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ベタなナンパはお約束

「えーいいじゃーん、俺たちと一緒にまわろうよー」

「そうそう。見たとこ一人だしつまんないっしょ? オレたちなら退屈させないからさぁ」


 うわ、まだこんな典型的なナンパするやつとかいるんだ。絶滅危惧種じゃなかろうか。


「だから、さっきから君たちとは行かないと言っている。いいかげんにしてくれないか。しつこい男は嫌われるぞ」


 ん? この声、なんとなく聞き覚えがあるような。


「「か~ら~の?」」


 そちらに目を向けると、長い髪を結い上げた朱音先輩が今にもブチギレそうになっているのが見えた。

 俺の視線に気づいたのか、おそろしい顔をした先輩と目が合ってしまった。その瞬間、先輩は阿修羅のような表情から一変、いたずらを思いついた子どものような表情になった。


「すまないな、言っていなかったが今日は彼氏と祭りを楽しむつもりなんだ」

「またまたそんなウソついちゃって~」

「ウソではないぞ。もうすぐわたしのところに駆けつけてくれるはずだ」


 先輩が目で強烈に訴えてきている。これはあれですね、彼氏のフリをしろと、そういうことですね。

 相手はいかにもチャラ男然とした大学生っぽいのが二人。片や俺は平凡な男子高校生。分が悪いが、朱音先輩をこのままにするわけにもいかない。手や足が震えないようにしながら、余裕のある(ように見せかけた)笑顔で騒動の中心へ近づいていく。


「おまたせ朱音。どう、もうほしいものは選べた?」


 チャラ男二人の存在など無いかのように振る舞う。なんとか噛まずに言えてよかった。


「おいおいマジかよ。こんなさえない男が彼氏とかありえないっしょ」

「おねえさん趣味悪いんじゃない?」


 チャラ男二人が信じられないものを見るかのように俺を見てきた。ここでイケメンだったら格好がつくのだが、俺の容姿は平凡中の平凡だ。髪型とか眉毛とかそうなるように努力した結果なんだが、いまだけはイケメンだったらなぁと思ってしまう。

 朱音先輩は満面の笑みで俺の腕をとりつつ、さきほどまでとは段違いの弾んだ声でこう告げたのだった。


「お前たち二人なんかよりよっぽどイイ男だぞ、わたしの彼氏は。さあもう気がすんだだろう。とっととわたしたちの目の前から去るがいい」


 そう言われたらさすがに引き下がるしかない。チャラ男二人はあいつ頭おかしいだろ、ハズレだったかーとかブツクサ文句を言いながら店内を去っていった。

 ホッとした表情でお互い顔を見合わせ、どちらともなく笑いだす。


「いや~まさかあんなベタなナンパにあうとはなぁ。なんだか笑えてきてしまったよ」

「ですね。相当レアですよあれは。あ、いくら緊急時とはいえ呼び捨てにしてしまってすみませんでした」

「そ、それは別に気にしてないからいいぞ、うん。……ちょっとドキっとしちゃったし」

「え? 最後なんて言いました?」

「なんでもない! それより、こちらこそ悪かったな、あんな茶番につき合わせてしまって」


 先輩はなぜか照れくさそうにしながらそう言った。


「いえいえ。偶然居合わせてよかったです。そういえば、サクもどこかにいるんですか?」

「サクはまだ自宅だ。なんでもネット友達と約束があるらしく、集合時間の一七時ちょうどくらいにくるらしい」

「なるほど。先輩はまたなんでこんな早い時間に来てたんですか?」

「ヒマだったからだ。やることも終わったし、集合時間までブラブラして過ごそうかなと思ったらこのザマだ。毎度のことながら実に疲れる」


 毎度のことって。先輩ほどの美人ともなるとそういう苦労もあるんだな。


「スイこそどうしたんだ?」

「先輩が浴衣着用必須とか言うから買いにきたんですよ」

「なんだ、浴衣の一つも持ってなかったのか。仕方ない、このわたしが直々に選んでやろう」


 なんという横暴さ。浴衣くらい自分で選ばせてほしい。しかしここで何を言っても意味がないのはわかっているため、素直に従う。


「変なの選ばないでくださいよ」

「善処する」

「先輩の善処するは一ミリも信用できないんですが」

「なら〇,一ミリくらいは信用してくれ」

「肉眼で確認できるギリギリのラインですね」

 これっぽっちも信用していなかった俺だが、意外にも先輩はかなりマトモなものを選んでくれた。

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