹に刺さった。
「ぐあぁぁぁ!!」
「こんなやり方でなぁ?」
「て、てめぇ!!妖夢や幽々子、有夢や桜花に何をした!?」
絢斗は水で作られた剣が抜かれないように縄から抜け出した左手で剣を掴んだ。絢斗は魂魄妖夢と西行寺幽々子と結婚しており、それぞれ有夢と桜花という娘がいた。
「とっくに気付いているんだろぉ?」
「あぐぅぅぁぁぁ!!」
ガブリエルはもう二本水の剣を作って絢斗の両足に刺し、徐々に力を入れていった。
「我の分身らは異世界の貴様の妻を子供達の目の前で殺し、切り刻んだ後、子供達も殺した。」
「~~~~ッ!!」
「ただ、一言で殺したと言っても多彩な殺害方法で貴様の妻と子供を殺したがな。」
この事に気付いた終作はそれを阻止しようと異世界を回っていた。だが、終作が着いた頃にはもう何もかもが遅かった。
「心臓と肺だけを治癒で再生しながら、爪先からジワジワと切り刻んでいったりとかな!!」
「よくも、よくも!!」
絢斗はギロリとガブリエルを睨むが、ガブリエルはあっけらかんとした表情をしていた。例えるなら、自分のやったことは何か間違っているのかと言いたそうな表情。
「我は貴様ら下等生物とは違う。何もかもが貴様らより上な天使様だぞ?下等生物の貴様に何してもいいんだよなぁ!!」
「そんな、そんなくだらない理由で異世界の妖夢達を殺したのか!!一人二人じゃなくてたくさん殺したのか!!」
「そうだ。それの何が悪い?」
ガブリエルがそう言った後、突然絢斗の体から紫色の闘気が噴出した。こんなやつが天使?こんなやつに、自分の大切な人を殺されたのかと、絢斗は今までにない怒りを感じていた。
「てめえ、許さねぇぞ!!」
ピシッ
「怒った所で何になる?怒ればパワーアップでもするのか?怒るなら貴様の運の無さに怒るんだな!!」
ガブリエルが高らかに笑おうとした時、更に絢斗の体から噴出している紫の闘気が大きくなり、烈風も吹き出し始めた。
「俺の体を乗っ取って、妖夢や幽々子を殺した!!それだけじゃねえ、有夢や桜花も殺した!!」
絢斗が叫ぶ度に闘気は大きくなり、烈風は更に強くなった。その際、絢斗を縛っていた縄と剣は粉砕された。
「怒ったぞ、俺は本当の本気で怒ったぞ!!」
ピシッピシッ
益々激しくなる闘気を見てもガブリエルは余裕の笑みを崩さなかった。だが、一瞬だけガブリエルは怪訝な表情になった。
「この下等生物が噴出している紫の闘気がだんだんと澄んできている、気のせいか?」
自分自身にそう言い聞かせた時、絢斗から先程の何倍もの爆風が放たれた。
「俺はもう、てめえを許さねえぞぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
ピシッピシッと空間にヒビが入り、その後にガラスが割れるようにガブリエルが作り出した空間が無くなり、現想郷に出てくる。
「っ!!気のせいじゃねえのかよ!!」
絢斗が叫び終わった時、紫の闘気は澄んだ色になっていてゆっくりと絢斗の体から噴出されていた。
「おらぁ!!」
絢斗が一歩踏み込んだのを確認したガブリエルは攻撃に対応できるように身構えたが、気付いた時には上空に体が投げ飛ばされていた。
「何が起こっ!!」
「遅えんだよ!!」
ガブリエルが体勢を整える前に絢斗はガブリエルの背中に膝蹴りを喰らわせ、体を横に1回転させ、足の指、足首、足の骨、筋肉を同時に動かし亜音速の何倍の速さ攻撃する『桜花』でガブリエルを地面に叩き付ける。
「天使が何だってんだぁ!!俺の大切な人を殺すやつは神だろうが天使だろうがぶちのめすだけだ!!」
「吼えてんじゃねえぞ下等生物ぅ!!」
ガブリエルは浮いている絢斗の所まで飛び、水で作られた牢に閉じ込める。
「いくら強くなってなぁ!!下等生物は酸素を奪っちまえば死ぬんだよぉ!!」
「ピーピーうるっせぇ野郎だ!!」
気が付くと絢斗の周りに配置された牢は無くなっていて、代わりに絢斗の左手に一振りの刀が握られていた。
その刀は柄の部分にバイクのアクセルのバーみたいな物が付いていた。絢斗はそれを捻ると、刀に炎が纏った。
「レットクイーン、水なんか炎で蒸発しちまえばいいんだよ。覚悟しやがれよ?」
「だから、調子に乗ってんじゃねえぞ!!」
ガブリエルは翼から水の矢を大量に放つが、それを絢斗はレットクイーンに纏った炎で一つ残らず蒸発させる。
「この、どちくしょうがぁぁぁぁ!!」
ガブリエルは水ではなく空間を殴り、そこから発生した烈風で絢斗の首を切り落とそうとするが、絢斗はガブリエルを睨みながら烈風を歩いて回避した。
「もういい、てめえの顔も声も聞きたくねぇ。」
「何なんだよ!?その溢れ出る力の正体は何なんだよ!?」
そこまで言って、ガブリエルは一つ思い出した。佐藤快という生物も今の絢斗と似たような力を纏っていた。
「『終焉の紫騎士』か!?だがあれには習得条件があるはずだ!!」
「そうだ、けどその習得条件ならこの世界を創った際に条件を満たしたんだよ。」
そう言い絢斗はレットクイーンを鞘にしまい、居合い斬りの構えを取った。
「それと、これは単なるエンドナイトじゃねえんだよ。耳をかっぽじってよく聞きやがれ。これはエンドナイトの派生系の。」
絢斗がそこまで言うとガブリエルの目の前から絢斗が消え、ガブリエルの後ろに立っていた。
「『憤慨する終焉の超騎士』まあ、まだ未完成だけどな。」
絢斗がそこまで言った時、ガブリエルの頭、首、心臓といったあらゆる急所の部分から血が吹き出した。
「ば、か、な。」
「ついでにもう1つ超技術を使った。生物のあらゆる急所の数、場所を見抜き、それを居合いで斬る技。『滅殺』」
本来この超技術は極悪非道な技、どんな生物でも滅殺が成功すれば殺すことが出来るからだ。この超技術を絢斗はめったに使わないが、今回はそれほど絢斗は怒っていたと言える。
「我は、まだ、死なんぞぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
ガブリエルはそう叫び、体を爆発させた。それを見た絢斗は首を鳴らし、闘技場の方へ向かった。