柚子の木が欲しい
冬は鍋。
鍋には柚子が欲しい。
そう思うのは柚子の産地だからだろうか。
産地と言っても日本一とかそんな大それたものではない。せいぜいがとこ、各家の各庭に柚子の木が必ず一本植わっている、そんな程度の山奥ということだ。
柚子と言っても、東の方と西の方では使い方が違う。
東の柚子は、どうやら汁気が少なく、皮を用いて香気を呑むらしい。
私が考えるのは、西の柚子だ。
庭でもいだ柚子を洗い、半分に切る。
そのまま鍋にでもなんでも、ざっと絞り掛けるのである。
柚子も、大きくなくてよい。
姫柚子だの花柚子だのという、小さい実のものが却ってしっかり果汁をため込んでいる。
ちょいとつまんだだけで、たっぷりと果汁が滴り、新鮮な香りと酸味が食欲を刺激する。
刺身でも、柚子醤油にすればちょいと気分を変えてくれる。
茸を焙って、そいつにぶっかけてもよい。
隣家の妻女は柚子茶にすると言っている。
絞り切っても、その皮にはまだ使い道がある。
細切りにしてマーマレードにしてもよい。ミカン缶詰のシロップの残りを使えばちょいエコ気分だ。ただし国産に限る。
なにせ庭先の無農薬間違いなしの柚子だ、上等のマーマレードになる。
或いはレモンピールのようにしてもよい。
長期保存など考えないで、あるだけ作ってあるだけ食べる。すぐ次の皮はできるのだ、勿体がらずにどんどん食べればいい。
無論そんな面倒なことをしなくても、風呂に入れればそのまま柚子風呂になる。
なにせ切ってあるのだ、搾りかすとはいえ丸一個入れるより随分濃厚な柚子風呂になること請け合いである。
なお中身が浮遊するのが嫌な場合は、みかんネットに入れておけばよい。回収するのも楽になるし、なかなかお勧めだ。
だから、もしも庭付きの家に住むのなら、柚子を植えると良い。
夏は肥料と水を遣り、秋は緑の実を拝み、冬になるのを心待ちにする。
今年の冬もまた楽しみだなとつぶやきながら。
そんな生活もまた、乙なものである。
ちょっと困るのは、豊作の年は使い切るまでに傷んでしまうものがでることと、少ない年は最後の柚子が名残惜しいことか。
なんとも贅沢な話である。
田舎暮らしでも。田舎暮らしだから。
実は思わぬ贅沢な生活を送っているかも。




