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1日目、午後の部3

ようやく長い1日が終わりそうです。


玄関の戸をゆっくりと開け、覗くように外を伺う。

けたたましく鳴り響く盗難ブザーの音や、負けない音量を撒き散らす緊急車両やヘリコプターの音が響き。

坂か傾斜が実に表現し辛い地形にある彼の玄関から見える街の様子は混乱中としか言えないものであった。

ただ不思議に思えたのは、まだ多くの人が好奇心程度にしか関心を持っているとしか見えないのだ。

ドアを開けた先にいた三軒隣の若い夫婦は「デジカメで撮っとくか」などの会話をしているし、その家の中からは子供の「うるさいけどなんかあったと?」と言う声が聞こえた。


「うわわわっ」


黒いキャップ帽を被り、黒いカルトンとリュックを持って走り去る中学生が突如反対側から現れる。

すると血塗れで左眼が取れた小学生ほどの女子生徒が現れる。

ペタペタと四つ足歩行で走ってくるそれは実に非人間的で、悍ましさを感じる。


「やべっ」


無意識に文月の手を握って、中学生が全力疾走した方向へ走る。

幸いにしてその四つ足のナニカは、若い夫婦の方へと向かっていった。


「おわっ!なにするんだ、いだっ!」


夫が突如噛みつかれ、妻は悲鳴を上げて警察を呼ぶ。

その横をすり抜けるように走る。

文月は赤い顔でぎゅっと手を握り、そこから離れていった。

すると。


「ふぅぅみぃィー月ィーさあああああん」


短い黒髪と、垂れ下がった鉄帽(ヘルメット)、血まみれの迷彩柄作業服、その胸元に[二等陸士:岡崎明]の文字があった。


「ひいいいいいいいい!!!!!」


文月は大きな悲鳴を上げ、その場にへたり込む。


「お・・いてか、ないで・・・あなたも・・・こぉぉっちへきなさぁぁぁいぃ」


不安定な動きをする岡崎に、浅間は容赦なく足に蹴りを入れた。

ぐらりと蹌踉て両手を伸ばしてくる岡崎が文月に迫る。

文月の穿いているズボンに水を零した様なシミが出来あがり、涙が流れる。


「逃げるぞ!!」


手を握って引っ張り上げ、蹌踉ていた所に手を伸ばして重心が狂った為か岡崎は倒れた。

顔が無防備にアスファルトにぶつかって倒れ、振り向くのをやめて前を見るようにする。

文月は何回か嗚咽をし、涙を拭って彼の手を握る。


「きゃあっ!!!」

「わわっ!」


カフェから慌てて逃げる男女。


「あああああ!!!!」


燃えさかりながら団地の窓から落ちる黒い何か。

そしてその何かを掴んでぼとぼとと落ちていく黒焦げの何か。


「来た!来たぁっ!」

「逃げろ!!」


小銃を持って川の土手を走って逃げる自衛官数名と、追いかける血まみれの女性や子供。

腰砕けになりながら走っているようで、理由は容易に察した。

その真上の橋を渡る為に、2人も走る。


「ぎゃっ!離せよ!!」

「おい大丈夫か?」


若いチャラ男としか言えないけばけばしい青年に老婆が噛み付く。

その様子に30代ほどの薄着のサラリーマンが声をかけ、老婆はチャラ男の耳たぶを噛みちぎる。


「ぎゃあああああ!!!」

「わーっ!?誰か警察を!」


悲鳴が上がり、段々と狂っていく今までの時間がまざまざと見せつけられる。

橋を渡り切ると今度は目が血走った男が抑揚が滅茶滅茶な言動で私に迫ってくる。


「俺はお前が俺を見たの見たぞ!」

「!?」


驚きで声も出ないのを良い事に言葉を撒き散らす。


「アントニイイイ!

集団ストーカーに襲われてまあす!」


キチガ○だこいつ。

そう結論付け無視して走る。

すると手をフラフラと揺らして奇声を発して襲いかかる。


「わーっ!!なにしやがるキチゲェ!!」


追いかけてくる理解し辛い何かよりある程度理解できるバケモノが迫り来る。

理解出来る分、現実離れした動きを繰り広げるあの通り魔よりも恐ろしく感じる。

血走った目は破裂を連想させるほどに充血しており、突然その男は倒れた。


「文月!!」

「はい!」


手を、さらに強く握りしめる。

汗の濡れた感触と、指が絡み合い爪が手のひらに食い込む。

2人は息も絶え絶えになりながら、目的地へと到着しようとしていたが...


「なんだよ、これ」


太陽は頂点から転げ落ち、夕暮れになりつつあった。

J隊はそれなりに粘ったり活躍したりしますが初期の段階では後々の禍根を生む存在です。

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