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朝チュン? いえ修羅場です 2

「あ、あの、二人とも、俺は別に何もしてなくて、起きたらいつの間にかこうなっていたというか」

「わ、わかってますよスイ。スイが悪いわけじゃないってことくらい。その、私、寝るときは何かぬいぐるみを抱いてないと安眠できなくてですね、おそらく夜中、何かに抱きつこうとさまよった結果、スイにたどり着いたのかと」


 まだショートカットの髪をいじりながらうつむているサク。なんだかこういう反応の方が怒らせてしまったときよりも罪悪感が強い。

 そこで、肩を抱きながらうつむいていた先輩も、ぽつりぽつりと話し出す。さらさらの長い髪が背中にひろがっていて目をひいた。最近は髪をくくった先輩しか見ていないせいだろうか。


「わ、わたしは、偶然ベッドから落ちて、偶然スイの腕に抱きついちゃっただけだから!」

「おねえちゃん、そのウソは苦しいよ。正直に言おうよ。私と一緒で、おねえちゃんもぬいぐるみとかに抱きつかないと落ち着かないって」

「ち、違うもん! 断じてそんなことないもん!」

「なんかもう見てていたたまれなくなるからそれくらいにしておこうよ……」


 姉妹漫才に思わず笑ってしまう。本当に仲が良いんだなぁ。自分は一人っ子だからうらやましい。


「何を笑ってるんだスイ! わたしの胸の感触を楽しんだくせに!」

「先輩自身が偶然って言い張ってるじゃないですか! 別に楽しんでなんていません!」


 恐怖の感情に支配されてて楽しむヒマなんてなかったからウソではない。


「私なんて楽しんでもらうような胸すら存在しないんですけどね……ははっ」


 そしてダークサイドに堕ちていくサク。そんなことないよ、確かに存在していたよ、たまらない人にはきっとたまらないよ、なんてフォローを入れられる空気ではなかった。


「そ、それよりも!」


 俺はスマホを操作してブレイドファンタジアのアプリを起動する。

 二人も俺の意図に気づいたのか、同じようにブレファンを開きはじめた。

 三人ともスマホを差しだし、画面を見せ合う。

 そこには、Conguratulations! Final Rank:100 という文字が踊っていた。

 顔を見合わせ、三人とも気持ち悪いニヤニヤ顔をしながら手をかかげて、勝利の雄叫びを上げた。


「「「よっしゃあ~!」」」


 こうして、俺たちのある意味最高に熱かった合宿は幕を閉じた。

 帰り道。早速自分のアバターにランキング報酬を装備させて悦に浸る。

 ただ画面をポチるだけの単純作業の繰り返しだったが、なぜかとても大きなことを成し遂げたような達成感を得ることができた。これもあの二人のおかげだな。

 眺め回して満足してからブレファンを閉じる。

 他人と長くいると、離れたときの寂しさが倍増するんだよな。祭りのあとの寂しさと似ている。

 合宿を振り返ると、やはり最後には朱音先輩の優しげな声が耳に蘇る。

 あのときは意識が朦朧としてたから細かくは思い出せないけど、ぼんやりとだけは覚えている。サクともっと仲良くしてやってくれとかそんな内容だったはずだ。

 額をさすりつつ、どうすれば仲良くなれるのかなぁ、やっぱりネットの中での会話を増やすとかかなぁと考えながら家路を急ぐ俺であった。

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