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すれ違い

 合宿から数日が経ったある日。

 俺は部活に行く前に教室の掃除をしていた。


「すまん彗、今日も掃除当番代わってくれないか? どーしてもはずせない用事があってさぁ」

「そうそう、めちゃ大事な用事なワケ。俺たち友達だろ? なあ頼むって~」


 この二人は佐久間と宮田。俺のクラスメートで友達だ。


「おう。全然いいよ。任せとけって」

「サンキュー! いやマジ助かるわ!」

「さっすが、頼んだら何でもやってくれる何でも屋だぜ! ありがとよ~」


 そう言って楽しげに去っていく二人。よし、今日の友達維持活動も順調順調。こういう降ってわいたようなお助けイベントは見逃せないのだ。

 まずは床のはき掃除をして、次は黒板っと。

 頭の中で効率的な掃除手順を考えながら手を動かしていると、唐突に、勢いよく教室の引き戸が開かれた。

 何事かと思って見ると、そこには厳しい顔をしたサクが立っていた。


「サク、どうしたんだ、二年の教室に来るなんて珍しいな」

「ちょっと先生に頼まれた用事がありまして。その帰りにスイの教室ってここら辺だったな~と好奇心でちょっとのぞいてみようと思ったら……スイ、なぜ断らなかったんですか」

「断るって、なんで?」


 俺はサクの質問の意図がわからず、そう聞き返す。


「! もういいです。続きは部室で話しましょう。まずはここの掃除を終わらせることが先です」


 理由はわからないが、なぜか怒っている様子のサクが、黒板消しを使って黒板をきれいにしだした。


「何してるんだサク。俺の仕事なんだから先に部室行ってろよ。それにこんなとこ誰かに見られたらどうするんだ?」

「行きません。スイを手伝って早く掃除を終わらせて一緒に部室に行きます。あ、一緒っていうのはタイミングのことで、実際に並んで行くわけじゃないです。今は掃除の時間なので廊下を歩いている人はそんなにいないですし、誰かが通ったら察知してすかさず死角に潜り込むので安心してください」

「忍者かサクは……」


 有無を言わせない様子のサクにたじろぎながらも、協力して掃除を進めていく。廊下に人が通りかかったとき、サクは本当に俊敏な動きで身を隠していた。教卓の中だったり、カーテンの裏側だったり。その様子がなんだかおかしくて笑ってしまう。そのたびにむーっとサクににらまれた。

 手際のよいサクのおかげで教室の掃除はあっという間に終わった。先輩と同じくサクも何気にハイスペックなんだよなぁ。


「ありがとう。助かったよ。でもなんでサクがこんなことをしてくれるのか、怒っているのかわからないんだけど」

「本当にわからないんですか? だとしたらスイはよっぽどのおバカさんですね。さっきも言いましたが、話の続きは部室でしましょう」


 サクはそう言い残して足早に去っていった。俺とサクが知り合いだとバレないよう、またスマホ部の所属していることがバレないようにサクが去ってからきっちり五分後に教室をでて、慎重に部室まで移動する。

 部室の扉には着替え中の札がかかっていた。その場で背を向け、直立不動で待つ。想像しちゃだめだ想像しちゃだめだ想像しちゃだめだ。

 ジャージに着替え終わった先輩が扉を開ける。


「おお、いたのかスイ。待たせてすまなかったな」

「いえ。いつものことですし」

「にしてもスイ、いったい何をしたんだ? サクが今までにないくらいご立腹だぞ」

「あー、それが俺もわからないんですよ。なんで怒らせちゃったのか」

「それは危ないな。ま、わたしは高見の見物でもさせてもらうよ」

「うん、先輩はそういう人だって知ってました」

「スイ、いつまでおねえちゃんとごちゃごちゃ話してるんですか? 早く来てください」


 先輩は俺の肩をポンとたたくと部室に戻っていき、PCをいじりはじめてしまった。

 俺は覚悟を決めて部室に入り、サクの対面に腰掛ける。

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