第45話 2月12日 護衛艦いせのカレーレシピ
チャーハンとカレーライス、どちらか迷ったが、チャーハンでは米を炒めるだけでなんの芸もないからここは少し手のこんだカレーライスを作ることにした。
レシピはーーやっぱりカレーライスといったら海上自衛隊の護衛艦のレシピだろと、思い至った。前、テレビのニュースでも護衛艦カレー特集やってたし。
ガラケーのネット検索で、「防衛機密大公開! 『護衛艦いせ』のカレーレシピ!」というサイトも見つけて、準備は万端だ。
コインランドリーの作業が終わると、おれはレシピにのっとり食材をそろえるべく、スーパーに向かうことにした。「私もお供します!」ソーニャがあわててついてくる。
二人並んで近所のスーパーに歩いていく途中、ソーニャは妙に上機嫌だった。よく聞けば軽い鼻歌ももれている。
「ソーニャさあ、そんなにおれが料理作るの嬉しいの?」
素朴な疑問を口にした。
「はい! マモルさんの手料理が食べられるなんて、楽しみで仕方ありません!」
ふーん、そうなの、と、なんとはなしに答えてから、ソーニャに聞いてみた。
「ソ連じゃ男の人も料理するの?」
すると今までの明るい表情をちょっとくもらせて、
「残念ながら男の人が食事を作ることはあまりありません・・・。女性が仕事から帰ってきたあと、疲れた体で夕食に取りかかります・・・・」
そうしてかすかにうつむいてしまった。
「女性が食事を作っている間、男の人は何をしてるの?」
「ヴォートカを飲んでいます・・・」
かすかにソーニャの横顔が曇る。
おれが何か言おうと口を開きかけた瞬間、言葉をさえぎるように、再び陽気な調子に戻りソーニャが
「さあ、早く食材を買いましょう。今日の食費は記念に私がお支払いします」
と言った。
ソーニャから純金のコインを一枚受け取った千紗姉ちゃんは、さっそくコインショップに売りに行ってきた。なんと、それは10万円という値がついた。千紗姉ちゃんはそのお金をそのままソーニャに手渡していたのだ。彼女の懐は暖かった。
「じゃあ、お言葉に甘えて。といっても、たかだかカレーライス代だからそんなに金額かからないと思うから、安心して」
「はい」
素直な笑みを浮かべてソーニャが答える。