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双剣ならぬ双タブレット

 サクは三台のモニターが設置されたPCエリアにある非常に座りやすそうなイスに腰掛ける。このエリアにだけは女の子っぽい要素は一切なく、ただただ無骨でサクのネトゲーに対するスタンスのようなものがあらわれていた。


「ベッドはどうせおねえちゃんが占領するので、スイはカーペットの上にあるクッション使ってくださいね。ぬいぐるみを使ってくれてもかまいませんよ」

「了解」


 言ってるそばから朱音先輩はベッドに潜りこんでいた。

 俺はお言葉に甘えて人をダメにするクッションを使わせてもらう。

 身体が、身体が癒しの沼に沈みこんでいくぅ。


「こら、スイ寝るな! 今からが勝負なんだぞ!」

「おねえちゃんカジキマグロくん投げちゃダメ!」


 ぬいぐるみが頭に当たってなんとか現実世界に戻ることができた。おそるべし人をダメにするクッション。


「それで、先輩が言ってたメンバー不足に対する秘策ってなんですか?」

「よくぞ聞いてくれた。秘策、それすなわち双剣である」

「そうけん?」

「双剣だ。バトルもので必ずと言っていいほど登場する勝ち武器の双剣だ」


 スチャっと先輩とサクが何かを取り出す。


「タブレット……? そ、そういうことか!」

「そういうことだ! わたしはこのイベントのために一ヶ月かけてこっちのアカウントを育ててきた。今のスイと同じくらいのレベルになっているはずだ」

「どうやってそんな短時間でレベ上げしたんですか?」

「それはもちろん、新人受け入れを行っている懐の深い有名ギルドのスネをかじってだ」

「うわぁ」

「そんな引かないでくれ。きちんと挨拶をしてギルド抜けてきたんだから」

「先輩の方はわかりました。サクのはどうなんだ?」

「私は元々メインとサブ両方ともほぼ同じくらいに進めているので、サブのアカウントも『サク』と同じくらいのレベルですよ」

「マジか。よく二つも進める気力あるな」

「サブの方はネット友達作り・維持用ですからね。疎かにできないんです。今回も所属ギルドに武者修行してきますと言って一時脱退してきました」

「さ、さすがだな」

「ということでだスイ。君にはもう一つの剣を授けよう」


 朱音先輩が俺にピカピカのタブレットを差し出してきた。


「これで新しくアカウント作れってことですか?」

「うむ。一からはじめたデータでも少しは討伐数稼げるだろう。みんなで双剣をかかげて頑張っていこうではないか!」


 これが先輩の秘策。名付けて双剣作戦。俺の片方の剣が貧弱すぎるが、ないよりはマシだろう。

 早速アプリをインストールして、最初のガチャを回す。HR以上確定のやつで、ここで何がでるかによって進め方が大きく変わってくるんだよな。

 先輩とサクが見守る中、サブアカウントだしと特に期待せずガチャを回す。


「「「か、確定演出だと!?」」」


 三人口を揃えて驚嘆の言葉をもらす。画面の中では眩いばかりの虹色の光が溢れている。

まさかのSR以上確定演出だった。

 でてきたのは……。


「え、SSR、アルカディア、ブレイドぉ」


 先輩が血を吐くようにその名を口にする。

『悪夢のR祭り』のときに先輩が狙っていた激レア装備、アルカディアブレイドがでてしまった。あるよねこういうこと。ゲームについて何の情報も持っていない友達にとりあえずアプリ入れてみなよーって勧めて最初のガチャで大当たり引いちゃう、みたいな。これがビギナーズラックってやつなのか。

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