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2日目、午前の部


朝焼けの東京を、海上迷彩が施されたエンテ翼機が空を飛ぶ。

翼には白い枠の日の丸が書かれていた、航空自衛隊のF2戦闘機だ。

この小説内では国内5社案のF2となっているが、ご了承下さい、作者が好きなのです。

各所から炎の光が見え、多数の地域が停電して真っ暗になっている。

東京湾では逃げ出そうとする船やボートが大量に溢れ出ており、その船団からの光がまるでプランクトンの発光現象の様に思えた。


「FS306、現在東京上空にあり、あっ!」


パイロットはスカイツリーの方を見る。

根元の部分に爆発が起こり、一緒何か光ったと思ったら展望台から残骸と何かを撒き散らしながら崩れ去っていく。


「あっ、あっ、あぁ〜」


間の抜けた声で、パイロットは光景を眺めていた。


ーーその頃


「朝なのに、この悪夢は醒めてくんねぇなあ」


眠気眼を擦りつつ、目を開ける。

あの後、彼や文月達はまとめて何処かの倉庫らしい部屋に叩き込まれた。

区別の為に翌朝まではその部屋に居ろと言われ、見張りが居るから逃げた場合撃たれると釘を刺された。

一緒に逃げて来た警官や自衛官達以外にも、医師や機動隊員や、消防士が居た。

幸い手荷物検査はされず、帯銃していた者の火器と弾薬は没収されたが文月のリュックは取られていない。


「腹、減ったなあ」


誰かが呟いた。


「昨日から何にも食ってねぇモンなあ」


また誰かが呟く。

すると扉が開き、眼鏡の柄の悪そうな目つきをした自衛官が言う。


「全員出てよし、検査の後に原隊復帰或いは活動を手伝って貰うってよ」

「あっ!柿梨!!おめえ生きてやがったか」

「ゲッ、松本死んでなかったのか」


どうやら友人らしいのと出会って何か話しているのを後ろに、別の自衛官が部屋の前まで案内する。

長椅子に座っていると、窓がカーテンで塞がれていると気づいた。

少しめくって覗いてみると、外に居る全員が全員不安そうに動いている。


「2.4.6.8.10....」


数えながら自衛官や警官達、つまり武装した人間を数える。

全員を数え終え、結論はざっと30名と少しでタブレット端末で調べてみると2個小隊未満とわかった。


「おい、あんまりそうやって覗くのは嫌われるぞ」

「はいよ」


案内してきた自衛官が言うので、覗くのを止めてしまいこんだタブレット端末を操作する。

どうやら1日にして京都と大阪府、そして福岡市はほぼ壊滅したそうであった。


『信じられない光景です!全く信じられません!

大阪市の全域より火の手が上がり、市街が炎上しております!

その火の手は、我々がいる電波塔を覆っております!』


テレビの中継アナウンサーがまくし立てている。

大阪城が崩れ去り、難波の方向からは爆発が起こる。

アナウンサーはそのまままくしたてていく。


『もはや脱出する余暇もございません!

もう我々は終わりです!皆様さようなら!さようなら!さようなら!』


電波塔の鉄骨が熱さで溶け、崩れていく。


『あああああ!!』


その遠くなる声を最後に、映像が途絶えた。

何処かの誰かがリークしたらしいヘリからの空撮写真が上がっており、大きな黒煙が上がる関西全域や、

JAXAの宇宙飛行士が衛星写真を送っている。

拡大すると小さな1~3ピクセルの点々の全てが船舶なのだと言う。

嘘か誠かサンクトペテルブルクから巡洋艦アヴロラが、イギリスからはHMSヴィクトリーが出港したとの情報まで流れていた。


「よーし、怪我してる奴は居るか?

負傷者優先だ」


そう帯銃した自衛官が言う、警官と消防士が一名ずつ手を挙げる。


「ほい、ん...じゃあ警官の方から」


適当に選んでそう言うと、警官が部屋に入った。

やる事も無いため目を閉じ、しばし眠る。

これから先寝れる事はそんなにないのが、よく分かる。



「おーい?」


文月が彼を起こした。

目を見開き、言われるがままに部屋に入る。


「あい次の人だね」


カーゼル髭を生やした白髪の老人が、穏やかな口調で言う。

その老医師は続いて言った。


「それで一応聞くが怪我はしてないよね?

どっちにしろ検査はするが」

「こんな血の付いてない身なりで、それを聞くのは愚問と思います」

「だろうね」


老医師はそのまま言う。


「発熱、高熱、倦怠、頭痛等は?」

「眠い、すごく眠い、さっきまで寝てました」

「それ以外は?」

「腹が減りましたがそれ位です」

「ん、まあ問題ないな、はい次!」


やけに適当だったな。

そう思いながら部屋の外に出る。

帯銃している自衛官も驚いた顔で彼を見て、文月に「次!」と言う。

私は文月が心配になり、部屋の前の椅子で座る。


「ん?アンタ彼氏さんなの?」

「え?ああ、いえ、たまたま出会って逃げてきたんです」

「ふーん、色々あるんだねぇ」


どうやら暇らしく、帯銃した自衛官と会話を交わす。

数分ほど話し、質問をしてみた。


「ここらが自衛隊の仮説基地になるって聞いたから来たが、少ないな」

「撤収作業中に本管が全滅、第二と第三中隊は行方知れずさ

ん?、そう言えばなんで知ってたんだ?」

「車の無線で聞いた、あのジープみてえな奴」

「ちょっと待て、どうやって手に入れた?」

「最初は学校に避難したんだ、町の方のやつだな、

それが来た時には総崩れ初めてさ、そん時何名か連れて無線機扱えるのが居たから」


「ああ」納得した顔でその自衛官が言う。

そう会話をしていると、文月が部屋から出てくると同時に一名の自衛官が現れる。

20代後半ほどの略帽の男の自衛官が言った。


「文月!?お前....やばいなこれ」


その自衛官が焦りながらつぶやくので、何事かとのほほんと思っていると、その自衛官が彼に近づく。

帯銃している自衛官は何がどうなっているか理解できず、現れたその男に「少し出てくれ」と言い言われるがままに出て行った。


「私は敷島伊吹、二等陸尉だがそれは良いとして、

君、早くココから逃げるんだ、文月を連れてな」

「「え?」」


二人の声が同時に出た。

その敷島と名乗る自衛官が言う。


「上官が隊内士気の強引な手段で10/1をしようとしてるんだ、

そうなると脱柵者の文月が殺されちまう、で、私はそれを阻止したい、

混乱している今だからこそ、顔がばれない内に早く行くんだ」


状況が読み込めないが、やばいと言う事は理解出来た。

ただ、


「逃げろと言われても何処に?」

「ここから海岸まで38キロに院洲升(インスマス)と言う海岸の町がある、そこでヘリが民間人をピストン輸送しているからそれで逃げろ、

道中の危機は、自己防衛でどうにかしてくれ、頼んだぞ」


敷島は焦りを募らせながら言う。

その時。


「敷島二尉!本部が読んどります」

「すぐ行く!!頼んだぞ、門の前の、君たちが乗ってきた奴に給油させた、それで行くんだ、

いいな」

「あっ、ああ、分かった」


そう頷くと、敷島はそのまま階下へ降りた。

彼も言われたことを反芻し、文月を連れて階段を駆け下り、門の前まで走る。

門の前には二名の自衛官が警備しており、二人を見ると互いに見合わせてゆっくりと門を開け、車に乗り込むのを確認すると同時に一名が倒れた。


「ぎゃあ!」


演技で倒れたと理解し、車を走らせる。

後ろから棒読みで「脱柵だ!!」と声が響き、旧ジープは坂を下り降りていく。


時刻は朝の4時半、街からは依然として黒煙が上がっていた。


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